Chapter 27 初めての吸血

美味屋でルキナの歓迎会を終えた俺たちは安眠屋へと戻って来た。ルキナを迎え入れたのは良しとするが、基本的に当初の俺の予定は何も達成出来ていない。やった事といえばルキナに手マンしただけ。てかよく考えたら俺ってまだファーストキスも経験してないんだよなぁ。キスより胸揉んだり指入れたりのが先ってどうよ?なんか性欲の赴くままに行動してるよなぁ。少し自重するか。ガッつきすぎは嫌われるもんな。


さて、明日こそはこのクソッタレ王国の探索を、って思うがそれよりも俺の興味は別にある。ルキナだ。いったいどれほどの火力を秘めているのかを確認しなくてはならない。あくまでも俺の目標は男に戻る事だ。その為にまず必要なのはダンジョンの攻略。ダンジョン攻略者という手形をもらわなければ東方へと行けない。そしてそれを成し遂げる為にはパーティーメンバーを揃える事だ。

現段階でのパーティーメンバーは俺とアナスタシアとルキナ。俺は剣と魔法が使え、アナスタシアは回復補助、ルキナは魔法だ。パッと見た感じだとバランスは良い。だが肝心のルキナの力は未知数。吸血鬼だから強いって先入観が服を着てる感じだ。

ルキナの力の分析。それが俺のまずやるべき事。その為には明日はダンジョンに行くべきだ。モンスターと戦ってルキナの力を見極める。ま、仮にルキナが弱くてもクビにはしないけどな。ルキナの任務は戦闘だけじゃない。むしろ戦闘はサブ任務だ。ルキナのメイン任務は俺の夜伽。それで貢献すれば問題無し!!



「ふぅーっ!!今日もたくさん飲んじゃいましたっ!!」


「アナスタシアはいくら飲み放題でも少し自重した方がいいね。マスター迷惑そうな顔してたじゃん。」


「えっ?そ、そうでしたか…?」


「50杯も飲んでたらそりゃあ迷惑でしょ。」


「あはは…次からは少し抑えます…。遅くなっちゃいましたけどお風呂どうしますか?」


「私とルキナは夕飯食べる前に入ったから大丈夫かな。ルキナも平気でしょ?」


「はい!私は大丈夫です!」


「なら私だけ入っちゃいますね。結構汗かいたから気持ち悪くて。」


「わかった。のんびりはいってきなよ。」


「わかりましたっ!先に休んでて下さいっ!」



アナスタシアは替えの下着と寝間着を持ってバスルームへと小走りで入って行く。それを見届けて俺は歯磨きをする為の準備を始める。この異世界転生で実は安堵した事は歯磨き文化がちゃんと根付いている事だ。俺は潔癖だし臭いに敏感だから口臭が臭いのだけは耐えられない。いくらアナスタシアやルキナが美人でも口が臭かったら絶対無理。流石の俺でも寝起きにアナスタシアの顔に近づこうとも思っていない。それぐらい口臭だけは耐えられないのだ。



「さてと。もう食べ物食べたりするわけじゃないから歯磨きしよっか。」


「はい。」


「ルキナ、自分で磨ける?」



なんてったって姫だからな。もしかしたら侍女に磨いてもらってたかもしれん。歯はいい加減に磨くと病気になるからな。病気になれば口臭がキツくなる。それは勘弁だ。世の中には美少女が臭いと逆に興奮するという変態はいるが俺は本当に無理だ。もしルキナが自分で磨けなければ俺がしっかり磨こう。臭いのは御免だ。



「大丈夫です。歯磨きは自分でやっておりました。」


「そっか。それじゃ磨きに行こう。洗面所行くよ。」



俺はルキナを連れて洗面所へと行く。バスルームとは別の部屋に洗面所とトイレはあるのでアナスタシアに気づかれる事はない。別に覗きに行こうとしていたわけじゃないぞ?大体からしてアナスタシアの裸なんか見てるからな。わざわざ覗く必要などない。見たければ堂々と風呂に行けばいいだけだ。


2人で鏡の前に並んで歯を磨く。ボーっと鏡に映る自分を見ながら磨いていると視線を感じる。鏡からだ。俺は視線の先を見ると鏡の中のルキナと目があった。このヴァンパイアガールずっと俺の事見てたのか?依存し過ぎな気がするぞ。好意を向けられるのは嫌じゃないけど。



「どほひたの?」



俺が鏡の中のルキナに声をかけるとルキナはフルフルと首を横に振った。でも視線がずっと俺にロックオンだ。何だ?何を求めてるんだ?自慢じゃないが俺には女の気持ちなんてさっぱりわからん。とりあえず口の中にある歯磨き粉を洗い流し、うがいをしてから直接聞こう。


ルキナと2人でうがいをして口の中を綺麗にする。洗いたてのタオルで口を拭き、寝室へ戻った時、俺はルキナに先程の視線の意味を尋ねる。



「ルキナ。どうしたの?何かあった?」


「えっ…いや…なんでもありません…」



ルキナは俯いて俺から視線を逸らす。まさか今更パーティーに入りたくないとか言い出すんじゃないだろうなこのヴァンパイアガール。あり得るかもしれん。メシ食って腹満たされたらこんな同性に手を出してくるような変態がいる所にいたくなくなったんじゃないのか。それにもう奴隷じゃなくなったんだから自由になりたいと思うのが当たり前。でも一応は俺に恩があるから言い出せないでいる感じか?マジかよ。金貨2枚払って前戯しか出来ないの?俺なんて何もしてもらってないのに?クッソ頭きた。女の身体のままでいいから今からルキナに奉仕させよう。もうめちゃくちゃやってやる。元は取らせてもらう。ついでにアナスタシアが風呂から出て来たらアナスタシアもヤッてやる。めちゃくちゃにしてやる。

だがなんなんだろう。少しだけルキナの顔が赤い。さっき風呂で可愛がってやった時みたいな恥ずかしいのとはまた少し違うような感じだ。



「ハッキリ言いなよ。怒ったりしないからさ。」



そうだ。ハッキリ言え。言ってみろ。めちゃくちゃに犯してやるから。



「えっと…その…」



また指弄りしてやがる。そうやってやれば許してもらえると思ってんのか?俺はそんな甘い男じゃない。お前に使った金貨2枚はその身体で絶対払わせてやる。ここから消えるつもりならタダで済むと思うなよ。



「言ってみな。」


「……引いたりしませんか?」



ああん?引く?引くって何が?金だけ使わせて逃げるクソ女に引かないかって事?イラっとはするけど引きはしないな。今からガンガン責めてやるから。



「引かないよ。だから言ってみな。」


「……わかりました。リンさん、私、吸血鬼族なんです。」


「そうだね。」

そりゃそうだろ。何を今更。


「それで…吸血鬼族には他種族とは違って必要な事があるんです。」


「必要な事って?」


「……最低でも週に一度は血を吸わないとダメなんです。」


「あー、なるほど。」

ほーん、そらそーだわな。吸血鬼だもんな。


「血を飲まないと力が湧かないし、魔力もどんどん弱くなって魔法も使えなくなるんです…」


「それで?」


「私が血を飲まなくなって半月は経っています…だから…その…禁断症状みたいなのが出て……今までは空腹と恐怖で禁断症状は起きなかったんですけど…お腹も満たされたし安心したら…その…」


「要は私の血が飲みたいって事でしょ?」


「……はい。」



なんだよお前ビビらせんなよ!!そんな事かよ!!てっきり抜けたいのかと思ったじゃねーか!!

まったくルキナはけしからんな。俺をからかってやがるんだな。男に戻ったら失神したって一晩中ヤリ倒してやるからな。



「そんな事なんでもないじゃん。ほら、飲みなよ。」


「えっ!?いいんですか…!?」


「だって飲みたいんでしょ?それなら別に断る理由もないじゃん。それとも血を吸われたら眷属になるとかデメリット的なのが発生する感じ?」


「い、いえ!!そういう事は何もありません…!!」


「ならいいじゃん。」


「でも…この尖った歯で噛まれるんですよ…?」



そう言いながらルキナは少し尖った八重歯を見せてくる。マジマジと見るのは初めてだが正直可愛い。アレ?でもさっきまで歯尖ってたっけ?



「アレ?さっきまでそんなに尖ってたっけ?」


「あ…ここの歯は自分で伸縮出来るんです。出ないと普段の食事とかで噛み合わせ悪くなって不便で。」



確かにー。絶対そうだよね。日本でアニメとか漫画見てる時から疑問に思ってたわそれ。



「ふーん。ま、なんでもいいから早く吸いなよ。」


「リンさん軽くないですか!?嫌じゃありません!?」


「別に?ルキナ以外なら嫌だけどルキナに吸われるんなら構わないよ。」


「……えっと、それじゃお願いしてもいいでしょうか?」


「どうぞ。どうすればいい?」


「少し首を右側に傾けて頂けると吸いやすいです。」


「こう?」


「ありがとうございます。大丈夫です。それじゃ…失礼します…」


「ん。」



ルキナの唇が俺の首を這う。同時に少しの痛みを感じ、何かくすぐったいような変な感覚が襲う。チラリとルキナの顔を見るが興奮しているのか顔を紅潮させて鼻息を荒くしながら口を動かしている様はなかなかにエロい。



「リンさんの…凄い…濃い…」



小声ではあはあしながらエロワードを発してやがるこのヴァンパイアガール。けしからんな本当に。アナスタシアといいルキナといい天性の男殺しの才があるようだ。


しばらく吸ってから最後に『ちゅうっ』というリップ音を残しルキナは俺から離れる。その顔は恍惚に浸っていた。



「リンさんの…凄かったです…」


「満足した?」


「はい…ありがとう…ございました…」


「で、どれぐらいの頻度で血を吸うの?」


「えっと……週に1回頂ければなんとか大丈夫です。」


「なんとかって。それは我慢すればって事でしょ。本当は毎日欲しいんじゃないの?いいよ。毎日吸いなよ。」


「い、いいんですか…!?嫌じゃありませんか…!?」


「別に?でも流石に人前ではやめてね。2人だけの時にね。」


「わ、わかりました…!!ありがとうございます、リンさん!!」



ルキナは凄い嬉しそうな顔をしている。てかリンさんって呼び方やめさせるか?なんか距離を感じるよな。アナスタシアも最初はリンさんだったのをやめさせてリンちゃんにした訳だし。でも2人ともリンちゃんだと被るよな。1人ぐらいリンさんでもいいか。ジュノーはどうせ呼び捨てだろうし。それならそのままでまあ構わないか。


そうこうしているとアナスタシアがバスルームから出て来る。血を吸われていたからかドライヤーの音も聞こえなかったな。



「お待たせしましたっ!!」


「お帰りアナスタシア。それじゃみんな揃ったし明日の事についての打ち合わせと今後について話そうか。」



アナスタシアもベッドへと乗り3人で輪になるような感じで向かい合う。部屋が3人になったけどベッドがかなりデカいヤツなので3人でも何とか大丈夫な広さなのだ。これ以上増えると部屋替えをしないといけないけど。そうなると流石に料金変わるだろうな。おっさんに色仕掛けでもしてなるべく値切らせようか。



「アナスタシア。ルキナがパーティーに入る為にはやっぱり冒険者申請しないといけないんだよね?」


「そうですね。勝手にダンジョンに入るのは良くないと思います。王国外のダンジョンに入るなら必要はありませんけど。」



とりあえずは王国内のダンジョンになるのかな。他国の領内にあるダンジョンだとまためんどくさい手続きしなきゃいけないだろうし。



「ルキナを登録しちゃって大丈夫かな?色々と問題発生したりしない?」



お尋ね者とかじゃないけどルキナは吸血鬼の姫だ。勝手に他国の領内を荒らしたりしたら面倒ごとに発展なんて事もあるかもしれない。



「うーん、問題無いと思いますよ?少なくとも王国側がわざわざ冒険者名簿を見たりなんかしません。見るとしたら何かしらの犯罪が明るみになった時だけだと思います。でも万が一を想定して偽名にした方がいいかも知れませんね。」


「偽名で登録しても大丈夫なの?」


「正直わからないと思いますよ。証明する手立てなんてありませんもん。」



なんだよ。わかってたらクソ真面目に個人情報晒すんじゃなかった。俺も偽名にすれば良かった。



「じゃあそうしとこうか。でも名前はそのままでいこう。咄嗟に呼ぶ時にボロ出るかもしれないし。名字だけにしよう。ルキナは何か希望はある?」


「希望…ですか…?」



ルキナは少し眉間にしわを寄せながら唸るように考えている。俺も名字だけは変えたかったな。渡辺なんてありきたりだもん。せっかくの異世界ならなんかカッコイイのが良かった。ルキナの本名のミドルネームみたいなやつも付けたかったし。



「考えるの面倒だったら私と同じ渡辺にしとく?嫌だったらーー」

「ーーそれにします!!私の名前はルキナ・ワタナベにします!!」



ルキナが食い気味に俺の名字を奪っていく。



「うん、じゃそれで決まりね。」


「……リンさんと同じ名字。名字をもらった。これはもう婚姻。」


「ぶつぶつ言ってるけどどうしたのルキナ?」



どうしたのじゃねえよ。そのヴァンパイアガールの言葉聞こえてただろ。ヤンデレ化してんじゃねえか。お前が余計な事言うからだよ。なんかルキナ面倒臭いな。でも俺に従順だし可愛いしな。ヤンデレのトコだけは目を瞑るしかないか。



「後はルキナの装備を揃えないとね。何の装備も無けりゃダンジョンどころじゃないからね。アナスタシアは装備を揃えられる店知ってる?武具屋みたいなの。」


「わかりますよ。ただピンからキリまでになりますけどリンちゃんはちゃんとした物を揃えますよね?」


「そうだね。適当な装備をルキナに身につけさせられないから。」



万が一にもルキナが死んでしまったなんて事になったら堪ったもんじゃない。もう立派な俺の第三夫人なんだから。



「そんな…!!私のは間に合わせで大丈夫ですから…!!ただでさえリンさんは私を買うのに金貨2枚も使っちゃったんですし…」


「そんな事はどうでもいいんだよ。それにルキナに間に合わせの装備なんかさせられないよ。もしそれで死んじゃったらどうするの?私はそういうの無理だから。」


「リンさん…。ありがとうございます…」


「うん。ところでルキナの武器ってなんなの?魔法使いならやっぱり杖とか?」



普通のイメージなら杖だよな。でもヴァンパイアが杖使ってるイメージなんて無いぞ。むしろ素手で戦ってるイメージしか無い。



「私たちは杖は使いません。どちらかといえば剣を使いますね。」


「へぇ、なんかちょっと以外。魔法使いが剣使うイメージなかったよ。」


「多くの種族はそうですね。でも私たち吸血鬼は身体能力が高いので魔法使い最大の弱点である接近戦においての弱さを補う為に剣を使います。」



なるほど。ある意味擬似魔導剣士みたいなもんか。剣を使ったらどれぐらいの強さがあるんだろう。



「剣使ったらルキナってどれぐらい強いの?」


「どれぐらい…そうですね…少なくとも人族の騎士と一対一なら負けないぐらいかと。」



それって強いんじゃね?騎士って剣士の上級職だよね?そんなのに本職じゃ無くてタイマンなら勝てるってヤバくね?本職である魔法の威力はどうなるんだろう。ヴァンパイアヤバいな。



「強いじゃん。流石ルキナだね。」


「そ、そうでしょうか…えへへ…」



褒められて喜んでる姿は可愛い。やっぱ女の子は笑顔が一番だよな。この2人の笑顔は俺が必ず守ろう。



「じゃ明日の予定はまずはルキナの冒険者登録と装備整えね。それが終わったらダンジョン行くよ。いいね?」


「はいっ!」

「はい!」




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