「処分場」

二人で這々の体で逃げ出し、バイクに乗って10分。

あの獣は張り付くように横の森林を駆け抜け、執拗に二人を追っていた。


すでに山道は半分以上降っているはずだが、

獣は全く息が切れる様子もなく淡々と木々の中を走り続けている。


いつまで自分たちは逃げればいいのか、このまま追いつかれてしまうのか。

そう考えた時、貞治は目の前を走る剛が何か合図を出していることに気づいた。


どうやら、目の前を見るように指示を出している。

…何だ?そうして前方を見た時、貞治も気づく。


そこに、ゴミの処分場があった。冷蔵庫やテレビといった廃棄物のゴミ捨て場。

大量の金属製品も積み上げられ周囲は巨大な金網の柵で囲われている。


そこで貞治も気づいた。この獣はぴったりと貞治たちの横を並走している。

そして、真っ直ぐに進めば木々が切れ、処分場にぶつかるはずだ。

足の速い獣でも急に曲がることはできない…貞治は一か八か速度をあげる。


それに合わせ、獣も距離を詰めることなく速度を上げる。

よし、そのまま、そのまま真っ直ぐに行けば…


ギャシャンッ ギャギャギャ…


派手な音。ぶつかるような、何かが壊れるような音。

その音を聞いた瞬間、目の前の剛がガッツポーズを決めるのを見た。


うまく撒けたのだろうか…貞治も安堵し、バイクの速度を緩め振り返る。

…その時だった。金属の軋む音と共に処分場から何かが飛び出してきた。


貞治はギョッとした。

象ほどの大きさの粗大ゴミをまとった何かが迫っていた。

中心にはあの人の顔。爛々と赤い瞳を輝かせる獣の姿がある。


貞治は再びバイクのエンジンを全開にした。

背後から、金属が悲鳴のように地面と擦れ合う音や、

重量感のあるものが地面にぶつかる音が聞こえる。

貞治はそれら音を聞きながら祈るようにして坂道を下る。


前方には村が見えていた。行きがけに二人が通り過ぎた村。

道も幾分か狭くなり、カーブも多いが二人は構わずそこに突っ込む。


そして信号機を通り過ぎた瞬間、貞治の隣で電線の引かれた電柱が

メリメリと折れていくのが見えた…

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