第6話 夏の扉を開けて

「ところで魔王様」

「なんだい砂理井さん。」

「移動系の魔術は使えますか。」

「使える、一応ね。」

「魔王様の魔術、確か、次元魔術でしたか、体系外の外法でしたね。」

「外法といえば、もうすごい外法だいね。」

 魔王様が指を動かすと、扉が現れる。

 これは、初めて見る魔術だ。

 ボロボロだが、無駄な装飾のない洗練された珍しい色合いの扉。しかし、このデザイン、コチラではとても珍し〈〈チャッチャチャーン〉〉

「ど、、、と、いけない、音が漏れた。」

「………」

「ドアノブに触れる時、行きたいところを具体的にイメージしての。できれば、緯度と経度も添えて。」

「魔王様、この音は――」

「それを言ったら、魔法使うときの砂理井さん、小声で呪文口走ってるけど、あれ、テクなんとかかんとか――」

「ドローですね。」

「ドローなのかね。」

 しかし、何度見ても、魔王様の魔術は凄い。高度な魔術ほど世界への干渉時間が短いのは定理。加えて魔王様の魔術は、放出される魔素も、発動時の魔光も私でも認識できないくらい少ない。


 その光が極彩色で、かつ集中線を伴うのは戦場で目立ってしかたないだろう、思うが。


「それで、砂理井さんはどこに行きたいの?」

 振り返り、魔王様を見る。何度見ても可愛い。

「社員を拾いに行きます。以前、会ったことがあるので」



「社員?え、なんの?」

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