第4話 二の腕ぱんぱんパン
「ええ、良いですね、会話途中も手が止まらなくなりましたね。」
「ありがとうございます!あり……」
少し嬉しそうな顔をする魔王様が、何かに気付きすぐ悲しげな表情になる。どうしたことでしょう、せっかくルーチンワークが身に着いてきたというのに。
「しかし、魔王様、ここ数週間で、だいぶ老け込みましたね。見た目以外。」
「それわしに直接言うかね?」
「いままでぼぅっと生きてきたツケ、これをここにきて綺麗さっぱり回収出来るなんて、幸せですね。」
「そうなのかのぅ。」
自在箒で緑石の表面だけでなく繋ぎ目の溝から細かいゴミを掻き出す所作、集積回収の効率化、固定化した歩幅と足運びで無駄なく正確に区画清掃していくその様はまさに、まさに魔王。
「魔王?」
「早くも呼び捨てされてわし心折れそう!」
「いえ、こちらの話です魔王様、なんでもかんでも自分の事だと思うのは、魔王様の悪い癖ですよ。」
「あっ、これ、事実としてわしが悪いことにされてる。」
閑話休題
「ところでねえ、砂理井さん。ここ毎日清掃してるではないか。」
「はい。そうですね。」
「で、最初は、翌日には同じように汚れていて、正直意味のない行動だと思っていたが。」
「そうでしたね。最初は思わず地団駄をふんだことも、ありましたね。」
魔王様がそっと目を向けた地面に、ひび割れと足型が。コンクリートの凝結途中に誰か足を突っ込んだのでしょうか。
「……いやはや、続けると、意識も変わるのかね。あまり時間をかけずとも路地裏まで綺麗になるのぅ。」
「見違えるようです。今ではどうでしょう。ゴミを道端に捨てる不届き者は」
いた。チンピラD(昨日は小指を折られなかったモヒカン頭の奴)がコッソリ通りを抜ける際、屋台の串を捨てていった。
足元に用意しておいたを拳大の石を拾い上げ、ポイ捨てをしたチンピラの側頭部目掛けてなげる。
ブンッ スターンッ! どたん
「今居なくなりました。」
「あ、これ、当分起き上がれないやつだわ。(何故か血が出てないどころか外傷もないけど)」
チンピラAとCに両脇を抱えられて退場していくD。
む。少し肩に違和感が。そろそろ投球フォームを見直さねば。スリークォーターから一度トルネードに変えて……と。
ヒュン どぱんっ
「ああ!防壁に穴あいとる!」
「昨日少し練習しすぎましたか。肩を休ませる方に意識がいってしまい、二の腕が腫れて。腫れて。。。」
二の腕腫れてる……身が詰まっている……ボディビルのこんがりとした腕……おいしそうな艶と色合い……これだ!
「なにをどうしたら石で魔導障壁が壊れるのだろうか。建設を手伝ったから構造見ているし、こう、原理的に……」
「魔王様!」
「はい!(あ、これ話聞いてくれないやつだ)」
「パンを焼きましょう。掃除の次は、配給です。」
けぷ
「ンプ、唐突すぎてわしチビゲロ吐いちゃったヨ。」
「そんなことはともかく、さ、市場まで小麦粉を仕入れに行きましょう。仕込みは朝早いですよ」
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