第2話 ルフィナは学校に行きたい

前世の記憶を取り戻したルフィナは2階の自分の部屋を出て1階のリビングに行った。

そしてリビングには朝食の準備をしている母の姿があった。


「おはよう、お母様!」


この家は下級貴族家らしいので、ルフィナの母『アリーナ』のことは、お母さんではなくお母様と呼ぶようになっていた。

それはルフィナが記憶を取り戻す前からのことだっあさたので、記憶が戻ってもそのままだ。


「おはようルフィナ。お誕生日おめでとう」


「ありがとう。もう私8歳なんだよね」


それは転生してから8年も経っているということだ。


「そうよ。お父さんやお兄ちゃん達は外で訓練してるけど、行かなくていいの?」


やばい、忘れてた!といってもルフィナは諦められているからいいのだけど。

どうやら剣の才能はなかったようで練習しても姉や兄には追いつけないのだ。


そのかわりルフィナには魔法がある。

どうやらこの世界には魔法というものがあるらしく、ルフィナはそれをこっそりと練習しているのだ。

何故こっそりやるかって?

それはこのプローニン家は、代々剣士の家系だからだ。

父、『ルドルフ』はプローニン家の当主だ。


そして父は大の魔法嫌いである。


『魔法なんて使い物にならない。だって魔力がきれればそれで終わりじゃないか』


これがルドルフの口癖だ。


だからルフィナが魔法を使うことは絶対に言わない。

それにまだ初歩的な魔法しか使えてないわけだし、家の中で使ってもバレない程度だ。

地道に頑張ればいいのさ。


でも、それで剣の稽古をさぼるわけにはいかない。

なので木剣をもって渋々外に出た。


「おいルフィナ!何分遅刻しているんだ。まったく。お前もレイラやイリヤを見習ったらどうだ!」


さっき母との会話でもでてきたが、ルフィナには兄と姉が1人ずついる。

それが姉のレイラと兄のイリヤだ。

どちらも剣の腕はよく、剣ができないのはルフィナだけだった。


「まぁお父様。しょうがないですよ。これだけ俺らと差があったら訓練が嫌になるのも当たり前さ。まぁ俺だったら諦めずに努力するがなっ!」


兄、イリヤはルフィナのことが嫌いのようで、いつも嫌味を言ってくる。


「もう、お兄様ったらそんなこと言わないの!ルフィナ?苦手なこともあると思うけど、努力したらきっと強くなれるわ」


逆にレイラはいつもルフィナを守ってくれる。

そして父はというと、


「そんなの放っておけ。こんな出来損ない家にはいらない」


記憶が戻るまでのルフィナだったら毎回泣き出していた。

しかし今はこのくらいで泣いたりしない。

何故なら前世と合わせるともう25歳なのだ。

25歳のおばさんが泣いたりしたら格好が悪すぎるだろう。


「ほう、今日は泣いたりしないんだな。ほら、練習するぞ」


ルドルフはそう見下した口調で言うと、ルフィナに木剣を投げてきた。

ルフィナはそれを掴み、レイラの隣で素振りを始める。


(重い…)


やっぱりルフィナには重すぎる。

それに8歳の体にこの剣は大きすぎる。

ルフィナはレイラやイリヤよりも遅く剣を振るう。


「ルフィナ。剣が遅いぞ」


当然ルドルフはそう言う。

ルフィナは必死で剣を振った。それはただ怒られたくないからじゃない。

3歳の頃に初めて剣を握って、それからずっと振り続けてきたのだ。

最初は持ち上げることもできなかったが、大きくなるにつれてどんどん降るのが早くなっていった。

もしかしたら、このまま練習を続ければ兄や姉には届かなくても、それなりの剣士になれるのではないか。そう思っていたのだ。

それにルフィナは、12歳のレイラや14歳のイリヤと比べると体はとても小さく力もない。

遅れをとるのは当たり前のことだった。


そして2時間(遅れたから1時間半)の練習が終わり、ルフィナはシャワーを浴びたあと、朝食を食べるために席に着いた。


ルフィナが顔を上げると、アリーナとレイラは下を向き、ルドルフは真剣な顔、イリヤはうす気味悪く口元をにやけさせていた。


「ルフィナ。お前には王都の学校に通わせようと思う」


ルフィナはとても驚き、力なく首を振った。

…というのは記憶が戻る前の反応だろう。

今のルフィナは、その事が嬉しくてたまらなかった。

それは表情に出さないようにして驚き下を向いたので、ルフィナはとても落ち込んでいるように見えただろう。


それを見てルドルフは詳しく話し始める。


「何も今すぐというわけではない。10歳になった時に入学する。学校は剣の先生がたくさんいてライバルもできる。ルフィナくらいの子もいるだろう。そこでしっかり学び、プローニン家に恥じない力を手に入れて帰ってくるんだ。いいな?」


つまり厄介払いである。

優秀な姉と兄がいるのだから当たり前である。


「それから、学校には貴族がほとんどだが、平民もいる。だが、お前がプローニンを名乗ることは許さない。この家に見合った力があると判断するまでだ」


(なるほど。これでいくら私に実力がなくても貴族の名が落ちることはないし、何かやらかしても他人のせいにするつもりなんだろう)


「わかった!私、学校に行く!」


イリヤやルドルフから離れられるとはありがたい。

そう思ったルフィナは王都の学校に入ることを決意したのだった。


「「…」」


アリーナとレイラは何か言いたそうにしていたが、もうルフィナには関係の無いことだった。

急いで朝食を食べ終え、遊びに行くと言っていつも通り近くの森へ向かった。


(そうと決まれば魔法の練習もしとかなくちゃ!)


ルフィナは母や姉と違って大はしゃぎだった。

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