第3話 第2の異変収束
気を失った僕がどうなったかって? 僕は怪我で済んだ。それだけのことさ。さて、今度は異変が起きてからの話をしよう。そう、モンスターに切られて気を失った僕はやがて目覚めた。とてつもない痛みとともに。
うう……目が開かない。
痛い……全身が痛い……。
すでに冷たくなった液体で体中がベタベタしている。気持ち悪い。これは……血かな?
誰の? そんなの分かっている。きっと僕の血だ。
目を開けようとするが……開かない。あれ? 手で何か握っている。これは……剣か?
そうだ、才人と麗夜はどうなった? 動け僕の体! せめて目だけでも開いてくれよ……。
僕は、ここで死んでしまうのか……。嫌だ、ここで死ぬのだけは嫌だ!
だから動けよ……。僕の体! 動け! 動いてくれよ……。
ダメか……。動かないや。
体を動かそうとして何分経っただろう。もう僕は体を動かそうとするのをやめた。きっとこのまま僕は死ぬのだ。そう決まっていたんだろうからな。せめて、死ぬ前にみんなを見ておきたかったな。
でも、おかしいんだ。死ぬというのに意識が全然なくならない。これは……なんでなんだろう。指に力を入れると僅かだが動いた。
その上、だんだん痛みを感じなくなってきたんだ。おかしいな。しかも目も開いて。開いて? 僕の目が開いた。
まずは、僕自身の体を見る。ひどい怪我だ。どこもかしこも怪我をしている。体が分裂していないのが不思議なくらいだ。
「そうだ! 才人と麗夜はどうなったんだ」
ふらつきながらも立ち上がると少し離れた場所に才人が倒れていた。長いこと倒れていたからだろう。言うことを聞かない足を無理やり動かして才人のもとへ向かう。
「才人! 才人! 聞こえてるか!?」
才人は、至るところを切りつけられ直視できないほど酷い姿になっていた。しかし、そんな事関係ない。何か、出来ることは無いだろうか。例えまだ息があるとしても、これだけの出欠量ともなればそれは別だ。涙が止めどなく溢れてくる。手を才人の胸のあたりに置く。まだ、息がある。心臓が動いている。しかし、何かできるだろうか。何か……。
「盛夏……なの……か?」
「ああ、そうだよ。僕だよ。盛夏だよ」
先程まで、声をかけてもなんの返事もしなかった才人が言葉を発した。才人が言葉を発すると同時に右手に持っていた剣も砕けて無くなった。剣を使う必要が無くなったということだろう。才人が創造したものはそれを必要とする間のみ存在し、必要が無くなれば消滅する。
「才人! 大丈夫? 痛いところは無い? いや、痛いに決まってるか。その傷じゃ」
「いや、不思議と痛くないんだ。何でだろうな。傷はこんなにひどいのに」
「立ち上がれるか?」
「何とかなっと」
ひょいっと才人は立ち上がった。不思議なほど軽々しく。
それにしても、才人が見つかったのはいいのだが麗夜が見つからない。才人に聞いてみれば何か分かるだろうか。
「なあ、才人。麗夜はどこにいるんだ?」
「分からない。今いないってことは、無事で学校へ向かったんじゃないのか? それとも……」
「それとも?」
「連れ去られたとか?」
真相は謎のまま。しかし、高校へ向かったなどあり得るだろうか。まるで、巨大な地震でも起きたかのように周囲は荒れ果てている。木々は倒れ建物は倒壊し、血だらけで倒れている人がそこら中に……そこら中に……。
この時僕は何かできただろうか。いや、きっと何もできなかっただろう。僕たちは混乱していてとるべき行動などできなかった。それと同じようにこの時世界は混乱に陥いった。しかし、世界に混乱を巻き起こした第2の異変は収束した。世界の人口は大幅に減り、人々は様々なものを失った。そして、いつまた第3の異変がきてもいいようにと各国で対策本部が作られた。しかし決して全ての国で一丸となろうとはしなかったのだ。それどころか、混乱に乗じて戦争を始めようとする国もあった。現在では、大きな異変は無く月に数回何処かしらの街にモンスターが出現する程度だ。
今僕が何をしているかって? 世界が変わった3年後に僕は、才人と共に日本異変対策本部に志願して、対策本部の一員として日本で起きる小さな異変を解決している。対策本部に志願した目的。それは、麗夜の行方が少しでも分かれば良いと思ったからだ。起きてはほしくないが第3の異変の時にそれが分かるのではないだろうかと少しばかり期待している。
解除能力が有能すぎた 川理 大利 @kawaridairi001
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