Chapter 38 初めての乗馬

はぁーい!異世界転生して絶世の美少女ライフをおくっている凛ちゃんでーす!

いやいやー、大変な事になって来ましたねぇ。ステステ草をギンコが買って来なかったんですよ。使えませんねこのおっさん。何の為に生きてるんでしょうね。

え?ブルーメの占領問題をどうすんだって?いやー、そんなの僕に言われても知りませんよ。正直どうでもいいです!問題なのは王都にどうやって戻るのかって事です!

さて!!どうやって帰ろう!!







「な、なんだって…?ブルーメが占領…?本当に言ってるのか…?」


「ああ!!冗談で言うような内容じゃないだろう。」



チッ、めんどくせえな。変な話持ってくんなよ。俺のいない時にやってくれよそういうの。



「だが一月前に買い出しに行った時はそんな気配も何も無かったはずだ…!?」


「攻め落とされたのは一昨日らしい。一気に帝国が侵攻し、一晩で抑えたそうだ。」


「そんなバカな…!?守備隊はどうした!?ブルーメの守備隊はそんなにザルではないだろう…!?」


「帝国三将軍の1人、カイゼル・アイゼンフートと幻影騎士の1柱、ケルニヒ・プフィルズが出張ったそうだ。」


「なっ…!?」


「数の差もそうだが、その2人を相手に出来る者は誰もいない。俺が行った時には守備隊の処刑が行われている所だったよ。」




なんかお通夜ムードが漂ってるけどさ、それ他でやってくんない?俺らに関係ないじゃん。アナスタシアは神妙な顔してるけどルキナなんか全然興味ない顔……してねえわ!!凄い怖い顔してるよ!!あ、帝国絡んでるからか。憎しみが前面に出てる。



「とにかく早く王都へ伝えねばならん。そして急ぎ砦を築き帝国への対抗をせねば。」



ギンコがアナスタシアへと向き頭を下げる。



「すまん。ステステ草を手に入れる事は出来なかった。王国の鎧を着て街に入る事は出来なんだ。本当に申し訳ない。」


「そ、そんな…!!仕方がありませんよ…!!謝らないでくださいっ!!」



そうかあ?気合いが足りないんじゃない?必死になれば買い物ぐらい出来たよね?ギンコ甘ったれてんじゃね?



「でもどうしましょうか…歩いて帰ると少なくとも5日はかかりますし…」



えぇぇ…嫌なんだけど…俺、歩きたくない。はっきり言うけど俺根性ないよ?それなのにそんな距離でしょ?無理だって。中学の時に山登りさせられる宿泊学習っていう泊まりのイベントあったけど死にそうになったからね?それぐらい根性ないよ?無理だって。



「夜には交代員が王都から来る事になってはいるがステステ草は持っていないだろうからな。何より馬で来るのですぐに王都へ行って戻って来るというわけにもいかん。急ぎエアストダンジョン近郊へ戻っては来るが早くて2日後になる。それまで待てるか?」



待てません。もう俺は美味しいごはんとルキナを食べたいから無理です。



「でも待つのが得策というかそれしかありませんもんね…」


「それじゃ私がステステ草買いにブルーメ行って来るよ。」



おいやめろマジで。なんだそのちょっとコンビニ行って来るみたいなノリ。そんな危険地帯に行ったら絶対ヤバい。帝国兵に捕まって拷問という名の陵辱をされるのが目に見えてる。そんなの絶対嫌だ。



「あ、危ないですよっ!?」


「そうですよ!?いくらリンさんでも危険です!!」



ほらアナスタシアとルキナもこう言ってるだろ。やめろって。仕方がないから2日我慢するから。干し肉と給食パンあるし。マジ買っといてよかったわー。



「大丈夫だよ。戦いに行くわけじゃないし。ステステ草買ってすぐ戻るからさ。」



お前マジいい加減にしろ。ちょっと黙れって。



「なら私も行きます。」



いやルキナも余計なこと言ってないで止めろ。お前も来て捕まったら今度こそ陵辱されるぞ。兵士に代わる代わる輪姦されるぞ。



「ルキナはダメだよ。アナスタシア守ってもらわないと。」


「でも…!!」


「すぐ戻るって。だからルキナはアナスタシアをお願い。ね?」


「……わかりました。」



納得すんなよヴァンパイアガール!!



「アナスタシアもいいでしょ?」


「リンちゃんは言っても聞きませんからね…わかりました。必ず戻って来て下さいよ?」


「うん。」



猫耳娘まであっさり納得しちゃったよオイ。



え。これマジで俺が行く流れ?誰か反対してくんねえの?俺ヤられちゃうよ?犯されちゃうよ?マワされちゃうよ?



「行くというのならば止めはしないが本当に行くのか?」


「行きます。ただ一つお願いが。」


「なんだ?」


「馬を貸してもらえませんか?」


「ああ、そうか。ブルーメに行くのに歩くのなら意味がないものな。ただ問題がある。」


「問題?」


「俺が乗って来た馬は当然使えない。休ませないとすぐに潰れてしまうからな。」


「休ませる時間が必要って事ですか?それが問題だと?」


「いや。馬はもう一頭いる。いるんだが…懐かないんだ人に。」



そういうことか。暴れ馬ってことね。よし、なら諦めよう。ルキナとしてないのに蹴られて死んだら流石に死にきれん。



「どんな馬ですか?」


「見るだけ見てみるか?」



俺たちはギンコに連れられてエアストダンジョンに覆われている遺跡の裏手にある場所へと向かった。そこにはギンコが乗っていた馬より一回り大きく逞しい立派な黒馬がいた。

スゲーカッコいい!!雰囲気ヤバいぞ!!



「これがその馬だ。元は国王陛下に献上された馬だったのだが誰の言う事も聞かなく国王陛下さえも背に乗せる事がなかった為、騎馬に回されたのだが、乗馬しようとした兵士を蹴り殺してしまった為ここへと回された。要は王都から追い出されたと言うわけだ。」



蹴り殺したの!?それはダメじゃない!?戦闘力高すぎだろ!?



「そんな気難しい馬には見えないですけど。」


「ルキナは馬に詳しいの?」


「そうですね。家族でしたので。でも…皆散ってしまいました…」



俺は俯いたルキナの頭をそっと撫で胸に寄せた。アナスタシアとギンコたちがいるから過度に接触は出来ないけど今はこのぐらいで。ルキナもなんか嬉しそうだし少し元気になってくれた。



「乗れれば俺たちとしては全然構わないが……」



俺は黒馬に近寄る。凄い威圧感だ。蹴り殺されそう。でもなあ。俺は動物好きなんだよね。馬も当然大好き。出来れば仲良くしたいんだよなあ。蹴らないでくれないかなあ。


「初めまして。私は凛、渡辺凛。キミに乗りたいんだけど乗せてくれないかな?」



俺はそう言いながら黒馬の頬をそっと撫でた。すると黒馬は一鳴きし、俺に乗れと言わんばかりの目を向ける。俺はそれを許可だと解釈して颯爽と黒馬の背に跨った。嫌がる事も拒絶する事も無い。黒馬は俺を受け入れてくれた。



「わー!!リンちゃんカッコいいですっ!!」


「流石はリンさん!!」


「ま、まさかその馬が人を乗せるなんて…!?」


「し、信じられん…!?」




おっさん2人は驚愕の顔して、アナスタシアとルキナは雌の顔して俺を見てやがる。ふふん。俺はイケてるからな。女だけど。



「それじゃちょっと行ってくるね。ルキナ、アナスタシアを頼んだよ。」


「わかりました。リンさんの期待に応えます。」


「一応2人に言うけど、朝までに私が帰らなかったら王都に戻って危ない事しないで平穏に暮らして。」


「…リンちゃん、そう言う事言うと怒りますよ?」


「…そうですよ。流石にそれは私も黙っては聞けません。」


「危険ゼロでは無いからさ。だから万一の時の事も備えて欲しい。2人には幸せになって欲しいから。だからその時は私の願う通りにして欲しいな。」



なんと言われようと俺が死んだら2人にはそう動いて欲しい。俺が愛した女は幸せになって欲しいから。間違っても俺の後を追ったりはして欲しく無い。



「……わかりました。リンちゃんはズルいです。」


「……それがリンさんの願いなら逆らえません。」


「ま、大丈夫だよ。99%ちゃんと戻るから。それじゃ行くね。」


「はいっ!!リンちゃん!!待ってます!!」


「気をつけて下さいね!!」



俺はアナスタシアとルキナに軽く微笑んで黒馬とともに駆け出す。

さてと、行きたくないって気持ちはあるけど黒馬と走りたいって気持ちもあるから複雑な気分だ。先ずはこの黒馬の名前を付けないとな。俺の相棒だし。カッコイイ名前、馬、この見た目。これらの条件から考えて俺が名付けるなら、



「キミの名前、ルドルフにしよっか。それでいい?」


「ヒヒーン!!」



考える事なく即答で黒馬は鳴いた。どうやら気に入ってくれたようだ。



「ていうかすごい速いね。もう一頭の速度より明らかに速い。流石はルドルフだね。」


「ヒヒーン!!」


「それじゃルドルフ、ブルーメまでよろしくね。」




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