ACT07 写真の出来映えはどうかしら?
「お待たせしました、ハートに一撃ストライクパンケーキでございます」
『おお~』
休日のお出かけ中、電車で三駅ほどいった、大きな街のとある喫茶店にて。
自席に運ばれてきた、イチゴとサクランボと生クリームでデコレーションされた大きなサイズのパンケーキを見て、真白と朱実は感嘆の息を漏らした。
「噂には聞いていたけど、これは中々のボリュームね。しかもこのデコレーション、あたしにも作れそうにないわ」
「いやー、見栄えも香りもパーフェクトですな~。写真写真」
と、パンケーキに向けてスマホのカメラを構える朱実。
流行に疎い真白とて、その行為が何であるかは知っている。
知ってはいるが、
カシャ
「……シロちゃん、何故にパンケーキの上にピースサインを?」
「いや、なんとなく、映りたくて」
シャッターが押される瞬間、パンケーキに被せるかのように自分の指二つを入れる真白に、朱実は半眼になった。
「あとでシロちゃんも撮ってあげるから、とりあえず単体で撮らせて?」
「うん」
流石にこれ以上やると、朱実に怒られそうな気がするので、真白は素直に頷いた。
どうしてそこまで食事の写真を撮りたがるかまでは推し量りかねるが、それが流行というヤツならば、否定するのも野暮と言うものだ。
……あたしも、撮ろっかな。
ここは自分も乗っておこうと思い、スマホを取り出す。
朱実が撮り終わったタイミングで、真白もパンケーキに向けてカメラアプリのシャッターを押そうと思ったのだが。
「シロちゃん?」
「……ううむ」
単体では、なんとなく物足りない。
正面の席の、朱実も写るようにする?
それもそれでいい気がするが……折角なので、もうちょっと欲張りたい。
と、いうことで、
「朱実、ちょっと隣失礼するわ」
「え、シ、シ、シロちゃん!?」
真白は席を立ち、正面の席の朱実の隣一人分のスペースに、半分ほど割り込む形で座って、スマホの自撮りモードをオン。
パンケーキの皿をちょっとこちらに寄せて、腕を伸ばして……よし、これでOK。
「撮るわよー」
「撮るわよー、じゃなくて、シロちゃん近い近いっ!」
「何言ってんの。近くなきゃ画面に収まらないでしょ」
「いや、そうじゃなくて……! いきなり、こんな――」
「朱実、あたしは朱実と一緒に撮りたいの。お願い」
「う…………はぃ」
顔を真っ赤にしながら縮こまる朱実だが、良いと答えてくれたので、真白は改めてスマホを構える。
ただ、さっきの朱実が驚いたときのやり取りで、二人がフレーム内に収まってないので。
もう少し身体を密着させて、
「ひぅっ!?」
空いてる手で、朱実の腰を抱く感じで、
「はぅっ!?」
身長差があるので、朱実の頬に自分の頬を寄せてっと、
「ほぅっっっ!!??」
いちいち朱実の反応が可愛かったが、それはそれとして。
スマホのシャッターを押してパシャリと、よし、OK。
自分達といいパンケーキといい、良い構図の一枚が取れた。
「ありがと、朱実」
「……こちらこそ」
元の席に移りながら真白はお礼を言っておくと、朱実は何故か席に突っ伏しながら小さく返してきた。
耳まで真っ赤でやたら肩が震えてるのに、真白は頭に疑問符を浮かべるが、まあ、大丈夫だろう。
「朱実、今撮った写真、欲しい?」
「! ほ、欲しいっ!」
「お、おおぅ、反応が劇的ね。……ちょっと待っててね」
SNSメッセージアプリに朱実の番号を呼び出し、真白は今さっき撮った写真の画像ファイルを貼付する。
せっかくだから、画像にちょっとしたデコをつけておこう。
可愛らしいものが撮れたから、どれがいいかな……お、いいのがある。
『ラブラブリー』という文字。
今の自分達を表すならば、まさにこれだ。
「……んーむ」
ただ、ちょっと文字が大きいようだが……ま、いいか。
そんな思いで、真白は朱実にデコ入り画像を送信すると。
「ぶっ!」
朱実、その画像を見て、何故か悶絶した。
「シロちゃん、『ラブラブ』って……!」
「ああごめん、ちょっとデコの文字はみ出しちゃったけど、大丈夫だった?」
「………………だいじょうぶです。はい」
「?」
何故か朱実が真っ白に燃え尽きていたが、良いというのならば、良いのだろう。
真白、満足である。
そして、やたら時間がかかったような気がするが、二人で食べるパンケーキは、非常に美味であった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
シロちゃん、なんという波状攻撃。
わたしのライフは、もうゼロだよ……。
でも。
もらった画像を見ると。
やっぱ、ニヤケちゃうよなぁ……。
待ち受け確定だね、これ。
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