第278話 大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫じゃないけどたぶん大丈夫

 宿屋に戻り全力で食事をする。お腹に穴が空いた影響で中身がカラッポなのとめちゃくちゃお腹空いてるのと純粋に血が足りない。自分でも思うけど俺よく平気でいられるな。人外加減なら結構上位かもしれん。


 食べれば食べるほど体に力が沸いてくるのが分かる。栄養失調の時と同じ感じになってるから下手したら倒れてたな。不屈の力があるから貧血抑えちゃうし危なかったかもな。


「しかしティティ大丈夫かなあれ」


「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫じゃないけどたぶん大丈夫だよ」


 なんとはなしに呟くとあかねもちょっと困った感じで返答してきた。そのくらいティティはなんかもうだめだった。


 俺達が戻ってきてあずきと戯れ続けているティティに食事を頼むと、日が落ちてる事に気付き慌てていた。そのまま宿屋に入り食事の準備とか慌ただしく始めていたのはいいが、ティティいなくてよく回ってたな宿屋。というか親呼びに来なかったんか。


 解放されたあずきは意識がなかったのでとりあえず放置した。ティティがご飯は上げておいたと言っていたから大丈夫だろう。本当に大丈夫かはわからないががんばれ。


「とりあえずめぐが起きるまではみんな自由時間で」


 めぐは俺たちが戻ってきてもすやすやと眠り続けていた。透視で見てみると魔力は多少回復していたが神気はほとんど感じられないくらい微弱だった。


 ずっと付いていたかったが、俺の惨状をあかねとクロエは知っているので無理矢理食堂に連れてこられた次第。めぐが起きたときに俺も活動できないとかだとめぐに心配かけるし怒られると言われれば従うしかない。


「それなら私とイリスは王都に行ってくるわ。神気の事も調べてくるけどエルフも放置じゃキミヒトの評判悪いことになるかもしれないからね」


「美味しいものも食べてくる」


 そういえばベノプゥの所にエルフ預けっぱなしで、その後食事に呼ばれてたのにそれすら放置してたな。クロエとイリスが行くなら適任だし何が起きても対処は可能だろう。今の二人をどうにかできるのはたぶん魔王ですら無理。


 ついでに色々やらかしたし混乱してないかの確認もお願いする。あの王女様と王様のケンカはどうなったとか街の治安がどうとか色々お願いする。俺は顔割れてるから王様の手下がいた場合面倒だしな。


 俺の後始末を率先してやりに行くとかまじクロエに頭上がらないわ。花嫁衣装着せて抱き上げてぐるぐる回りたい。


「夜はこっちに戻って来るけど、何か必要なものがあったら収納に入れておくわね」


「それ。それ気になってた。どうしてめぐとクロエは俺の収納勝手に発動できるんだ? 便利だし共有してるのなんかドキドキするから別にいいんだけど」


 めぐとクロエは当たり前のように俺の収納を使ってものを取り出していた。めぐはポーションとか回復薬を、クロエはでかい大剣を。俺が瀕死だったり渡すタイミング逃した時便利過ぎるからありがたいけど理由は知っておきたい。


 人の魔法に干渉するなんてレベルじゃなく人の魔法をそのまま使うという謎仕様。クロエたちの生活用品がいっぱい入るようになるならここぞとばかりに取り出したり出来るから良い事尽くめだけど。


「あぁ、めぐに教えてもらったのよ。と言っても出来るのは私とめぐだけだけど。あと取り出すものに制限がかかってるわ、入ってるのを知っている物だけっていうね」


「お姉ちゃんだけずるい。私も使いたかった」


 なるほど。めぐの神の力の一端か。それなら納得しておこう。結局理由は不明だがめぐがやったことならなんでも許す自信があるし全てを肯定しよう。めぐが闇に飲まれて世界滅ぼすとか言い出しても俺はそれに従う。


 そんなことは起きないと思うけど。


「それなら仕方ないな。気を付けて……特にイリスはやりすぎないようにな」


「うん」


 素直過ぎて実に怪しいがいいか。なるようになるでしょう。クロエもいるし何かあったらテレポートですぐに戻って来られるし問題は無いとおもう。実際王都がどうなってるのか気にならないわけじゃないからな。


 二人が調べて来てくれるならありがたい限り。神気に関しては望み薄いけど何かあれば儲けものだしな。俺がめぐに感謝を捧げ続ければ回復しそうな気もするけど正規の方法があるなら知っておいて損はない。


「私はダンジョンで鍛えてきます」


「おういってら」


「キミヒトさん私に対して冷たくないです?」


 決意に満ちた目で宣言してきたから軽く送り出そうとしたら詰め寄られた。普通のダンジョン回るなら特に問題もないだろうし、この街の中ならあかねのスキル範囲内。何か起きても駆け付けられるだろう。


 それに通信機持たせておけばいつでも連絡取れるし良いかなって思ってたんだけどご不満のようです。そういえば全然フラフィー構ってないよな。


「だってすぐ刺すんだもん」


「分かりました。期待に応えますね」


 あしらったらめちゃくちゃ笑顔でめちゃくちゃ怖い事宣言された。あかん、怒らせたかもしれんわ。いやでも俺何も悪くないと思うんだけどどうなんでしょうか? 理性無くして襲い掛かって来るわ街壊すわで君最近やりすぎよ?


 いじられキャラとしてもっと頑張ってほしい。ギャグ要員としてのレベルもダンジョンで上げて来てくれ。


「じゃあ私もフラフィーちゃんについていこっかな。どうせキミヒト君はめぐちゃんのとこから動かないだろうし。フラフィーちゃん一緒にいこっ」


「はい! よろしくお願いします!」


 なんか俺ぼっちになったんだけど。

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