閑話 砂理井のオフ、あるいは魔法使いの日常 その3
「甘いもの、甘いもの。」
独特の歩行術で進む砂理井。
不均衡のダンジョンは王都まで徒歩30分だが、それは西門までの時間。そこから商店街まで12,3分といったところ……が、15分程度で着きそうだ。
「あま、あまい、あま、かゆ」
競歩のようなピキッとした姿勢で、足の振りは最小限。しかして、足の指で大地を抉るように前へ飛び出す。
さながら、動く歩道上で歩行している(よいこは真似しちゃダメ)せいで、スムーススライドしているような状態。目で追うと少し気持ちが悪い。
そして、実際に地面が爪先分抉れているので、馬車が通ることを考えると割と大事なのだが、そこは流石に魔法で即時修復を行っている。
むしろ、均一に平らになっていっているのだが、それは誰も気づかない。
「ふぅ、今日は、あ、ヤドリギあるある亭休みか。」
どうやらひと世代前に妙な名前をつけるのが流行ったらしく、老舗の名店は軒並み変な名前だ。
「顔出したくはないけど、しょうがない。ドレンチェリー行くか。」
「あそこ美味しいけど、パティシエール本人も味付けも癖があるナリよね。」
「ぎゃあああああ!!!!」
「わあああ!!!ナリ!!!!!」
股下辺りから声がしたことで咄嗟に大声を出してします砂理井。に、かぶせるように大声で驚くワガハイ。
「な、急に、どこから湧いてきたのですか。」
「ずっといたナリよ。」
「商店街入ってからですか、いきなり、声をかけるのは、マナー違反ですよ。」
「気をつけるナリ。」
ずっと、というのは、勿論最初からなのだが、それを説明するのが面倒なので何も言わないでおこう。
「行くなら早く行くナリ。ヤドリギあるある亭が休みなら、もう多分出物少なくなってるナリよ。」
「はっ!そうだった!急がないと、あま、あまいも、あま!」
「あのパティシエール芋嫌いだからソレ系はないナリよ〜」
歩行術も何もなく、ただがむしゃらに走る砂理井。車輪を出して付いていくワガハイ。
この商店街は冒険者ギルドの倉庫街と商人ギルドの倉庫街の間にあり、店舗が密集している。バラックのような建物に中古の装備が詰め込まれているかと思いきや、その横に小奇麗な料理屋。その2階には王都土産のバッタモノ店など、かなりカオスだ。
そして、ヤギある亭は商店街の北端、ドレンチェリーは南端にある。1kmほどの距離だが、この時点で既に16時半。閉店は確か18時だったが、さて、商品は残っているだろうか。
バンッ カランカランッ
「おや、セイ君、いらっしゃい。こんな時間に珍しいね。」
この人、腕もいいし器量良しだけど、なんで常時水着なんだろうか。
つづくつづくつづく
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