Chapter 45 突然の女神
「それじゃ会議始めよっか。議長はリーダーのアナスタシアで。」
「ええっ…!?わ、私ですかっ…!?」
安眠屋へと戻って来た俺たちは第1回猫耳会議を開いている。え?なんで猫耳かって?それはアナスタシアが可愛いからだよバカヤロウ。
「えっと…じゃあまずは今後について決めたいと思います…!今日この後買い出してから逃げるというのは決定しましたが逃亡先をどうするのかがまだ決まっていません。皆さんで何か案がある方はいらっしゃいますか?」
流石はアナスタシア。少しオドオドしているが立派に議長を務めている。やはり俺たちの永遠のリーダーはアナスタシアだ。別の地域に行ってもナーセシス隊はフォーエバーだな。俺が議長なんてやったらキレカワがまたやりたい放題で滅茶苦茶にされるのが目に見えてる。はっきり言って論外。
ルキナは王女だからカリスマ性あるだろうけど俺至上主義に傾く可能性がある。そんな独裁的な体制は望まない。あくまで民主的に行って欲しいからな。
ルナはいわずもながら一方通行に突っ走る傾向がある。特に自分を犠牲にするからリーダーとしてはダメだ。ルナはストッパーとセットでないと。
「東にいけばいいんじゃない?もともとそのつもりだったんだし。」
俺もといキレカワがさらっと言う。まあ確かにそうだな。俺は龍神に用があるだけだ。はっきりいえばダンジョンとかどうでもいい。東方行く為に仕方ないから攻略しようとしてただけだ。もうこの国を出て行くなら関所?なんかどうでもいい。ぶち壊して進んでやる。
「前にも言いましたけどここから直接東方へ行くには許可を得ないと通れませんよ?兵士が検問所にいますから。」
「どうせお尋ね者なんだからお尋ね者らしく強行突破すればいいんじゃない?」
「ダメですよっ!?却下です!!却下!!」
怒られてしまった。やっぱキレカワはダメだな。
「リンって東方行きたいの?」
「うん。」
「黒髪って事はやっぱりリンは東方の出身なんだよね?自分の故郷に帰りたいって事?」
「いや故郷には帰りたくないかな。」
「ならどうして?ていうか許可証ないならどうやってヴィルトシュヴァインに入って来たわけ?」
……このドジっ子、気づいちゃいけない事に気付きやがったな。アナスタシアとルキナもそういえばどうやって来たんだろうみたいな顔してやがる。勘のいい子は嫌いだよ。いやルナ大好きだけどさ。
どうすっかな。正直言っちゃう?隠す事でもないよな。信じるかどうかは別として。考えるのも面倒か。言うだけ言ってそれから考えればいい。もう言ってしまおう。
「えっとね、私って東方から来たんじゃなくて異世界から来たんだよね。」
「……。」
「……。」
「……。」
……黙っちゃったよ。みんな黙っちゃったよ。化石化してるよ、金の針買わないとダメじゃない?
「冗談で言ってるんじゃないんですよね…?」
アナスタシアが恐る恐る俺に聞いてくる。かなり訝しんだ感じだ。そりゃそうなるだろうな。異世界とか意味不明だもんな。
「うん、本気だよ。」
「異世界ってこことは違う世界って意味よね?」
ルナは全く訝しんだ感じではない。平常運転のキリッとしたダメじゃない方のルナだ。流石は将軍といわれるだけあって肝が据わっている。
「そうだね。」
「……私、聞いた事があります。スノウフレイクの書庫にあったと思うんですけどずいぶん前に異界から現れた旅人の手記みたいなのがあるって。」
「えっ?本当に?」
「は、はい!」
マジかよ。ルキナが爆弾投下しやがった。え、俺だけじゃないんだ。前にもいたんだ。いや、小説って可能性もあるしガセって事もあるけど誰か転生人がいたかもしれないってことか。
「俄然スノウフレイクにいきたくなったんだけど。」
「でもスノウフレイクは帝国に占領されてるので…」
「あ、そっか。将来的に帝国を潰すかスノウフレイクに侵入するしかないね。ていうか意外だけどみんな私が異世界から来たって言っても疑ってないんだね?アナスタシアは若干怪しいけど。」
「ひ、酷いですよリンちゃんっ…!?私は別に疑ってなんかいませんっ!!ただちょっとビックリしただけで…」
「うそうそ。冗談だよ。」
「もうっ!!」
猫耳が垂れてしょぼんとした状態のアナスタシアはやっぱり可愛いな。こんな話をしていても癒される。
「2人は完全に受け入れてるよね?ルキナは転生人の手記だっけ?それがあるからだとしてもルナはなんで?」
「リンが嘘つくわけないでしょ。」
ルナがまっすぐな目で言い切った。
……このドジっ子が。不覚にも本気でドキッとしちまったじゃねえか。
でも……なんていうか信じてくれるってのは嬉しいな。
「今のはちょっと心にグッときたかも。」
「おっ?お姉さんっぽかった?」
「そういう事言わなきゃお姉さんだったのにルナはやっぱり次女だね。」
「ちょっと!!リン!!」
「フフ。でもみんなが信じてくれて嬉しいよ。ありがとう。」
みんなから笑みが溢れる。やっぱりお前らを俺の嫁にして良かったよ。心からそう思う。みんなちゃんと平等に可愛がってやるからな。これからもっとハーレム拡張するだろうけどお前たちはその中でも別の存在『至高の三傑』として崇めていこう。
「あの、リンちゃん。リンちゃんはどうやって異世界からこっちに来たんですか?」
「ああ、それはじさ『はーい、ストップ。』」
俺がアナスタシアに話していた言葉を強制的に阻止される。いや…全てが止まったような、全ての時が制されたような奇妙な感覚。違う、そうじゃない。誰かの声がした。この部屋に誰かがいる。俺は後ろを振り返る。
「誰だ……お前……?」
ゆるくクセのついたロングの髪、ロングワンレングスに近い感じで紫とピンクが混じったような髪色。ワインレッドのだらしないドレスみたいな服。顔の造形は整っているが気だるげな瞳をしている怪しい女がそこにいた。
女は半笑いで俺を見ている。それが奇妙で妙に恐ろしい。ザイル将軍なんか子供に見えるぐらいの恐ろしさを感じる。
なんだこいつ…マジなんなんだ…?直感でヤバいのがわかる。逃げなきゃ不味い。どうやって?わかんねえ。どうする?どうすればいい?
『そんなに焦らなくても大丈夫だよ〜。なんにもしないから。』
「はあ…?そんな台詞誰が信じんだよクソ。どう見たっててめえはヤバい奴だ…ろ…って、あれ?俺、口調が…?」
おかしい。キレカワの口調にならない。通常の俺の口調だ。なんの補正もかかっていないスタンダードな俺。何かがおかしい。
『私としゃべるだけなんだから素のままの方がいいでしょう?』
「お前……一体誰なんだ……?」
『あれ〜?わからない??頭悪いんだね〜。異世界転生に賭けて雪山で自殺するぐらいぶっ飛んだ脳みそしてるくせに。』
「おまっ…!?それ、なんで…!?」
女は口元を緩ませニヤっと笑いながらしゃべる。女は美しい顔のままだが俺には醜悪な笑いに見えた。
『私は女神。女神ヴェルダンディ。渡辺凛。お前を転載させた者です。』
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