Chapter 32 装備の効果が無い

「わわわわわ…!?」



アナスタシアが凄まじい爆風に驚いている。紳士な俺はアナスタシアの前に颯爽と立ち壁になる。俺にはそよ風にしか感じないのでアナスタシアをしっかり守ってやらんとな。

それにしても…まあ…凄まじいわな。爆弾かよって威力じゃん。俺のフランメなんか軽く超えられちゃったよ。何アレ。通路変形しちゃってんじゃん。ダンジョンぶっ壊れちまってんじゃん。怒り狂ったボスがここまで出張ってくんじゃね?



「大丈夫、アナスタシア?」


「あ、ありがとうございますっ…!!リンちゃんが盾になってくれているんで大丈夫ですっ…!!それにしても…ルキナちゃん凄いですね…」


「そうだね。私のフランメなんか塵芥だね。」


「リンちゃんのフランメもおかしいんですからね?」



魔法の威力が収まったのか静まり出す。もうオークの肉片すら残っていない。あるのはぶっ壊れた壁やら何やらの残骸とえぐられた通路と天井だけだ。コレ大丈夫?マジでボスがここまで来たらどうしよう。ダンジョン攻略はするつもりだけど今日はボスを倒そうとは思ってない。今日の目的はルキナの力を見る為だし。そもそも3人じゃ多分ボスとか無理じゃね?

いやまてよ?ルキナのこの魔力だろ?イケんじゃね?こんな強い魔法使える奴なんていないんじゃね?ボスが出張って来たら一勝負しちゃう?



「す…すごい…」



ルキナも自分で出した魔法のあまりの威力に度肝をぬかれているようだ。



「おつかれルキナ。凄いじゃん。私の威力なんか軽く超えられちゃったね。流石は本職の大魔導士。」


「い、いえ…!!これは装備の力ですから…!!」


「私だってそれは同じでしょ?寧ろ装備なくてアレだけの魔力あるんだから流石はルキナだね。」


「ありがとうございます。」



嬉しそうな顔してやがる。普通に可愛いな。ルキナは幸せにしてやりてえ。この子不幸すぎるもんな。大丈夫、俺がちゃんと幸せにしてやっから。



「神々の衣はルキナに任せるね。」


「ええっ!?いや、そんな…!?こんな国宝級装備を頂く訳には…!?」


「いいよ。別に他人にあげる訳じゃないんだし。」


「……他人じゃない。うん、そうだよね。もう私とリンさんは”そういう関係”なんだし。」



お前それワザとやってんの?やめろよマジで。ハーレム作れなかったらどうすんの?ジュノーとアナスタシアetcを嫁にするって言ったらルキナにマジ殺されんじゃねーの?



「わかりました。この神々の衣はリンさんの為になるよう私が使用します。」


「うん、任せたよ。」



このヤンデレヴァンパイアガール絶対なんか黒い事考えてんだろ。刺されないように腹にジャンプ入れとかないとな。あ、こっちにジャンプ無いや。漫画雑誌とかあるんだろうか。



「アナスタシアにはまだ装備用意してなくてごめんね。次はなんとかするからさ。」


「そんなのいいですよ…!私はこの服とかリンちゃんに買ってもらったんですから…!それに手持ちの装備があります。」



あまり興味がないのでスルーして来たがアナスタシアは杖を持っている。それはEランクの装備らしいが特殊効果は無い。ただ僧侶は杖が無いと魔法を使えないのだそうだ。それだけ聞くと杖になんらかの特殊効果があるように感じてしまうのだが違うのだろうか。まあ考えるのも面倒だからどうでもいいか。



「そうは言っても装備は充実させないとだもんね。ダンジョン探索で使えそうなの見つけたらアナスタシアに譲るね。」


「リンちゃん…ありがとっ!!」



良いシーンに見えるけどさ、ヤンデレヴァンパイアガールが凄い目で見てるんだけど。お前ホントなんとかしろよ。お前の責任だからな。



「ていうかさ、さっきからオーク倒してるのに何にもドロップしなくない?」



今の所稼ぎゼロだからな。何の為にダンジョン来てるのかわかったもんじゃない。もう手持ちが少ないんだから稼がないとならんのに。金貨数枚レベルのレアアイテム手に入らないかな。



「オークは倒すとオークの心臓というアイテムを落としますがドロップ確率が極めて低いって有名なんです。」



クソモンスターじゃねえか。女が戦うメリット皆無じゃね?心臓なんて無理矢理剥ぎ取ってやればいいんじゃないの?だめなの?



「それってどれぐらいの価値あるの?」


「かなり希少なので銅貨30枚は下らないかなぁ。」



何それ凄くない?オーク周回で成金ルートいけんじゃね?



「それは凄いね。だいたいどれぐらいの確率かわかる?」


「30体に1つぐらいって噂ですよ。」



結構割良いんじゃない?ここでオーク周回するか。レベル上げと金策にうってつけじゃん。



「ふーん、結構良いね。機会があったら狩りでもやってみようか。今は先を急ぐからやらないけど。」



お前さ、俺の意見聞かないよね?ワザと?反抗期?少しは共存しようとか思わないわけ?



「ルキナの実力も確認出来たしガンガン先に進もうか。あ、神々の衣外した私の魔力も確認したいかな。」


「私の例から見てもリンさんの魔力は人族の中でも相当高いですよ。大魔導士を超えてると思います。」



ほう。レベルがまだ低いって事を考えると初期ステも随分高めって事だな。



「リンちゃん。右から多分オークが5体来ます。」


「好都合だね。今度は私が先制やるから撃ち漏らした奴はルキナお願い。」


「わかりました。」



オークを待つ事なくアナスタシアが行った先をグングン進むとオーク5体とこんにちはだ。例のごとく醜悪なツラでこっちを見てニヤけてやがる。俺は何の容赦も無く右手を前に出し魔法を発動させる。



「フランメ。」



ドッゴーンっていう爆裂が起き、オーク5体が吹き飛んだ。ルキナ程ではないが通路にも損傷が出来ている。アレ?なんか威力変わってなくね?俺の気のせい?



「あれ?威力変わってなくない?勘違いかな?」


「い、いえ…?私もいつものリンちゃんと同じ気がします。本職のルキナちゃんから見てどうですか?」


「完全に同じです。先程と魔力量が変わってませんよ。」


「えっ?同じなの?神々の衣脱いだのに?」


「はい。現にリンさんのフランメはまた魔法陣破棄でしたし。」


「聞きそびれちゃったけど魔法陣破棄って凄いの?さっきのルキナも破棄してたよね?」


「魔法陣は魔力上昇させる為のブースター的な役割を果たします。当然魔法陣作成すれば威力は上がりますが詠唱に時間がかかるので隙が出来ます。でも魔力量が高ければ魔法陣破棄をして放っても相応の威力を出す事が出来るので先程のリンさんみたいにする事が出来るんです。」


「ふーん。でもなんで私の魔力変わってないんだろう。神魔の剣も魔力上昇(中)は付いてるけど大と中じゃ全然違うもんね。」


「……もしかしたらリンちゃんの加護かもしれませんね。」


「加護?」


「魔導剣士の加護に魔力上昇(大)があるのかもしれません。武具にある効果と加護が同じ場合は二重で得られたりする事はないんです。同系統の効果についても同じです。より上位の効果が適用され、下位の効果については破棄されるんです。」


「なるほど。それならその線が濃厚だね。」



それが本当なら魔導剣士ってのは相当なぶっ壊れ性能だな。て事は剣技の方も相当な効果が加護としてあるって事か?あんま俺の力がバレない方がいいのかもしれないな。出自がわからない以上は何かで連行されたりしたら色々とマズイ事になりかねない。それこそクソメガネみたいに間者とか言われても潔白を証明する手立てが無いぞ。うーむ。



「ま、とりあえず先に進もうか。考えるのも面倒だし。」



少しは考えろよ。コイツほんとになんなの。



と、俺はキレカワフォームの俺にイラっとしながらもダンジョン探索は続くのである。

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