ジャガーwithフレンズ

なつみかん

ジャガーwithTSUYOSHI

_____いつものように この乾ききったまちに 今も誰かが 悲しみの雨に濡れている

彼が歌えば、周りにはたくさんのフレンズが集まってくる。

中には、噂を聞きつけてわざわざほかのちほーから来る子もいたし、このじゃんぐるちほーの子たちはみんな彼のことを知っていた。

わたしだって、彼の歌声は何度も聞いたことがある。力強いのに柔らかなその歌声は私達を癒やしてくれるのには十分すぎるほどだったんだ。

彼の名はTSUYOSHI。ハカセや助手によれば、TSUYOSHIはヒトのフレンズ、もしくはヒトそのものである可能性が高いらしい。

どうやって来たのか、もしくは何にあたってフレンズ化したのかはわからないが、そもそもTSUYOSHI自身は別に驚きもしなかったし、むしろフレンズとはなにか、の方に食いついてた。


_____狭いベッドの中 君の笑顔に 触れるたび 世界はいつもより少し明るく見えた

TSUYOSHIはどこに住んでいたのか、というのはわからないらしく、今でもじゃんぐるちほーの雨よけができる場所で暮らしている。偶然にも、わたしがなわばりにしているところと近いのでよく遊びに行ったりする。

彼の歌声もそうだが、彼の使っているがっき?というものも不思議なものだった。

抑える糸の位置によって音が変わるらしい。わたしも触らしてもらったが、TSUYOSHIみたいにきれいな音は出なかった。

けど、TSUYOSHIはそれに対して嫌な顔ひとつせず

「まあ、初めてだからうまく押さえられないよね。僕も最初の頃はそんな感じだったから」

と言ってなんで歌を歌い始めたのかを教えてくれた。


_____Oh ながれゆく空の下 僕らは出会い別れを繰り返して 今日も明日も 歩いてく

TSUYOSHIは小さい頃から音楽が好きで、歌っていたり聞いていたりしていたという。

彼はたくさんの歌を歌ってたくさんのヒトに聞いてもらうことが夢だったみたい。

雨の日も、雪の日も歌うことを諦めなかった。

そうしたら、いつの間にかじゃんぐるちほーでフレンズに囲まれながら歌っていたんだって。

彼は、それでも歌うことをやめなくて、聞いてくれているフレンズたちのために歌を歌っているんだって。

そうしているうちに、じゃんぐるちほーや歌を聞きに来てくれるフレンズと仲良くなったみたい。

わたしも、彼の歌声がとてもきれいで少し離れた茂みから覗いていたら手招きしてくれたのがはじめましてだったかな。

そのときは、フレンズたちはいなくて、わたしひとりでその歌を聞いていた。

そうしているうちに、TSUYOSHIと仲良くなれたし、色んなお話をしたりもした。


彼は優しくて暖かくてつい、目がいってしまう。どうしてかはわからない。

けど彼は、それすらも見透かすようにこういった。

「ジャガーさんは、僕の、特別なフレンズですから」


「TSUYOSHI、よろしくね!」


そういうと、TSUYOSHIは少し照れたようにうつむき、笑顔を見せる。

それを見てわたしも笑い返したのであった。

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ジャガーwithフレンズ なつみかん @natumikan72

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