郷に入っては郷に従え

明晰夢と言う言葉がある。

それは夢であると自覚しながら見る夢のことを言うらしい。


恐らく俺はその明晰夢を見ているのだと思われる。


帰宅した後、お風呂の電源を入れ、時が来るまでソファーでくつろぎ、テレビを付けたら友人の話に出てたスマホゲームのCMが流れており、取り合えずダウンロードしようとインストールボタンを押し、そして急に襲って来た睡魔によって眠りに着く。

で、気が付けばそこは森の中だった。


一連の行動を覚えていると言うのが夢と断言する証拠の一つである。

そして、証拠はもう一つ。


視界の一番下に複数のアイコンが存在していた。

上の方にはメニューと言う文字が見える。


「Girls Warriorのホーム画面と同じだな」


今日の昼休みに友人からGirls Warriorの画面を見せて貰った。

いや、正確に言えば見せつけられたと言うのが正しいが……まあいい。


「少々リアルすぎる気もするが、ゲームをプレイする夢なんて珍しくもないか」


話を聞いたばかりだし、そんなに不思議なことじゃないと思う。


「問題なのはいつ夢から覚めるかってことだが……」


何かの拍子に目覚めるはずだが、それは現実リアルの俺次第。

夢の中にいるこの俺じゃどうすることもできない。

つまり、待つしかないのである。


「でも、ただ待つと言うのはつまらないな」


折角の夢である。

楽しまないと言う手はないだろうと思った。


「まずはガチャを引けば良いのか?」


友人の話だと、ガチャを引いて道具アイテム美少女ユニットを手に入れるらしい。

特に美少女は手に入れ難いみたいで、欲しいを当てたいが為に課金すると友人が言っていた。


「やはり、画面の中だけの存在にお金を掛ける意味が解らない……」


ただの独り言だ。

周りに誰もいないことだし、ボコボコにはされないだろう。


「何はともあれ、やってみるか」


恐らくガチャと書かれているアイコンに触れればいいと考え、その通りにする。

すると、視界に薄いガラス板のような物体が表示された。


「まんまガチャの画面だな」


Girls Warriorはプレイしたことがないが、他のソシャゲーはプレイしたことがある。

それと同じ様な構図だと感じた。


上の方にはカッコいい西洋の剣や青い液体の入った小瓶、それと可愛い女の子が映し出されていた。

ガチャのラインナップと言う奴だな。

下の方には「十連ガチャを引く」と「ガチャを引く」のボタンが存在する。

ガチャを引く為に魔石と呼ばれる物が必要だが、十連ガチャを一度出来るだけの量があるのでどちらでも使用できるようだ。


ちなみに十連ガチャと書かれているが、初回なので一つおまけがつくらしい。


「であるなら、十連ガチャを回した方が得だな」


と言うことで、俺は十連ガチャの方をクリックするのであった。








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