Chapter 37 急展開
夕方になったので転送石を使ってダンジョンから出る俺たち。あれからダンジョン7階層まで攻略し、8階層に出た所で探索を終えた。結論から言うと特に何も無い。5、6、7と探索をしたが特に何も無かった。宝箱は無いしボスっぽいやつもいない。いたのはオークとその1つ上のクラスであるハイオークが新たに出ただけでオークジェネラルもいなかった。当然というか当たり前のようにドロップアイテムも無い。マッピング出来なかったら完全に時間のムダだったぞ。俺のラック値低いのか?こんなにドロップせんもんかね。
「疲れましたね。」
「そうですね…でもルキナちゃんが一番疲れてますよね。1人で魔法連発してモンスターを倒してたんですから。」
「それは特に問題ありません。このリンさんの衣でMP回復するのでただの作業でした。身体に疲労があるだけです。」
そう、ルキナに全部任せて俺は何もやってない。ルキナがフランメ連発してただただ蹂躙しただけだ。フロアも破壊しまくって見通しもよくなってしまった。そういえばルキナはフランメ系統の魔法しか使えないのだろうか?それ以外の魔法が使えるのかも聞いた事が無かったな。聞いてみよう。
「ねえルキナ。ルキナってフランメ系の魔法以外って使えるの?」
「使えます。フリーレン系、ドナー系、ラント系、ヴィント系と5属性全て上級まで使えます。」
属性って5つあんのか。火水風雷土みたいな感じなのだろうか。どれがどれなんだろう。俺も使えるんだろうか。てか上級まで使えるって凄いな。竜をクエストする的なやつだったらイオ◯ズンまで使えるって言ってんでしょ。すげーな。もうルキナだけで国落とし出来るよ。いや、まてよ。上級が一番上じゃないパターンかもしれん。そういう異世界転生モノはたくさんある。
「魔法って上級が一番凄いやつなの?」
「いいえ違います。上級の上に神聖級があります。他にも失われた魔法として古代級や、真偽は不明ですが創世級魔法というのもあるそうです。」
やっぱそのパターンか。ロストスペルは定番だから想定してたけど普通に上級超えるのがあるのは厄介だな。年季入った魔法使いは使える可能性高いもんな。万が一対人戦がある事を想定したらこっちもなんとかそれを習得しないとな。え?なんで対人戦考えてるのかだって?よーく考えてみろ。だいたいこういう異世界転生モノはモンスター以外にも利権争いとかに巻き込まれたり汚名着せられたりして対人戦が起こるもんなんだよ。ダテに異世界転生狙って自殺したりしてないんですよ?
「ふーん、そうなんだ。それならルキナもその神聖級?だっけ?それぐらいはちょちょいと覚えちゃうだろうね。」
「えっと…が、がんばります…!」
「リンちゃん…それはルキナちゃんにプレッシャーですよ…」
「え?なんで?」
「神聖級魔法を習得するには個人ランクで80相当の魔力が必要になります。いくら吸血鬼族のルキナちゃんでも70は必要です。習得するには相当の時間と研鑽が無いと使えませんよ。何より聖天魔道士にならないといけないですし。」
そうなのか。それならそんなに焦らなくても神聖級連発してくるような基地外とは鉢合わせにならないのか。
「そうなんだ。でも私はルキナは出来る子だからきっとすぐ出来ると思うよ。でもプレッシャーには感じないでね。何も焦ってないし。」
「……がんばります。リンさんの想いに応えます。」
やめろよキレカワ。ルキナに変なスイッチ入っただろ。ヤンデレってのはああいう言い方すると変なスイッチ入んだよ。
大丈夫だろうな。これでルキナがリスカとかしたりしたら嫌だぞ。別にヤンデレは嫌いではないけど自傷はやめてほしい。普通に可哀想だし辛い。適度に褒めて構ってあげれば大丈夫だろうか。キレカワ、頼むからルキナを追い詰めるような事はするなよ。大事にしてやってくれ。
ダンジョン口から外に出るがそこには兵士1人の姿しかない。今朝のおっさんはいないようだ。まだ帰ってないのか。早くしろよな。俺はメシとルキナを喰いたいんだから。
「無事だったか。今日もマップの更新をしたのか?」
「はい。7階層まで攻略し、8階層に降りて出て来ました。」
「凄いな…とても低ランクパーティーとは思えない…」
アナスタシアの報告におっさんがビビっている。ふん、それはそうだろう。ウチのルキナは凄いんだ。もうルキナに全部任せれば大丈夫だ。ルキナさんぱねえっす!
「ナーシセス隊はきっと凄いパーティーになるだろうな。俺はそう思う。侮った態度をしてしまい申し訳なかった。許してくれ。」
おっさん兵士Bが俺たちに深々と頭を下げる。なんだこのおっさん結構いい奴だな。人に素直に頭を下げられるなんて意外と出来ないもんだ。それも自分より歳下であったり女であったり、王国では蔑視する亜人であれば尚更。それなのにこのおっさんは素直に謝った。俺はおっさんを少し見直した。
「そ、そんな…!頭を上げて下さい…!」
「いや、これは俺の信念である。間違いを犯したのなら謝る。それが貴族としての誇り。」
おっさん貴族なんか。てっきりモブ平民だと思ってた。すまんなおっさん。
「もう大丈夫ですから…!!なんとも思ってませんからっ…!!」
アナスタシアがおっさんを説得してどうにか頭を上げさせた。だがそれを俺とルキナは感情のこもってない目で見ていた。え?さっき見直したんじゃないのかって?だって話長いんだもん。俺は面倒臭いの嫌いなんだよ。ルキナはアレじゃん?別に男なんてどうでもいいと思ってんじゃない?
「ふう……あれっ…?もう1人の方はまだ戻られてないんですか?」
「ああ、それについても詫びなければならん。ギンコの奴がまだなんだ。一刻前には戻るかと思っていたのだが。」
「まさか何かあったんでしょうか…?」
「いや、それは無いと思うが。ギンコはあれでも個人ランク40の猛者。野盗やモンスターに後れをとるとは思わん。」
ギンコ強えな。
「大方少し街で羽目を外して遊んで…噂をすれば帰って来たようだな。」
ギンコが馬に跨り駆けてくるのが視界に入った。こうしてみると貴族のおっさんに見えてくる。あら不思議。きっとギンコは男爵だな。ギリ貴族って感じだろう。
「無事で良かったですね!…あれ?なんだか少し様子がおかしくありませんか?」
アナスタシアがそう言うのでギンコの顔に注目してみる。確かになんか変だな。険しい顔っていうか焦ってるような感じだ。なんかあったのか?モンスターにでも追われてる?それはないか。モンスターいるならアナスタシアのセンサーに反応するはずだ。ならなんだ?ステステ草が売り切れてたのか?それは困るな。もしもそうならギンコにもう一軒行ってもらわないと。
そう思っているとギンコが俺たちの所へたどり着き、勢いよく馬から降りる。
「どうしたギンコ?そんなに血相を変えて。」
「それどころではない!!!」
兵士Bのおっさんが軽い感じでギンコに話しかけるとギンコが兵士Bのおっさんを怒鳴り散らすように一喝する。その光景に俺たちは少し戸惑った。だがすぐにギンコが血相を変えている理由が判明する。
「ブルーメが帝国に占拠された。」
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