「道きり」

はじめは軽い好奇心だった。


大学2年生の春休み、貞治は近くの山に面白いものがあるから

バイクを転がしに行かないかと剛に誘われた。


見せられたのは最近そこそこ有名になっているという、

スマホのアプリ「神様さがし」で剛が言うには近くの山に

変わった神様がいて、それを調べてみたいという話だった。


「レビューがまだ一つもなくてさ、逆に狙い目なんじゃないかと思ったんだよ。

 ここで面白いもの見つけたら俺のブログも人気アップすると思わね?」


大学入学当初からブロガーを気取っていた剛だが、人気はイマイチで

メインであるバイクの知識もあまりないし文章も面白みに欠けていた。


だからこそ、この手の人気が出てきたものに目をつけてくるのは

ずいぶん浅はかだなあと思ったが友達のよしみで貞治は黙っていることにした。


「いやー、これで人気が上がったら動画も撮ってみてさあ、

 この手の内容の企画を複数手がけて広告費も大儲けで…」


とらぬ狸の皮算用。そして翌日二人は安達山へとバイクを転がした。


道中はあくびが出るほどの田んぼ道が続き、信号を曲がるときには

剛が道の端にあった小さな石碑をスマホのカメラに収めていた。


「なんかオカルトで調べたら道祖神ってのがあるんだって。

 『道きり』とかいう境界を司るナントカで…」


にわか仕込みの知識なので行っていることがあやふやだが、

しめ縄の張られた石碑には「道祖神」という文字がかろうじて読めた。


「ま、先に行こうぜ。この先の山道は20分以上かかるから。」


そうして剛はバイクを転がす。

貞治もしばらくその石碑を見つめていたが、すぐにその後に続くことにした…

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