第33話 隼人
隼人は先輩に呼ばれて外に出た。
どうやら社の知り合いが会わせろと言ってきているらしい。
容姿を聞くとすぐに詩織だと分かった。
隼人は苛立ちながら頭を掻いた。
すると先輩が呑気に尋ねる。
「あれ。捕まえた男の子、雲龍さんちの長男だろ? 本当にあの子がやったのか?」
「んなことまだ分かんないですよ。その為の取り調べでしょ。それとも他に誰かいるんすか?」
「いやさ。俺にはどうにもそう見えないんだよ。ナイフから指紋が出たらしいけど、高校生だろ? 調子に乗ってそういうのを持ちたがる年頃だよ。俺は少年課にいたから珍しくもないね」
「・・・・・・でも被害者と一緒にいたんですよ? どう考えたって怪しいでしょ」
「よく分からんけど止血したんだろ? これも少年課の時の経験だけどな。あの年頃のガキが何かしでかしたらさ。逃げるよ。通報さえしないで家に帰って、次の日に親と一緒に来るんだ」
「普通のガキはそうでしょうね。でも社は違う。あいつはなんていうか大人なんですよ。色々と知恵を働かせる。それこそ、その辺の大人より何倍も厄介なんです」
「それはお前が知りすぎてるからそう思うんだろ。まあいいよ。県警もうるさいし、東京からも人が来てる。俺はあんまり関わりたくないね」
そう言って先輩は歩き出した。
隼人が「なら口出すなよ」と独り言を吐く。
すると先輩が戻ってきた。
「そうだ。綾辻。事件現場周辺の防犯カメラな。一応漁ったらさ。あの時間帯、黒いスウェットを着た男が近くの車に乗り込んでるのが見つかったんだ。車には他にも誰かが乗っててさ。五百メートル程、南下して男を拾ってたんだろうって内田さんが言ってたぞ」
「・・・・・・先輩はそいつが犯人だって言いたいんですか?」
「いや。ただ共犯者かもしれないだろ。ガキに色々吹き込んでやらせる奴がいるんだよ。振り込め詐欺なんてそんなのばっかだ。ま、参考程度に覚えとけよ。じゃあな」
そう言うと今度こそ先輩はどこかに行ってしまった。
隼人は鬱陶しそうに嘆息した。
(何が言いたいんだよ、あの人は? ・・・・・・でも、もしさっき言ってた黒い服の男が犯人なら、そいつの他に共犯者がいるってことか? 車を運転してたんなら、ナンバーから割れるだろ)
隼人はイライラして煙草の箱をポケットから出したり、引っ込めたりした。
吸いたいが、今は詩織だ。
「ったく。どいつもこいつも」
隼人は悪態をつくと壁を殴って、外に向った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます