第2話2つ目の異変
続いて2つ目の異変だね。その日僕はいつも通り眩しい朝日を浴びて起きたんだ。普通だろう? そうさ普通さ。その日まではね。いやこの日の朝の時点で普通ではなかったか。ここからはその日の僕の記憶に移ろう。
その日、僕はいつも通り起きたんだ。眩しい朝日を浴びながら。とても気持ちいい朝だった。思わず部屋のカーテンを開き窓をバッと開けてしまうくらいにね。窓から吹き込んでくる少し冷たい風が心地良かった。今思えばあれは嵐の前の静けさというものではないだろうか。
その気分のまま階段を駆け下りて朝の準備をして家族に挨拶をしてから家を飛び出す。走って近所の公園へ向かう。早く行かねば怒られてしまう。
「おはよう。ごめん遅くなった」
「あれ? どうしたの? 今日すごく機嫌良さそうだね」
「本当だな最近の盛夏にしては珍しい」
「いや、せめて挨拶ぐらい返してよ」
「おはよう」
「おはよう」
僕の挨拶に最初に答えてくれた少しみじかめの茶髪で目がぱっちりしていて静かそうなのが
そして、麗夜の次に挨拶に答えてくれた薄めの黒髪で真面目そうだが気だるそうなのが
2人とも家が近い昔からの幼馴染であり小さいときからよく遊んでいた。今でもこうして同じ高校に通っているのは本当にすごいと思う。さて、みんな揃ったし高校へ向かおう。いつもの道を歩き出す。高校までは歩いて20分ほどだ。
「まったく、2人とも変わらないね」
「そうか?」
「いろいろ変わったよ」
麗夜が少し暗い表情で声を落として答える。少し励ますつもりで麗夜に会話を振る。
「昔もこの公園でよく遊んだね」
「そうだね。あの頃が懐かしいんだよ。本当に戻りたいくらいに」
「戻りたいって。それ時を操る能力か何か?」
「そうか…………。時を操る能力」
「冗談だよ」
「冗談ね。ふふっ」
「やっと笑ってくれたね」
才人が無言を貫き通しているが気にしないでおこう。
「だってね、私最近夢を見るの」
「夢? 夢を見るのは普通なんじゃないの?」
「内容がね、嫌なんだ。私にとって最悪な夢なの」
「悪夢?」
「悪夢といえばそうかもしれないね。でもそれだけじゃ表しきれないの」
「どんな夢なんだ?」
才人がようやく会話に参加してきた。夢の内容がなにかよっぽど気になるものだったのだろう。
「それはね、3人が引き裂かれる夢」
「引き裂かれる?」
「物騒な」
「それは物理的に?」
「そうとも言えるかもしれないし言えないかもしれないの」
なんか変な言い回しだな。3人が引き裂かれる?
「なんか微妙だな」
「何が?」
才人が微妙だと言うので何が微妙なのか気になった僕は才人に聞いてみる。
「変な言い方だなって思ったんだよ。3人が引き裂かれるってのが物理的なのかどうかってのが」
「たしかにそれは僕も思うよ」
「それはね、分からないの。詳しいところまでは」
「詳しいところまでは分からないのか」
「どうりで変な言い方になるわけだね」
詳しいところまでは分からないらしいからもうこの話題はいいだろう。切り裂かれるなど良いことではないからね。しかし、麗夜はまだこの話題を続けたいようだ。
「それでね、その夢のことだけどね。天気は今日みたいな感じだったの」
「まだこの話題続けるの?」
「このへんでやめといたほうが…………」
僕たちのこの話題をやめようという言葉に耳を傾けずなおも麗夜は話し続ける。
「それでね、突然…………」
しかし、その言葉が最後まで話されることはなかった。空が突然眩い光に覆われた。眩しい。目を閉じていないときついなこれは。
「いったいなにが…………」
「おい、空見てみろ!」
光の収まった空を見てみると、空から光のようなものが地上に降ってきているところだった。アレはなんだ? 落ちた方から悲鳴が聞こえくるな。
「なんなのか分からないけど逃げたほうがよさそうだよね」
「逃げるって言っても何処へ逃げればいいんだよ!」
そうだ、麗夜の意見は? 手で目をこすっている? いや泣いてるのかな? なんで?
「麗夜、どうしたの?」
「うっうっ。私たちもうここで終わりなんだね」
「終わりって何言ってんだ? 麗夜!」
「だって…………だって…………。ごめんね私何もできなかった」
「何もできなかったって…………まだ」
空から降ってくる光が僕たちの目の前に落ちたのはその時だった。衝撃により僕たちは少し後ろに吹き飛ばされる。
光による土煙が収まりソレが見えるようになった。ソレの正体はモンスターだった。モンスター? 疑問に思うだろう。まさしくモンスターだ。まるでゲームの中のモンスターをそのまま連れてきたかのような姿形だった。そしてモンスターは巨大な剣を持っている。
「モ、モンスター!?」
僕たちが逃げ出す暇もなく巨大な剣を持った僕たち3人の身長を合わせたくらいの大きさのモンスターは襲い掛かってきた。
「避けろー!」
ブゥンと音を立ててかなりの速さで巨大な剣が僕たちの頭上を通過する。
「このままじゃまずいな。盛夏、お前に託すぞ俺の思い!」
才人はそう言って創り出した剣を僕に投げて渡してきた。そう、才人の能力は創造能力だ。それならば才人自身で戦えばいいじゃないかと思うだろう。しかし、使えないのだ。才人自身が創り出したものは何も。
「分かった、出来る限り善戦するよ!」
そんなわけで僕が戦うことになるわけだ。
才人から託された剣を振り回してモンスターに対抗する。
「はぁー!」
型など何もない適当な振りだ。剣を握ったのもこれが初めてだろう。
「ぐあー!」
しかし普段から武道などやってない僕はあっけなく敗れるわけで。僕は何も対抗することができず切られた。痛い、痛い。全身が熱を発しているかのように痛い。
そして薄れゆく視界の中で麗夜と才人の方へ向かっていくモンスターの姿が見えた。ごめん才人、麗夜。俺は何もできなかった。
どうか、無事でいてくれ…………。
2つめの異変、それは世界中でのモンスターの出現だった。
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