Chapter 7 貧富の差
昼メシを食べた俺たちはアナスタシアの着替えやら一式を揃える為に服屋に来た。俺の下着も必要だからついでに買っておこう。
「あの…リンさん…本当に買って頂いてもいいんでしょうか…?」
アナスタシアが相変わらずの申し訳なさそうな表情で俺の事を見ている。そんな事気にしなくていいんだよ。どうせその分の回収はするんだから。
「もちろん。私たちは仲間じゃん。だから装備を揃えるのは当たり前でしょ?好きなの何着か選んでよ。あ、下着もね。同じの履いてたら気持ち悪いでしょ。」
「な、何着もですか!?そんな贅沢は出来ません!?下着も大丈夫です…!!」
大丈夫じゃないだろ。それに下着は俺の好みを履いてもらう。俺の第二夫人なら主人の好みに合わせてもらわんとな。だから下着は複数絶対買う。これは命令だ。
「いいから。遠慮なんかしなくていいんだって。」
「わかりました。リンさんは優しすぎます。どうやってこのご恩を返せばいいんでしょう。」
大丈夫だよ。夜にはたっぷり楽しませてもらうから。
「そんな事いいって。先ずは下着から選ぼうか。私も買いたいって思ってたし丁度いいかな。」
私たちは店内を見渡し、下着売場へと足を運ぶ。ざっと目を通すが種類が豊富という訳ではない。カラーバリエーションも豊富ではない。何だかガッカリだな。アナスタシアに色々着けて毎晩楽しもうと思ったのに。この世界の連中は下着に対して欲情しないのか?俺は下着に欲情しまくるタイプだからこれは困るな。いくらアナスタシアでもベージュのパンツなんか履いてたら息子が萎えて立つものも立たなくなってしまう。これは由々しき問題だ。男に戻るまでに何とかしないといけないな。
「リンさん、こちらでもよろしいでしょうか?」
俺が将来について真剣に考えている間にアナスタシアは下着のチョイスを終えていた。持ってきた物を見てみると、中学生女子が装備するスポーツブラっぽいやつだった。カラーら白と紺とベージュだ。ベージュがありやがるよ。
「却下。」
「え?」
俺に却下と言われたアナスタシアは猫耳を垂れさせながら不安げな目で俺を見つめる。可愛い。だがそんな事してもダメなものはダメだ。俺はそんなガキ臭いものに興味はない。せめて少し色っぽい形で黒とか赤とか緑みたいなやつじゃないとダメだ。
「もっとアナスタシアに似合うのじゃないとダメだよ。」
「に、似合うのですか…?すみません…私は白しか着けた事がなかったので紺色と肌色に冒険してみたのですがダメだったようですね…」
「私が選んであげるよ。」
「あ、ありがとうございます!」
「ちょっと待ってて。」
全くアナスタシアは何にもわかってないな。これからは俺の趣味をしっかりと教え込んで俺の色に染め上げてやらないといけないな。
10分ぐらいしてから俺は手にした下着を持ってアナスタシアの元へと戻る。好みとは少し違うがこのラインナップの中では及第点だろう。今晩は少し暴れちゃうか。
「はい、持ってきたよ。」
「ありがーー」
俺から黒、赤、緑の下着を受け取ろうとしたアナスタシアの手が止まる。俺のセンスに驚きを隠せないようだな。この異世界ではどうやら俺のセンスは革命的なのかもしれないな。
「ーー却下でお願いします。」
「えっ?」
********************
買い物が終わり俺たちは一先ず宿へと向かう事にした。荷物が多いから一旦置いて行かないと正直面倒だ。それに汚れたままではアナスタシアが可哀想だからな。決してさっさと風呂に入れてさっき買ったブラとパンツを装着させたいからではないぞ。何とかアナスタシアを説得して黒のだけは買った来れたんだ。今日は絶対黒の下着を装着させてベッドでハッスルさせてもらうぜ。
そんなこんなでエロい事を考えているとあっという間に安眠屋に辿り着く。
二人になると宿賃も変わったりするんだろうか。まぁ金はたくさんあるわけだから倍額取られてもさほど困るわけではない。問題なのは一部屋につき一人までとか言われた時だ。俺の楽しみでたるアナスタシアとの初夜を邪魔されたら堪ったもんじゃない。そん時は他の宿に行くしかないな。
俺は安眠屋の戸を開けるとオッさんが一生懸命モップ掛けをしている。最初に会った時のあのやる気の無さはどこに行ったんだか。
「あ、お帰りなさいリンさん!随分と早いお戻りですね。」
何だこのオッさん。いきなり距離を詰めてきやがったな。ファーストネームで呼ぶなんて馴れ馴れしいぞ。
「はい。あの、実はもう一人一緒に泊まりたい子を連れて来たんですけど大丈夫ですか?」
俺がそう言うと、オッさんが俺の後ろにいるアナスタシアに気づく。二人の目が合うと、アナスタシアがビクビクしながらオッさんに頭を下げる。
「一緒の部屋で泊まりたいんですけどいいですか?もちろん料金はお支払い致しますので。」
するとオッさんは驚いたような顔をして両手を突き出し左右に振って拒絶を示す。
「いえいえ!同じ部屋にお泊まりでしたら何人でも料金は同じです!」
「そうなんですか?」
「はい!ですのでお連れ様と一緒にお泊まりになられて結構です!」
それならラッキーだな。俺のいた世界では二人目からは料金が変わるからな。金の補給手段が確保出来てない以上は節約するに限る。
「ありがとうございます。では部屋に行かせてもらいますね。」
俺があざとくオッさんに微笑んでやるとオッさんは嬉しそうな顔をして俺たちに頭を下げた。チョロいな。この超絶美少女なら男を手玉に取る事など造作もない。いよいよとなったら男を騙して金を巻き上げるか。
俺たちは自室のある二階へと向かう。その間アナスタシアが俺の上着の裾を掴んでいるのが超可愛い。早くベッドに押し倒したい。我慢出来ない。
鍵でドアを開け、中へ入るとアナスタシアが
オドオドしたような声で俺に話しかけて来る。
「リ、リンさんが泊まっているのって安眠屋だったんですね!?」
「え?ダメだった?」
もしかしてこの宿屋って地元じゃ評判悪いのか?確かにまだ他の客を見た事がないぞ。客のプライバシーを盗聴してるとかじゃないだろうな。翌朝フロントで『昨夜はお楽しみでしたね。ギュフフフフ。』なんて言われちゃ堪ったもんじゃない。これはこの宿から撤退を考えないといかんのかもしれん。
「安眠屋はヴィルトシュヴァイン王国で一、二を争う高級ホテルなんです…!!普通の人じゃ宿賃を払う事なんてなかなか出来ません…!!」
あー、なるほど。冷静に考えてみればここの宿賃って高いよな。美味屋のディナーが銅貨2枚、安眠屋の宿賃が一泊銅貨10枚。中の設備を考えてみれば高級ホテルといってもおかしくは無い。
「リンさんはやっぱり貴族の方だったんですね…美味屋の常連さんみたいですし、御洒落屋の服も買ってくれましたし…」
さっきの服屋って御洒落屋って言うのか。この世界のネーミングセンスどうなってんだよ。
「それが何かあるの?」
「美味屋は三つ星の高級店です。上級ランクの方や裕福な方じゃないと飲食は出来ません。御洒落屋も貴族御用達のお店です。」
そうなのか。でも凄いリーズナブルだよね。銅貨1枚で服はみんな買えたし。この国の貴族って倹約家なんだな。
「へぇ、そうなんだ。でも私は貴族じゃないよ。それに銅貨1枚で服は買えたんだから全然高くないじゃん。」
「た、高いですよ!?銅貨ですよ!?」
ん?何だこの反応は?銅貨1枚の何が高いんだ?
「ごめん、ちょっとアナスタシアの言ってる意味がわからない。」
「私が着ている服は木貨50枚です…銅貨で買う服なんて貴族しか買えません…」
木貨って何?銅貨より下があったのかよ。銅貨が末端通貨だと思ってた。
「木貨ってどれぐらいの価値なの?」
「木貨を知らないなんてやっぱり貴族なんですね…馴れ馴れしく口を利いてしまってすみません…」
アナスタシアがテンションダウンしてシュンとしてしまう。猫耳も垂れ下がっている。可愛い。もうこのままベッド連れて行きたい。
「違うよ。私の住んでた所では銅貨より下が無いから知らないだけ。レートが違うだけの事だよ。」
「そうなのですか…?それでも裕福な事には変わりないのでは…」
「うん、いいから。木貨のレートを教えて。」
これ以上ネガティヴになられても困るから強制的に話を進める事にする。
「は、はい!木貨は1000枚で銅貨1枚になります!私が偶に食べられるパンは木貨10枚です。」
そのパンがどの程度の物かは知らんが相当な差じゃね?そりゃアナスタシアが俺を貴族だって思うわ。
「あのさ、この国で生きていくのに必要なお金ってどれぐらい?」
「えっと…一ヶ月銅貨2枚あればギリギリ生活出来るかと思います…。あ、外で寝るなら銅貨1枚で大丈夫です…!」
なるほど。だんだんと見えて来たな。この国は貧富の差が相当に激しい。自由の国なんて謳ってはいるが実際は権力者たちが利益を貪っているだけだ。とんだクソ王国だぜ。
「へー。なるほどね。ありがとうアナスタシア。でもこれからはお金の心配はしなくていいよ。」
「え…?」
「私がアナスタシアの面倒を見るから心配する事なんてないよ。ちゃんと美味しい物を食べて、普通の服を着て、普通に寝られる。それをちゃんと提供するよ。」
「リンさん…でも…私は何も出来ないのに…そんな贅沢をさせてもらってもいいんでしょうか…」
大丈夫。ちゃんと身体で払ってもらうから。毎日ね。
「いいんだって。そんな事よりお風呂に入ろうよ。もう我慢出来なくて。」
「あ、では私は待っていますから先に入って来て下さい。」
「何言ってるの?一緒に入るんだよ。」
「え…?だけど…私は汚いですよ…?それに亜人だし…」
ちょっと汚い方が逆に燃えるから大丈夫だよ。
「そんな事気にするわけないでしょ。ほら、バスルーム行くよ。」
「は、はいっ!!」
さぁて、お楽しみタイムとさせて頂きますか。
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