閑話 砂理井のオフ、あるいは魔法使いの日常 その4

「あいがとございまったー」


 微妙にシモネタを会話に挟みつつ、しかし色々と丁寧なのだが帰り際が一番適当だ。


「どこで食べようかな。」

「ここのポケットパークはあまり座るとこがないナリ。隣の区の公会堂が、この時間は集会終わりで空いてるし、地域に開放されてるナリよ。」

「ああ、あそこ綺麗だし、確か丸テーブルもあったわねって、ワガハイ君凄いわね。というか何このまま付いて

「都市把握はこの時代生き抜く基本ナリよ〜」


 元々この都市のアーバンデザインはいくつかの時代が混ざっている。

 過去城塞都市であった構造が魔術の発達で陳腐化し、取り壊される……かと思いきや、構造魔術と重層結界の発展によって、常に攻撃魔術>防御魔法だった状態は一変。

 構造魔術、つまり、魔術の術式構造そのものを建築物に組み込むことで都市城壁の強度が物理的にほぼ破壊不可能なレベルにまで達した。“術式構造の流動化による発動式の消滅効果”によって事実上魔術による干渉も防ぐ。

 魔術によって生み出された式が、魔術現象を超えて全く別の構造体を形成する。“超構造体”と呼ばれる城壁群は、経年による消魔素蓄積が必要という条件はあるが、こういった都市防衛構造が出来ること自体が一種のシンギュラリティだと言える。

 また、


「ワガハイ君、着いたけど。」

「……」


 また、都市機能構造もアップタウン、ミッドタウン、ダウンタウンに分かれており、王城の前面にあるセントラルパークは市民の憩いの場だ。

 王政と貴族社会を残しつつ、選挙の公平性を担保する魔道具や監視システム、衛生管理の行き届いた上下水道などの存在はある意味歪だ。

 スラムはこういった先進的システムをこの時代に現出させるための必要悪、もしくは犠牲とも言えよう。


 とはいえ、どの時代にもこういった場所は必ず存在するので、人の創り出す共同体にはオフセットなのかもしれない。


「ワレはやっぱり、ぶどうのショートケーキが食べたかったナリ……」

「え、それずっと考えてたのワガハイ君。」

「売り切れてたから木の実のタルトレット買ったけど、やっぱり、ケーキ食べたかったナリ……」

「そういわれると、私もいちごのショートケーキ食べたかったナリ。」


 2人でしょんぼりしてしまう。

 気落ちしたまま、公会堂の入り口近くの白いテーブルに付き、木の実のタルトレットとベイクドチーズのタルトレットをパクリ。


「「うわっなにこれうまっ すごっ うまっ(いナリ)!!!」」


つつつつづく

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