第4話 街に着きました

そのあとルフィナは、共に行動しているパーティ『アメイズ』から猛烈に質問攻めされた。

だが、ルフィナもたくさん質問したいことがあった。

なので、この会話から抜けるために商人の方に視線を移した。

そういえば商人の名前を聞くのを忘れていた。実は心の中てモブAと呼んでいたことは黙っておいた方がいいだろう。


「ねぇ、ところで商人さんの名前は?」


さりげなく話題を変えるルフィナに商人の男は振り返らずに応える。


「ショーニンだ」


「え?役職じゃなくて名前は…」


「ショーニンだ」


「「「「「…」」」」」


最初は冗談かと思って笑っていた5人だったが、商人の名前がショーニンとわかると一斉に黙った。


それから商人のショーニンと話すことは無かった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



そして、何回か野宿をしながら順調に進み、ようやく王都についた。


『アメイズ』は、商人にサインをもらってからギルドに向かうらしい。

そこでルフィナは、自分がどこに行くかがまだ決まっていないことに気づいた。

入学試験は明日。寮に入れるのは結果が出てからなので一週間後になる。


「どうしましょ…」


「なんなら、俺たちとギルドに行ったあと、俺らがよく泊まる宿に来るか?食事もついてるしそこまで高くもないぞ?」


ジュール、ライオス、ロンの男3人組で一部屋、メリーが1人で一部屋使っているらしいのでメリーの部屋ならタダでもいいと言われた。


学校からもそんなに遠くないしルフィナにとって都合がよかった。


「はい!!是非よろしくお願いします!!」


ルフィナはまだしばらく『アメイズ』と行動することになりそうだ。


そして次の日、入学試験の日がやってきた。

朝日が昇る頃には出発し、学校に向かう。

学校に向かって歩いていると、同じ方向に向かう少年少女達は剣や杖を持っていて剣を持つものは小さな鎧を着て、杖を持つものはローブを羽織っていた。


そこでルフィナはふと自分の服装をみる。

平民の服装で手には剣も杖もない。

これでは入学試験を受けるものだとは思われないだろう。

しかしルフィナはそんなことは気にせずに同じ方向へ足早に歩いていく。


どうやらこの学校は実力主義らしく、お金はかからず平民でも貴族でも入れるらしい。

そしてこの学校の名前は「第二学園」、つまり「第一学園」も存在するということだ。

第二学園は平民も貴族もも入れる実力主義学校なのに対して、第一学園は貴族の優秀な剣士、魔法使いや跡取りくらいしか入れない。

第二学園は学費0、第一学園は学費がとても高いということだ。


だから貴族からは第二学園は落ちこぼれだと言われている。


学費も何もいらないということは、入学試験はとても厳しいということになる。

だがルフィナは、剣士科ではなく魔法科に行こうと考えているので問題はないだろう。

もちろん家族には言っていない。それにもう会うつもりもないし。


「入学試験の会場はこちらです!」


第二学園の在校生らしい人が案内をしてくれる。案内されたのは大きな競技場だった。

観客席には10人くらいの人がいる。たぶんこの学校の先生だろう。


「これから入学試験を始める。私は魔法科代表のエメラルダだ」


魔法科の先生のエメラルダが入学試験についての説明をする。

試験は実技と筆記がある。実技では、動く的に正確に魔法を当てられるかというものだ。

正確さだけではなく、魔法の威力、魔法の難易度も評価に入るそうだ。

ルフィナは特にこれといった得意な魔法があるわけではないが、平凡な学校生活を送るために少し自重しようと考えるのだった。


順番を待っている間ルフィナは、他の人の試験を見ていたのだが、魔法は正確に当たっているが、的は焼けたり壊れたりはしなかった。

きっと、頑丈で強い魔法がかけられているのだろう。

そんなことを考えていると、ルフィナの番となった。


「ルフィナです。よろしくお願いします」


「では、あの3つの的に得意な魔法を当ててみろ」


ルフィナは目を瞑り、的に意識を集中させる。普通の人は目を瞑っていたら的から外れてしまうが、ルフィナは違った。目を瞑ることで的や人がどこにいるかが分かるのだ。

使うのは風魔法。特に得意というわけでもないが、1番周りに被害が出にくいと考えたからだ。それなら水魔法でもいいのだが、風魔法は方向が変えやすいので動く的に当てやすいからだ。

手を前に出し、普通の受験生と同じレベルで放てるように集中し、


シュピッ


見事3つの的を切り裂いた。


「あれ?」


辺りは静まり返り、皆が的を唖然と見つめている。


「合格…しますかね?」


試験管は真顔で歩いてゆき、ルフィナから少し距離を取ったところに立つと、


「ルフィナ、私と手合わせをしろ」


そう言い放ったのだった。



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