Chapter 21 初めての奴隷

朝になり眼が覚める。俺の隣には下着だけの姿のアナスタシア。下着の色は俺の好みの黒。日課とばかりに俺は何の脈絡もなくアナスタシアの胸に手を伸ばし、その胸を揉みしだく。うん、最高の感触。肉棒があればカチンカチンになっている事間違いなし。


だが今日はそんな事ばかりやってはおれん。今日はやる事がたんまりとあるのだ。

街の探索とメンバー探し。これをやらないと絶対ダメ。

何よりこのヴィルトシュヴァイン王国は胡散臭い。冷静に考えたら俺ってこの街の探索してないんだよね。これだけの城下町なのに一部地区しか知らない。もっと全体を見ないとダメだ。きっと何かわかる事があるはず。今日はダンジョンはお休みにして探索とスカウトに充てよう。

そうと決まればアナスタシアをさっさと起こし、朝メシ食って出発だ。おら、さっさと起きろ。主人より起きるのが遅いとは何事だ。



「アナスタシア、起きて、朝だよ。」



俺の本心とは裏腹に、このイケイケ美少女の台詞はイケメンみたいに変換される。女のイケメンに値する名称ってなんだ?キレカワ?実は謎だよね。



「むー…おはよう…リン…ちゃん…」


「二日酔いしてる?お水持って来ようか?」


「二日酔いにはなってないです…でもお水もらってもいいですか…?」



お前、主人を動かすとは何事だ。俺は亭主関白なんだぞ。この俺を動かすなぞ言語道断だ。今すぐお前の処女膜をブチ破ってヒィヒィ言わせてやる。



「待ってて。すぐ持って来るから。」



おい!!何甘やかしてんだ!!主人としての威厳を持て!!そうやって甘やかすからつけあがるんだ。俺は厳しいんだからな。

と、心の中で文句を言う俺だが身体は冷蔵庫へとナチュラルに進み、流れるような動きでミネラルウォーターのペットボトルを取って、開けてで戻って来る。てか初めて安眠屋の冷蔵庫開けた時から思ったんだけどこっちの世界でもペットボトルあんだよな。この中だけはどう見てもビジネスホテルだよ。



「はい。」


「ありがと…リンちゃん…」



俺から水のペットボトルをもらってゴクゴクと飲み始めるアナスタシア。何で俺がこんな侍女みたいな真似をしなきゃならないんだ。覚えてろよアナスタシア。



「ぷはっ…生き返るー…」


「それじゃ着替えたら朝ごはん食べに行こっか。」


「はぁーい…」




********************



俺たちは着替えて美味屋へとやって来た。今日の俺の朝メシは『ヒタヒタパオン』と『ジュクジュクエグエグ』に『ギュルギュルオレンジ』だ。『ヒタヒタパオン』はフレンチトーストっぽいやつで、『ジュクジュクエグエグ』は半熟たまごのオムレツみたいな感じだ。

アナスタシアは『カチリーナニギニギ』と『プクプクンナー』に『ギュルギュルグレープ』だ。『カチリーナニギニギ』は焼きおにぎりっぽいやつで、『プクプクンナー』はどうみてもウインナーだ。



「リンちゃん、今日はどうするんですか?」



アナスタシアがウインナーを口に頬張り今日の予定を俺に尋ねてくる。アナスタシアは朝からそんな卑猥なモノを頼んで、欲しがりなんだなお前は。だが俺のはそんなウインナーサイズでは無いぞ。フランクフルトだからな。覚悟しておけよ。



「悪いんだけど今日はダンジョン行くの休みにしていいかな?」



そう、今日はダンジョンには行かない。この街の探索をせねばならん。この、実は闇に塗れた邪悪な国の実情を探らねばならん。



「私は大丈夫ですけど…?リンちゃんに昨日あんなにお金もらっちゃいましたし。」



俺のパーティーは報酬は山分けだから銀貨もきっちり半分に分けた。最初アナスタシアは拒否っていたが俺が強引に受け取らせた。昨日一日でこれだけ稼いだんだから文句は無いはずだ。いや、ちょっと待てよ。確かアナスタシアは貧乏生活でもいいなら一月に銅貨2枚でいいと言っていた。それなら昨日の稼ぎだけで十年くらいいけるって事だよな。え、アナスタシアがパーティーから外れるって言ったらどうしよう。アナスタシアが稼ぐ目的は知らんけどこれだけ金持ってれば当面はダラダラしたくなるよね?え、抜けさせないよ?俺のは抜かせるけど。パーティーから抜けるなんて言ったら絶対襲ってやる。



「……あのさ、パーティーから抜けるとか言わないよね?」


「えっ?私がですか?」


「うん。いや、だって昨日かなり儲けたじゃん?それなら抜けるのかなって。」


「私は抜けませんよ?リンちゃんと一緒にいるの楽しいですし。それにお金貯めたいですから。」


「ふーん、そうなんだ。ほら、もっと食べなよ。軽くお酒も飲んだら?一杯ぐらいなら栄養ドリンクみたいなものだよ。すいません、マスター、コルーナオレンジ一つお願いします。」


「はいよ。」


「ほら、飲みなよアナスタシア。」


「えっ?あ、ありがとうございます。」



全くアナスタシアめ。俺を驚かせやがって。本当にけしからんな。アナスタシアにはやはり身体で罰を与えてやらねばならんようだ。



「ううっ…!!美味しいっ…!!朝から飲むお酒は特別に美味しいっ…!!あ、それでどうして今日はダンジョンに行くのお休みにするんですか?」


「ほら、私ってこの国の事全然知らないでしょ?だから今日はこの街の探索をして内情を知ろうと思って。」


「そうだったんですね。確かにリンちゃんはもっと王国を知るべきだと思います。では私が案内しますね。」


「ありがとう。それとさ、パーティーメンバーを増やそうと思ってるんだけどいいかな?」


「それはダンジョンクリアを目指す為って事ですよね?」



流石はアナスタシアだな。賢いぞ。主人の考えている事をいち早く察知する。それは妻に求められる必須要素だ。空気を読まんとな。



「うん。昨日ジュノーが言った言葉がきっかけかな。あのジュノーですらパーティーを組まないとクリア出来ない。ならこのまま二人だけじゃクリアするのはきっと不可能。最低でも二人欲しいかな。当然女の人限定で近接戦闘出来る人と遠距離からやれる人が。もちろんだけどアナスタシアが嫌な人はいれたりしないよ。私はアナスタシアが大切だからアナスタシアが嫌いな人は私も嫌い。だから、増やしてもいいかな?」



そりゃ当然だ。アナスタシアと仲良くやれない奴は俺のハーレムにはいらん。例え顔が良くても輪を乱す奴はいらん。そういう奴は3Pとか4Pをする時にきっと足並みを揃えられなくて俺の気持ち良さが半減するだろうからな。



「リンちゃん……。ありがとう。私本当に幸せ。リンちゃんにこんなに大切にしてもらえるんだもん。新しいメンバーいれましょう!」



ダメって言ってもいれるけどな。俺のハーレム形成は誰にも止める事は出来ない。例え神でもだ。



「アナスタシアならきっとそう言ってくれると思ってた。よし、それじゃ今日は探索とスカウトに費やそうか。」





********************




朝メシが終わった俺たちは街の探索へと繰り出す。ギルドを越えた先へとやって来るがこのあたりは完全に初めてだ。ちょうど城の真横ら辺に差し掛かっている。ギルドとか美味屋は城の正面に位置している。なんだか心なしか辺りが暗くなっているような感じがするが気のせいだろうか。それにこの辺りは居住区なのだろうか?特に店があるわけでもない。割と雰囲気の良さそうな家が並んでいるが貴族の家っぽくないな。



「ねえ、アナスタシア。この辺りは居住区なの?」


「そうですね。だいたい中流階級の方が住んでいる所になります。王城を中心に時計盤で例えると、9時であるこの辺りは中流階級居住区です。対して3時から5時の辺りは貴族居住区になります。2時の辺りも中流階級居住区になり、10時と1時は所謂貧民街となります。私たちがいつも過ごしているのは6時から8時の区画になりますね。」


「なるほど。お店とかこの辺りにないの?」


「もう少し歩けば中流階級が利用する宿や飲食店があります。各区画にちゃんとありますよ。」


「ふーん。あれ?そういえば12時の区画は言ってなかったよね?そこには何があるの?」


「……そこはーー」




アナスタシアが言いかけた時、ちょうど真横なのだろうか、大きな門がある。その門が開き、馬を引いた一団が王国内へと入って来る。武装をしている輩が先頭で入って来るが騎士という感じではない。傭兵って感じだ。その後に続くのは商人っぽい連中だ。商いでもしに来たのだろうか?

そう思って眺めていると、馬が檻を引いているのが目に入った。なんだあれはと思い、前に並んで眺めているおっさんたちの隙間から檻の中を見てみる。するとそこには、凄い美少女がいた。紅く染まった長い髪、瞳の色も同じ深紅に染まっている。気品のようなものが溢れているのは感じるし、背筋も伸び、堂々としているように見えるが顔は真っ青だ。周りに気づかれぬように気丈にしてはいるが恐怖に支配されているのが俺にはわかる。なんなんだこの美少女は。



「アナスタシア、あれって何?檻だよね?なんであの子は檻にいれられてるの?」



俺はどこかへ連れて行かれる紅い髪の美少女から目を逸らさずアナスタシアに質問する。



「……あの人は奴隷です。」


「…は?奴隷?」



頭では理解していた。日本にいる時にあんな描写の漫画なんかいくらでも目にしていたんだ。奴隷がどこかに売られて行くシーンと酷似しているのなんかわかっていた。だが現実にそれを目の当たりにして信じる事が出来なかったし、信じたくなかった。何よりここは自由の国だって謳っていて流石に奴隷なんかは無いって思いたかった。



「どういう事?この国じゃ奴隷なんて認めてるの?そもそも前に美味屋のマスターがここにはそう言うのないけど帝国には奴隷がいるみたいに言ってたくせに。」



流石にこのキレカワフォームの俺でも口調荒くなってんな。そりゃあそうだ。憤慨しまくってんぜマジで。



「……マスターが言ってたのは『人族』の奴隷の話をしていたんです。」


「…どう言う意味?」


「ヴィルトシュヴァイン王国でも奴隷はいます。ただし『亜人』だけです。亜人は人間では無いから。だから売り買いをされるんです。今の一団が行く場所は12時の区画にある娼館や奴隷屋だと思います。恐らく奴隷屋でしょう。」


「ふざけてる。亜人だって人間でしょ。みんな生きてるんだから。」


「リンちゃんみたいに思ってくれる人は少ないんですよ…。でもそれは仕方がないんです。」



マジで腹立つ。人族がそんなに偉いのかよ。マジで気に入らねえ。この王国はやっぱ腐ってんじゃねーか。



「納得はしないけどさ、話が進まなくなるから我慢するけど、さっきの子って亜人なの?人族にしか見えなかったんだけど。」


「恐らく『吸血鬼族』だと思います。あの真っ赤な髪色と深紅の瞳は吸血鬼族の特徴です。」


「ヴァンパイアがいるの?」


「クラスを知ってるんですか?ヴァンパイアというのは吸血鬼族のクラスですよね?」


「東方では吸血鬼をヴァンパイアとも呼んでるだけだからクラスってのはちょっとわからないけど。」


「えっと、クラスというのは各種族における形態変化を指しています。血統や才能によってクラスチェンジする事が出来たりするそうです。さっきの方はヴァンパイアプリンセスじゃないでしょうか?あそこまで瞳が紅い吸血鬼はきっと王族です。少し前に吸血鬼の国が帝国に落とされたと噂になっていましたから。」



吸血鬼の姫様かよ。まあ、あれだけの美少女ならわからなくもない。そんで戦利品として手に入れた姫様をさっきの奴隷商人が買い上げてここに連れて来たってわけか。



「あの子ってどうなっちゃうわけ?」


「……女奴隷の末路は決まっています。性奴隷として扱われるのは当然として、ストレス発散の為のサンドバッグか、吸血鬼に対しての人体実験や拷問ですね。」



腹クソ悪いな。わかっちゃいたがイラついてしゃーねえんだけど。



「それか戦闘に投入する戦奴隷ですね。」


「えっ?あの子戦闘なんて出来るの?」



ちょっと意外なアナスタシアの答えに俺は反射的にツッコんでしまう。流石のキレカワフォームもツッコんでしまった。



「吸血鬼族は魔力が非常に高いのが有名です。つまりは強力な魔法が使えます。当然ダンジョン攻略やクエスト、戦争に重宝されます。」



あー、ヴァンパイアって身体能力の鬼みたいな設定多いもんな。漫画とかでも最強クラスに扱われる事が多いもんな。



「それに本当かどうかわかりませんが首を斬られても死なないらしいです。」


「そうなの?」


「迷信かも知れませんけど有名な話です。凄まじい程の回復再生が出来るのは確かみたいですよ。」



そりゃ凄いな。首を斬られても死なないってのは嘘だろうけど超再生は普通に凄い。何より強い魔法が使えるんなら遠距離戦は任せられるじゃん。どうかな、俺のハーレムに。ルックスは問題全くないぞ。超美少女だもん。後はアナスタシアの反対が無ければいいんじゃないでしょうかね。



「ねえ、アナスタシア。あの子パーティーに加えるのってダメかな?」



俺は直球で勝負してみた。男らしくハッキリと言う方がいいからな。どうせアナスタシアは反対しないだろうし。



「うーん…どうでしょう…」



うわ、却下か。どうしたアナスタシア。同じ亜人なら助けてやろうぜ。それともアナスタシアは可愛い子を仲間に入れるのダメな子なのか?嫉妬か?



「ダメ?」


「吸血鬼族は気性が荒いみたいなのでパーティーに入ってくれるか怪しいと思います…。リンちゃんの性格上、奴隷として無理矢理いう事を聞かせる事はしないですよね?」


「そんな事しないよ。人の意思を支配したいなんて考えないから。」



いや、俺は支配したいんだけど。アナスタシアやジュノーやさっきのヴァンパイアガールを無理矢理言う事聞かせたいんだけど。

てか気性が荒いのか。荒いの…か…?ヴァンパイアガールが…?めっちゃ気弱な感じしたんだけど。とりあえず話してみないとじゃないか?対話をしてお互いの事がわかるわけだし。拒否られたら諦めればいい。気性が荒い女は俺のハーレムにはいらない。反抗的なのは面倒だからな。屈服系はそそるけど限度はあるし。ダメなら解放して自由にさせればいいだけだ。



「とりあえず話をしてからって事でもいいかな?言ったけどアナスタシアが嫌なら絶対パーティーには入れないから。」


「私は全然構いませんよ。噂で決めつけるのは良くないですから。それに性格は人それぞれです。」



流石は俺の第二夫人。立派な考えだぞ。



「じゃあ言い方悪いけどとりあえずさっきの子を買って来ようかな。誰かに取られたらマズイし。」


「奴隷の購入はオークション制なのですぐには買えないと思います。」


「そうなんだ。て事は今日はダメって事?」


「いえ、今日あの方が連れて来られる事は事前に伝わっているはずです。ですので午後一のオークションの目玉になるんだと思います。」



それならタイミング良かったな。ここであのヴァンパイアガールを見なければ絶対接点は作れなかったわけだもんな。運と縁はありそうだ。



「それじゃお昼食べたらオークションに行こうか。」


「あ…私は亜人なので奴隷屋には入れないんです…。王国では亜人が奴隷を持つ事は許されませんので。」


「んー、そっか。それじゃアナスタシアはそのまま美味屋で待っててよ。私が競り落として来るから。」


「はい…!あ、リンちゃん。あの方はきっとかなり高額になると思うので無理はしないで下さい。」



え、マジでか。買えないのは困る。第三夫人としてのポテンシャルは持っている以上、説得だけはしてみたい。だが金が無ければ買えないんだもんな。どうしよう。



「奴隷の相場ってどれくらい?」


「普通の女奴隷なら銅貨1枚ぐらいです。見た目や能力が良ければ銀貨に手が届くかも知れません。あの方のような吸血鬼族で可愛くて王族であれば銀貨50枚は下らないはずです。」


「やっす。」

やっす。って初めて同じセリフでシンクロしたな。



「安くはないですよ…リンちゃんがお金持ちすぎるんです。それかもしかしたら金貨が出る可能性も否定できませんよ…?」


「金貨5枚は覚悟してから全然構わないよ。」


「あはは…」


「それじゃ話は纏まったね。一度安眠屋に戻って準備して、お昼食べたら連れて来るよ。」


「わかりました…!!」



早くも見つけた第三夫人候補のヴァンパイアガール。果たして俺の採用基準に達する事が出来るのだろうか。



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