第一章 冒険者 4話

登場人物の名前を変更しました。

アルフ=レイ

アーリン=ルシア

理由として主人公の名前がアドラで頭文字がアから始まる登場人物が三人になってしまうこと、アドラとアルフで微妙に紛らわしいことから変更することになりました。

いままで読んでいただいた方には違和感がでてしまうかもしれませんがご了承ください。

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 ギルドには俺、レイ、ヒューバート、キース、副ギルド長、いつの間にか居たレイの仲間の魔法使いが向かい。ギルドの受付カウンターの先にある階段を上がり二階にある部屋に通された。そこは会議室なのだろうか、広いが机と椅子ぐらいしかない部屋だった。


「さて、本来ならばお茶を待ってから話をするものですが、今回は時間が惜しいのでさっそく始めたいと思います。私もある程度の情報は聞いていますが、より詳しく現状を把握するためと情報共有のために、みなさんの知っていることを教えていただきたいと思います」


「そういえば副ギルド長はいつの間にこの件を知って,、ギルドとして動いてくれていたんですか?」


「いえ、ほとんど知りませんでしたよ。多少キースが何かしているとは聞き及んでいましたが、ギルドと広場に居た冒険者から聞きだした情報がほとんどですね」


「それは…ギルドが動いているというのは…」


「今はちゃんとギルドとして動いてますよ」


どうやら副ギルド長が広場で言ったことは、詳しい事情もほとんど知らずにその場に合わせて言ったことらしい。


「さて、事の起こりはそこにいらっしゃる仮冒険者のアドラ君が、ギルドで闇魔法を使ったことだと聞きましたが本当ですか?」


「え…いや…あ、はい」


やってはいけないことをしてしまった可能性があり、そのせいで皆の注目を集めている。ヒューバートなんて思いっきりこちらを睨んでいた。これはかなり不味い状況ではないのか?胃が痛くなり脂汗が止まらない。


「アドラ君、落ち着いてください。今回の件はあなたが根本的な原因の可能性は少ないと聞いています。ギルドで何の魔法を使ったのか教えてくれませんか」


「ええと…魔力の検知という魔法で…周囲の闇の魔力が多い場所を特定できる魔法です」


「ではなぜその魔法を使ったのですか?」


「あの…闇の魔力は負の感情から発生するらしく…ルシアさんがかなり疲れていたようだったので…どの程度の闇の魔力が発生してるのかなと…」


「ふむ、つまり好奇心からの行動ということですね。相手の了承なしに魔法を使用したり、相手の情報を探るのはマナー違反になります。下手をすれば敵対行動ともとられかねないので気を付けてくださいね」


「はい…すみません」


あの時かなり軽い気持ちで魔法を使ってしまった自分をぶん殴りたい気分だ、マナー違反ということで罪にはなりそうにないのが救いだ。


「さて、話の続きですがアドラ君が使った闇の魔法に気づいた数人の冒険者が、キースの元にやって来たそうですね」


「ええ、どんな闇の魔法かは解らないが違和感は無いかと聞かれましたが、特に異常は感じませんでした。しかしアドラが挙動不審になった時に言った教会に行ってはどうかという言葉で、ルシアの不調に何か関係があるのではと感じました」


「不調の原因そのものだとは考えなかったのですか?」


「レイ達とアドラが合う前からルシアが不調だったこと、魔法を検知した冒険者が言うには魔法の隠匿がまったくできておらず気づいて欲しがっているようだったこと、ルシアを害するなら教会に行けとわざわざ言う理由が無いこと、あとは自分の感覚ですがアドラがそんなことをする人間とは思わなかったこと、以上の理由からアドラが原因では無いと考えました」


キースに以外と信頼されていたことに一瞬俺は喜んだが、よく考えると単に意気地が無いと思われている可能性もあって喜びが半分くらいになった。

しかし俺の魔法は察知できる相手にはバレバレのようだった、実は宿での魔法の訓練も複数人にバレているのではないかと気が気でない。


「それでキースはとりあえずレイ君達に教会に行ってもらったんですね?」


「ええ、状況はまだ不鮮明でしたが闇の魔法が関係している可能性があるならば、教会に行くべきだと思いました。そこでレイ達に合い事情を説明したんですが、その時にちょうどヒューバートも居ましてね」


「で、それを聞いた俺は念のためコイツの監視をすることにしたんだ、闇魔法使いは信用できないからな」


偶然かと思っていたが監視されていたらしい、今後なにげなく歩いている人も監視してるのでは、と気になって仕方なくなりそうでゲンナリする。


「レイ君達は教会で浄化を受けに行ったようですが、結果は言うまでもありませんね」


「はい…教会で視てもらった結果ゴーストに取り憑かれるていると判明して、浄化してもらっていたのですが、その最中に急にルシアが暴れだして外に飛び出して行ってしまったんです」


「そして俺が見張っていたコイツを襲いに来たわけか、しかし事件と関係がないなら何でコイツが狙われるんだ?やっぱり一枚噛んでるんじゃないのか?」


「いや本当に俺は関係ないですよ」


本当に何で俺の所にピンポイントで来たのだろうか?いい迷惑である。そんな疑問に答えたのは副ギルド長だった。


「これは憶測ですがルシア君と会った時に、取り憑いているゴーストに目を付けられたんでしょうね。ゴーストは闇の魔力に惹かれる性質がありますから」


そういえば襲ってきたルシアが、魔力を寄こせと言っていた気がする。


「ならコイツがまたゴーストに襲われるんじゃないか?コイツの近くを張ってればルシアを捕まえることができるかもしれねえ」


「そうであればずいぶんと手間が省けますね」


魔法を数回程度しか使えない少ない魔力なのに、そのせいで命を狙われるとはまったくワリに合わない力である。


「少し話がズレましたね。ゴーストが取り憑いたルシアがアドラ君を襲いどうなりました?」


「殺されそうになったんで仕方なく俺が助けた、その後にレイも合流してルシアを捕獲しようとしたんだが、あと一歩というところで外に逃げられちまって俺とレイが後を追ったんだが、そこに聖騎士団の奴らが攻撃魔法を撃ちやがった!」


その時のことを思い出したのか、ヒューバートは説明する声が荒々しくなっていた。


「私はその魔法の爆発音を聞いてヒューバートに何かあったのではと思い、今回の件に協力してくれていた冒険者達と一緒に外にでました。そしてヒューバート達と合流して何が起こったのかを聞き、聖騎士団に事情説明を求めたわけです」


「そして聖騎士団と対立することになったわけですね。さて、これで情報共有が済んだわけですが何か質問がある方はいますか?」


「いいでしょうか」


「レイ君どうしました?」


「聖騎士団はルシアが教会では払えないほど強力なゴーストに取り憑かれたと言って、ルシア諸共ゴーストを浄化しようとしています。でもそれはいくらなんでも乱暴すぎます。探せば他にルシアを助ける方法があるはずです」


「レイ君、強力なゴーストに操られた宿主を仕方なく殺さざるおえないことがあることも事実です」


「それは…」


「ですが今回の教会の判断は少々性急すぎると思います。ゴーストが浄化中に暴れだしたということは浄化の効果が多少なりともあった可能性があります。次に宿主であるルシアさんは石ランクとはいえ、そこまで強力な肉体ではありません。ゴーストにより強化されていてもヒューバート君とレイ君の二人で追い詰めることができたのでしょう?手練れの人間が数人いれば捕えることは容易なはずです」


「ではどうして教会はルシアを捕えずに殺そうとするんでしょうか?」


これは関係の無い話なのですが、と前置きして副ギルド長は話し始めた。いきなり関係のない話などするはずがないので、あまり大ぴらに言いたくないことなのだろう。


「数年前にあった教会のごたごたから、王国は教会への寄付を年々減らしているそうです。今年の寄付金額についてそろそろ議論される頃合いですが、今年も減らされる可能性がありますね」


「やな話ですね」


「どういうことでしょうか?」


「今回の件と何の関係があるんだ?お前はわかるのか」


レイとヒューバートは理解できていないようだった。


「王国は教会への寄付金を減らしていて、今回のゴーストを祓うのに失敗した件を知れば、更に寄付金を減らされるかもしれないってことです」


「それでどうしてルシアが殺されなくちゃいけないんですか?」


「さっきの聖騎士団の人が言ってましたけど、教会で祓えないほどのゴーストだった、ということにしたいんだと思います」


「なんだそりゃ!自分達の失敗を他人に擦り付けて殺すってのか!」


ダン!と机が割れるんじゃないかと思うほど強く拳を机に叩きつけ、ヒューバートは怒りを露わにした。レイやキースも黙っているがその顔は険しいものだった。一緒に居て居心地のいいものではなく、俺は姿勢を正すように身じろぎした。


「みなさんの怒りも解りますが、まずはルシア君を助ける方法を考えましょう」


副ギルド長の言葉に場の雰囲気が剣呑なものから真剣なものに変わる。


「とにかくまずはルシアを見つけないことには始まらないぜ」


「そこは探索している冒険者に期待するしかありませんね、警備隊にも協力をお願いする伝令を送りましたが、彼らは貴族街に入り込まないよう防衛に力を入れるでしょうから、捜索の人員はあまり期待できませんね」


「しかし貴族街に逃げられないようにしてもらえるだけでもありがたいですね、貴族街に入ればそれこそ問答無用で処刑されてしまう」


キースが物騒なことを言っているがやはりファンタジー世界の貴族は碌な奴が少ないのであろうか?貴族街には今後一切近づかないようにしようと心に決める俺だった。


「ルシア君を捕まえたとしても、どうやってゴーストを祓うかという問題もあります。強力な光魔法使いは教会の関係者がほとんどですからね、フリーや冒険者の光魔法使いも居ないわけではありませんが、数が少ないですし呼んですぐに来てもらうことは難しいですね。レイ君も光魔法を使えるようですが…」


「悔しいですが僕は強化系の魔法しか使えません」


「となるとルシア君を捕獲してギルド内に拘留し、その間に光魔法使いを呼んで来る。というのが現実的な方法になりますかね、変則的な方法としてはアドラ君が何かできないかですね」


「無駄だぜ副ギルド長、コイツはルシアに襲われても何もできなかったからな」


確かにあの時は何もできなかったが、今なら何かできるかもしれない。まあかもしれないだけで結局は何もできないかもしれないが。


「もしかしたら何かできるかもしれないので、ゴーストがどんなモンスターか教えてくれませんか?」


「ええ、いいですよ。ゴーストは無念を残して死んだ生物の魂がこの世に残り、闇の魔力を得ることによって周囲に影響力を及ぼすようになった存在だと言われています。本体が実態を持たず魔力の塊のような存在なので物理的に排除するのが難しく、光魔法やそれに類する魔道具で対抗するのが一般的ですね。他にもゴーストの無念を晴らして消滅させたという記録も残っています」


ゴーストは魔力の塊り。という副ギルド長の説明を聞いて、俺は案外簡単になんとかできそうだと思ったのだった。

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