Chapter 40 初めてのピンク髪
はいどうもー!!今日もみんなの元気印、渡辺凛ちゃんでーす!!いぇーい!!
さー、今日も生配信の時間がやってまいりましたが、今日はですねー、ホラー実況とかやっちゃいまーす!!
そこで今日来たのがこちら、ドーン!ギュルテルティーア帝国に占領されちゃった悲惨な街ブルーメにある墓地でーす!!
いやー、異世界系ホラー実況とかやる人僕ぐらいしかいませんよね!!実に新しい!!
さてとそれでは実況始めましょうか。見てください、これが異世界の墓地です。普通にキリスト教系のお墓ですね。特に怪しい所もありません。あ!!道具屋のおっさんが言っていた小さくて古いお墓がありましたよ!!それではさっそく調べて見ましょう!!お!!開いた!!開きました!!階段が出て来ましたよー!!なんだか裏ボスでもいそうですねー。それでは入って調査の方を進めて行きたいと……って飽きたな。もういいや。
道具屋のおっさんが言う通り抜け道を発見した俺はそこをズンズン進んで行く。迷う事は無い。一本道だからだ。だが明かりが無いのがキツイ。奥まで進むと月の光も入って来ないから全く見えない。それでも俺のなんらかの加護が働いているのか感覚だけでどこに何があるのかがわかる。敵もいなければ物もない。あるのは土と岩と石だけ。
その中をひたすら進んで行く。ゆとりを持ってアナスタシアとルキナに朝に帰るって言っておいてよかった。ギリギリの行程だったらヤバかったな。チックウィード助けたらすぐ帰ろう。出た所にチックウィードがすぐいれば戦争するわけじゃないからそのまますぐ引き返せる。パッと行ってパッと帰る。それだな。
そう思いながらひたすら進んでいると視界の上に薄明かりのような横一閃の光が見えた。俺は息を殺して慎重にそこまで進む。その筋に目をあてると部屋の明かりである事を確信した。入って来た時と同じような階段タイプ。俺が出るのは地面から。片側しか開かない蓋のような扉。全方位の索敵は出来ない。一先ずは耳をすませて状況確認だ。
俺は耳をすます。少し離れた所に人の声がする。複数人の声だ。男の笑い声と喋り声。女の呻き声か…?喘ぎ声ではないからお楽しみ中というわけではないだろう。チックウィードだろうか。現段階では保護対象である可能性濃厚。それならまずは詰所内部へ進入だ。
俺は感覚を研ぎ澄ますように蓋の周囲に人がいないか意識を張り巡らせる。誰もいる気配は無い。いたとしたら一気に制圧だ。最悪フランメ乱発して急いで逃げる。こういうのは勢いが大切だ。行くぞ。行くぞ俺。
大きく息を吐いて蓋を開け俊敏に詰所内に身体を出す。そしてすぐさま360度索敵を行うが誰もいない。薄汚れた薄暗い室内にある通路の隅に俺はいた。蓋を元に戻して入口を確認するが地面の模様と一体化していてここに抜け道があるなんて全くわからない。精巧な作りだ。
即行動。気配を殺しながらゆっくりと声の方へ進む。今の所牢は無い。ただ上に続く階段はあった。ここから城内部に入るんだろうか。そんな事を考えながら抜き足差し足で進んでいるととうとう件の場所へと出る。牢屋だ。入口は開いている。中には6人の男帝国兵と壁に四肢を鎖で繋がれたピンク髪の女がいる。身体が前のめりになっている為顔は見えないがピンク髪だ。初めて見たぞピンク髪。なんかイイな。これでゴリラじゃなかったら最高だったのに。ゴリラ将軍か…残念だな。でもゴリラ将軍ひん剥かれて上下下着姿になってるから身体のラインはっきりわかるけどイイ身体してんな。はっきり言ってエロい。やっぱヤられちまってんのか?ゴリラでもムラムラ来てる兵士たちにとっては処理道具になっちまうか?うわ…身体の痣とかヤバいな。紫色じゃん。腹が集中的に酷い。流石に見るに耐えないぞ。それに四肢を鎖で繋がれて倒れこんでるようだから鎖で繋がれてる箇所が壊死したような色してる。鬱血か。胸糞悪いな。いくらゴリラ将軍でもこれは胸糞悪い。
壁に隠れながら牢屋の中の様子を見ているとゴリラ将軍を囲んでいる兵士の1人がゴリラ将軍に近づき力任せに髪を掴んで項垂れている頭を起こす。
「オイオイ、何休んでんだァ?」
「……。」
この角度だとゴリラ将軍の顔が見えない。流石にゴリラ将軍と言われるだけの豪傑でもこの状況じゃ心折れちまってるだろう。待ってろよゴリラ将軍。俺は美少女しか助けない主義だがルキナに対する恩があるお前を必ず助けてやるからな。
「怖え怖え。そんな顔してるとせっかくの美人が台無しだぜ?チックウィード将軍様よ。」
「……。」
「流石は常勝将軍と言われるだけの事はあんなァ。これだけズタボロにされても全く心が折れてねェ。だけどよ、少しは女らしくしたらどうだ?オラ、お願いしてみろよ。許して下さいって。何でもしますから打たないで下さいって。ヘヘッ。」
「……帝国も本当に腐り切ったものだな。貴様のような屑が大隊長とはな。」
「いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞこのクソアマが!!」
大隊長と呼ばれた兵士が大声で怒鳴りながらゴリラ将軍の腹を執拗に殴る。サンドバッグのように5発、6発と打ち込んでいる。
…本当にイラつくな。無抵抗の女にそこまでやるかよ。
「ぐうっ……ううっ……」
ゴリラ将軍の悲痛な声が地下牢に響くと、クソ兵士たちの馬鹿笑いが反響するように地下全体に響き渡った。
「大隊長、少しは手加減してやらないとルナちゃん泣いちゃってんじゃないっすか!!」
「おっと!これはすまんすまん!ちょっとやり過ぎちまったな!」
もういいわ。流石に我慢ならねえ。様子もクソもねえよ。全員殺してゴリラ将軍連れて脱出するわ。それにしてもゴリラ将軍、ルナって名前なのか。名前は可愛いな。
イライラオーラを撒き散らしながら神魔の剣を引き抜いてカチコミに行こうとした時、反対側の通路から異様な気配を感じたので俺は反射的に身を隠した。なんだこの嫌な気配は。初めての感覚だ。
すると反対側の通路から立派な装備を身に付けた30代ぐらいの坊主頭にラインが入った男が現れた。なにあの頭。ザイルっぽい奴じゃん。炎みたいなラインが入ってるよ。え、アイツも転生して来た系?こっちでもあんな頭にしてる奴いんの?サングラスこそかけてないけどどうみてもザイルのボーカルの頭だよ。
「やめろ。」
ザイルの低い声でクソ兵士たち6人が振り向く。するとすぐさまザイルの元へ集まり、軍隊の敬礼みたいな事をし始める。
「ご苦労様であります、アイゼンフート将軍!!」
ザイルがアイゼンフート将軍か。なるほど、あの雰囲気だもんな。アレヤバくね?ザイル相当強いだろ。ジュノーよりヤバい雰囲気出てる。俺がビビる感じになってるのが明らかにヤバい。これは多分警報みたいな感じの加護が働いてるんだと思う。ジュノーは俺と敵対してないからとかじゃない。ザイルは絶対ヤバい。アイツとは戦っちゃダメだ。まだ様子を見よう。つーかどいつもこいつも邪魔だな。ゴリラ将軍の顔が見えねえよ。いや一応気になんじゃん。イイ身体してるしさ。
「どけ。」
ザイルが一声発するとクソ兵士たちが慌てるようにザイルが歩く道を空けた。クソ、今度はザイルが邪魔だ。ゴリラ将軍見えない。
「惨めな姿だな、ルナ。」
「……カイゼルか。何の用…?」
「皇帝陛下に詫びを入れろ。俺が口添えしてやる。」
「……詫びなど入れるつもりはない。」
「意地を張ってどうする?このままだとお前は明日処刑だ。」
「……別に構わない。」
「お前が前皇帝に忠誠を誓っていた事は知っている。俺もそうだった。だがレーヴェン皇帝はもういない。お前が義理立てする理由は無いだろう。」
「……あのような屑に私の心は捧げられない。」
「捧げる必要も無い。ただスノウフレイクの件を詫び、帝国の為に剣を振るうと誓えば良いだけだ。」
「……スノウフレイクの件は後悔している。」
「ならば答えは出ただろう。今から詫びに行くぞ。」
「……もっと早くに私が動き、あの愚帝を葬っておけば良かったと後悔している!!」
ゴリラ将軍が振り絞るように大きい声を出してザイルを睨むように顔を上げた。俺はここで初めてルナ・チックウィードの顔を見た。
「それがお前の答えか。」
「……ああ。」
「残念だ。」
ザイルが後ろを向き牢から出た所で足を止める。
「チックウィードをこれ以上拷問する事を禁止する。わかったか?」
「はっ!!」
クソ兵士たちが敬礼しながらザイルが出て行くのを見守る。そうしてザイルがいなくなるのを確認するとクソ兵士たちは苛立ちを見せる。
「おい、マジでもうコイツ殴れねえのかよ。」
「ストレス発散したかったのによチキショウ!!」
「まあいいじゃねぇか。殴るのも飽きてきたし、それに…そろそろイイだろ?」
「クヒヒ、大隊長、その顔ヤバいっすよ!」
「しゃあねえだろ。アイゼンフートの野郎が絶対来っと思ってたから我慢してたんだよ。これで邪魔者はもう来ねえ。ヘヘ。」
クソ兵士たちがルナに近づく。身につけいる鎧などを外しながら。
「それじゃチックウィード将軍。楽しい事しよっか。」
「へへ、ルナちゃんも痛いのより気持ちイイ方がいいっしょ?」
「そーそー、どうせあと半日ぐらいで死んじゃうんだから最後に気持ち良くなった方がいいって。」
「大丈夫だよ怖がらなくて。俺たち上手だし。」
「バーカ、お前この女がそんなタマな訳ねえだろ。身体使って将軍まで上がったんだよ。前皇帝やアイゼンフートともヤリまくってんだぜ。」
「ま、このツラだもんな。普通ヤリたくなるよな。コイツ前から犯してやりてえって思ってたんだよね。夢叶ったわー。さてと、そんじゃルナちゃん。楽しい事しようね。」
「……好きにしろ。」
大隊長とか言われている男がズボンを下ろそうとした時に俺は牢内へ入った。大隊長を背中から一突きし仕留める。慌て出す残りの有象無象たちだが声を出させる前に神魔の剣を五回振り沈黙させた。初めて人を殺したが特に何の感情も湧かない。ルナを痛めつけた奴らに罪悪感なんかカケラも感じない。
俺はルナに近づくとルナが力無く顔を上げる。
「……誰?」
「初めましてルナ・チックウィードさん。私は凛、渡辺凛。」
「……リン?その髪色…東方の者か…?何故東方の者がここに…?」
「うん、とりあえずさ、確認したい事あるんだけどいいかな?」
「……何?」
「ルナって処女?」
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