解除能力が有能すぎた
川理 大利
プロローグ 異変
第1話1つ目の異変
解除魔法。それはどんなものも解除することのできる魔法である。まずは、それが僕に備わった時の話をしようか。
僕の名は、讃良 盛夏せら せいか。変な名前だと思うかもしれないが、夏の盛りの8月13日に生まれたというのが盛夏という名前の由来らしい。毎日毎日無限ループのように学校へ行き授業で疲れてからさらに部活で疲れて家に帰ると20時前。そして風呂に入りご飯を食べて寝る。そんな生活を送っていた。
そう、至って普通の高校生だ。特になんてことのない。ただの高校生。特技なんて特にない。きっとこれからもずっとこんな日が続くと思っていた。
そんな日々をこなしていく中でそれが起きた日もなんてことない日だった。しかし、世界では確実に異変が起こっていた。
世界大異変と呼ばれるその出来事。まず最初の異変は1人に1つ何かしらの能力の発現というもので現れた。
それは、手から火を出すものだったり瞬間移動ができるようになったり透明になるものだったり人によって様々だった。
その能力を魔法と呼ぶか、超能力と呼ぶべきか世間では論争が繰り返されており異様な光景だったと思う。良い大人たちがまともに仕事もせずそのような論争を道端で行なっているのだ。結局どう呼ぶかは未だに決まっていないらしい。
テレビのニュースでも連日その話題が取り扱われており、世間は大騒ぎとなっていた。
能力を使って犯罪を犯す者。能力を使って人助けをする者。能力を使って決闘をする者。人により様々な能力の使い方があるようだ。しかし、そんなの僕には関係なかった。
僕にはいっこうにそのような能力など備わる気配がなかったのだ。周りは、皆何かしらの能力が備わり指から火を出したり風で遊んだりしている中机に突っ伏して気にしていないふりをしていた。
どうせ、僕の日々は変わらない。そう思っていた。しかし、僕を置いていって世界は確実に変わっていった。
授業が終わり放課後。いつも通りの放課後だ。でもいつもと違う。部室で着替えながらみんなに聞く。
「みんなは何の能力が備わった?」
僕は、備わってないくせに生意気な。そう思いながら返答を待つ。
「俺は、風を操る能力だ」
「僕は、光!」
「俺は水!」
「俺も水だ! 同じだな」
皆が口々に能力を言っていく。楽しげに。羨ましいな。僕にも能力があったら会話に参加できるのだろうか。
「盛夏は何の能力が備わったんだ?」
「僕には、能力がないんだ…………」
「そんなわけあるかよ。何かしらあるはずだ!」
そう言って励ましてくれているのは部長の浩太だ。
「僕を馬鹿にしないの?」
「するわけないだろ」
「ちなみに浩太は何の能力が?」
「筋力強化だな」
僕と部長の会話を聞いていた他の部員たちが会話に参加してくる。
「大会で使うなよ。それ」
「使うわけないじゃないか」
楽しげに会話が続いていく。皆は明日が続くと信じて疑うことはないだろう。僕はまた会話の外に取り残された。一足早く着替え終わった僕は、部室を出てグラウンドへ向かう。さて、気分を切り替えなきゃな。
グラウンドと聞いて、何のスポーツを思い浮かべるだろうか。サッカー? 野球? 僕は陸上をやっている。とは言っても長距離だ。短距離はものすごく遅い。
しかも、僕は今スランプと言われるものに陥っている。聞いたことぐらいはあるだろう。どれだけ走っても伸びない。走っていると足が動かなくなり呼吸がきつくなってくる。きつい。
そんな思いを抱きながら最近はずっと練習に打ち込んでいたのだ。
しかし、今日は足が軽い。おかしいくらい軽い。呼吸が辛くならない。いったい何が起こったんだ? まるでこれまで重なっていたリングが全てなくなったような。でもこの調子なら次の大会では自己新記録を出さことができそうだ。
走り終わり、息を切らしながらそんなことを考える。
そんな明るい希望を持って自宅へ帰り。久しぶりに良い気分で眠りに入った。一つの悩みが解決して晴れやかな気分だった。気持ちよく眠ることができた。
しかし、世界は僕にそんなに甘くはなかった。次の日のことだった。
世界大異変、第2の異変が起こったのは。
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