初戦闘

肩まで伸びた金髪に透き通った青い瞳をした美少女。

西洋の鎧を身に纏い、左の腰には剣を差している。


「私はレナ・シャーロットと言います。これからよろしくお願いしますね」


「俺の名前は斎藤さいとう 灯真とうまだ。こちらこそよろしく」


互いに自己紹介を軽く済ませた後、俺は考える。


「さて、これからどうするか?」


Girls Warriorは仲間となった美少女たちと共に冒険をすると言う内容らしい。

しかし、具体的に何を目的として冒険するのかは不明だ。

今のところこれと言って冒険する目的などない。

強いと言えばこの夢から覚めるのが目的である。


「マスター」


考えていると、シャーロットが声を掛ける。


「敵が来ます。注意してください」


彼女が警戒する方向に視線を向けた。

すると、茂みから狼らしき生物が三体現れた。


「敵と言うのはあいつらのことか?」


「はい。その通りです、マスター」


確かに友好的関係を築けそうにない。

口から涎がダラダラと垂れている。

完全に俺たちを餌として認識しているらしい。


「シャーロット、戦闘経験はあるか?」


「ありません。ですが、戦えます」


腰に差していた剣を抜き、そして構える。

やる気があって良いが、流石に一人で三体を相手するのは苦しいだろうな。


(逃げれば追って来るのは間違いない……恐らく逃げ切れないか)


そう判断した俺は、エックスキャリバーを実体化させた。


「マスター、その剣は?」


「お前と共に引いた。これで俺も戦うつもりだ」


剣道部に属している為、戦えると思う。

しかし、通用するかどうかは解らないがな。


「マスターが戦う……それってありなんでしょうか?」


「何を考えているかは知らないが、集中した方が良いぞ」


一斉に飛び掛かる狼らしき生物。

奴らの攻撃を回避したが、俺とシャーロットは分断されてしまった。

そして、シャーロットに二体、俺に一体が迫り来る。


「マスター!?」


「心配するな」


思ったよりも素早くない……やれる。

相手の動きをよく見て、俺は剣を振るう。

すると、その刃が狼らしき生物に直撃する。

地面に着地したそいつは、二歩歩いたところでバタリと倒れた。


「マスター! 大丈夫ですか!?」


シャーロットの方も片付いたようだ。

こちらへと駆け寄って来た。


「この通りピンピンしている。そっちの方は大丈夫か?」


「は、はい。大丈夫です」


二人とも無事で何よりだ。

けど、何故かシャーロットは驚いているように見える。


「まさかマスターが敵を倒すなんて……」


見た目によらずと言うことなのだろうか?

だとすれば少し心外であるが……まあいい。


「それにしても……この剣は凄いな」


手にしている剣を見て呟く。

鍔がローマ字のXとなっており、その中央には赤い宝石が埋め込まれている。

名から察するにエクスカリバーと呼ばれる聖剣がモデルなのだろう。

重さを感じず、まるで羽のように軽かった。


「素人の俺でも戦えたのはこいつのおかげかもしれないな」


俺はそう感想を漏らした。




ちなみに、Girls Warriorと呼ばれるゲームはプレイヤーが戦うことがない。

美少女ユニットに指示したり、アイテムを使って傷ついた美少女を回復させたりするのがプレイヤーの役目だ。

そして、それが美少女たちにとっての常識でもあった。

故にレナは灯真の行動に驚きを隠せなかったのである。

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