第277話 俺が最も大切にしたい場所
「あら、あかねもいるのね」
「クロエちゃん! 無事でよかった……ってすごいことになってる」
二人で探索しているとクロエが唐突に出現した。服とかに乱れはほとんどないが髪が信じられないくらいぼさぼさになっていた。あかねが手櫛で直しているが埃っぽくなっているせいか中々に苦戦している。
俺もクロエの髪梳きたいと思ったので参戦する。こんなにぼさぼさになっても可愛いし良い匂いがするからクロエを崇拝するしかないな。魔法少女服な事ももう気にしてないしこのまま銅像でも建ててやりたい気分だ。
「クロエ、あいつはどうなった?」
「再起不能にしておいたけど止めは刺せなかったわ。もうちょっとだったんだけどね」
クロエがなんかやたらと黒い笑みを浮かべているが妙に嬉しそうだったので突っ込むのはやめておく。ずいぶん切れていたしまだやり足りなかったとかそう言う感じだろう。
みんなが力を手に入れてからどんどんバトルジャンキーと化している気がするけど止めたほうが良いのだろうか。俺も若干そんな感じがあったけどケイティのおかげでだいぶ目が覚めたわ。俺サポートに徹します。必要なら戦うけど。
人類の中だったら上から数えたほうが早いだろうけど勇者の中で数えたら下からの方が早い……いや相性もあるしそうでもないか。オールラウンダーなユウキとか超人になれるショウには負けるけど元々第二第三グループの奴らよりかは戦えるはず。たぶん。
「結構クロエも限界だろ? もうちょっとって言うけど相当無理する必要あるだろ」
「そんなことないわよ、って言いたいところだけどそうね。流石に疲れたわ」
髪を触ったり服の汚れを手で落としたり浄化をかけたりしながら魔力の状態を確認する。いつもは魔力が圧縮され過ぎてすさまじい事になっているが、今は普通の人と同じ程度の魔力しかない。
それでも充分ではあるが、クロエの魔法の性質的にすぐ戦うのはちょっと無理だろう。クロエのオリジナルと思われる闇魔法たちは魔力効率度外視の威力マックス型だからな。見てるとわかる。普通の魔法と一緒にしてはいけないと。
「ねえキミヒト君、なんでクロエちゃん触りまくってから浄化かけたの? 埃落とすなら触る必要もなかったし浄化かけてからで良かったじゃん」
「あ、みんな来たんじゃないか?」
軽く雑談しているとあかねの分身がイリスとフラフィーを連れてこっちに来るのが見えた。やっぱこうしてあかねが二人に分かれて移動しているの見ると不思議な気分になるな。
……てかあいつらさぁ、ボディランゲージで語り合うのは別にいいんだけどもうちょっと何とかならんかったんか。服がボロボロなんだが?
フラフィーは冒険者セットみたいな服だったけど腕と足の所の布無くなって若干セクシーになってるし、殴り合いした証拠の如く腕は赤くなってるし、靴事消し飛ばされたのか裸足だし、ものすごい獣人らしい感じになってる。
イリスは制服スタイルでスカートだから下半身は良いとして、ブラウスの袖無くなってるって言うね。クールビズとでも言うつもりか? ブレザーは脱いで戦ってたみたいだから手に持って歩いてるけどロリ番長って言葉が浮かんでくるよ。
戦闘用の服買って渡しておこうかな。ダンジョン攻略したからお金入るしまた新調しよう。服だけにどんだけ散財するんだって話だけども。
「話は聞きました! クロエさん大丈夫でしたか!?」
「私よりもあなたたちが大丈夫なの……?」
フラフィーがクロエに心配していた事を伝えるが、俺もどちらかというとフラフィーとイリスの方がどうにかした方が良いと思う。何がこいつらをここまで掻き立てたのか小一時間問い詰めたいところ。
イリスはクロエが無事な事を分かっていたのかまったく焦る様子もなくいつも通りだ。いやちょっと疲れてるように見えなくもない。ちなみにフラフィーは若干足元が怪しい。
「巨乳は大丈夫。私も大丈夫。ちょっときつめに問いただしただけだから」
「私は大丈夫じゃないです……」
「そうか、詳しい話は宿屋に戻ってから聞こう。めぐも待ってるしな」
イリスがちょっと長めに喋ると何か嫌な予感を感じたので即撤退を決め込んだが腕を掴まれた。いつもなら袖とか背中あたりとかを控えめにつかんで止めてくるイリスが腕をつかんで止める。めちゃくちゃ怖い。
しかも結構な力で掴んでくる辺りもう怖い。この子フラフィーとの戦いで肉弾戦の何たるかをしっかり学んでいらっしゃる?
「その前に、いい?」
「いやほら、俺もクロエも疲れてるし……」
「私は大丈夫よ」
にっこりとクロエが食い気味に即答し笑顔を見せてくれる。めちゃくちゃ可愛いけどこれどういう状況? あかねは距離とって逃げてるしイリスが俺の腕物凄い力で握りしめてるしフラフィーはちょっと不安げにこっち見てるしなんなんだ?
ふー、落ち着け。いつも修羅場をくぐりぬけて来たじゃあないか。大丈夫、死にはしない。ちょっとした嫉妬とちょっとした入れ違いだろう。うんうん大丈夫大丈夫。今お腹に風穴あけられたらマジで危険だけどあかねもクロエもいるし死ぬことはないだろう。
よっしゃ、腹パンされる準備万端。
「死ぬ覚悟まで出来てる。来い」
「じゃあ結婚式したい」
「いいよ」
可愛いかよ。フラフィーに対する嫉妬かい。全然余裕だわ。身構えて損した気分。でもそう言えば結婚式したって話うやむやにしてダンジョンに潜ってたしそれのせいでこいつらバトり始めたんだったな。
仲良いのか悪いのかわからんわまじで。結婚式ぜひこちらからやらせていただきたい所存だけどまともな教会がこの地にはない。王都に戻るか別の所に行くかの二択。
個人的にはここの廃教会思い入れがあって一番良いんだけど、女神様と初めて会った場所でこの世界で俺が最も大切にしたい場所だ、とか言ったらめぐに火が飛びかねないからやめておく。
「キミヒト、嬉しい」
「はいはーい! 私も! もちろんクロエちゃんともしてくれるんでしょ!」
イリスがちょっと照れてるのでほんわかしてるとあかねも名乗り出てきた。三人も四人も変わらないので全然問題無し。めぐにはまた女神役をやってもらって楽しくやろうかな。
フラフィーの時はまじの女神様スタイルだったからいいけどめぐの状態だとおままごとに見えそうっていうのが気になるけど別にいいか。中身がパーフェクト女神様だから良い式になるよ。
「俺が言えた話じゃないけどあかねも結構倫理観飛んだよな」
「ここ日本じゃないしみんな可愛いからオッケー」
日本じゃ重婚は認められてないからなぁ。異世界本当に最高です。ありがとう女神様。
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