第264話 言われちゃった

 というわけで全員でもう一度屑鉄のダンジョンの中に潜りダンジョンコアの前まで行く。当然のようにめんどくさい二人はそのまま眠らせっぱなしで、イリスはあかねがおんぶしてフラフィーは俺がおんぶしている。


 起きたら喜ぶところだろうが、結構強めに眠らせてもらったので起きる心配はこれっぽっちもない。身長的におんぶするには俺とあかねが適任で、重さ的に俺がフラフィーを背負う事になった。寝てる最中の密着率はたぶん一番フラフィーが多いわ。


「それじゃ壊すぞー」


 ダンジョンコアを壊してみたが、スキル強化のアナウンスは流れなかった。毎度の如くダンジョン内の清掃しますだけのご報告。つまりこれはあれだな、スキルの限界値か、ボーナス期間の終了ってところかな。


 というか前回の世界でも強化入らなかったのに、今回のこの状態からさらに強化が入ったら手つけられなくなってたし仕方ないか。


 おかげでケイブロット来た意味ほとんどなくなったけど。


 そのままいつものように外に放り出されたが……これからどうしたものか。まじで特にすることないし皆で観光旅行としゃれこみたいところ。海とか山とか行って四季折々の風景を楽しむ。


 そして水着の幼女を見ては癒され、冬になれば厚着でもこもこのおしゃれした幼女を見ることが出来る。うむ、これが異世界の醍醐味だな。合法的にガン見出来る。


「キミヒト君、お金、足りるの?」


「え?」


 ……そう言えばなんだかんだで散財しかしてない。前の世界でしこたま稼いだとは言え皆の特殊なお洋服を買ったりしたのでからっぽだわ。いやまだなんとかなると言えばなるけど確かに心もとない。


 ふむ、ここはダンジョン街だし少し荒稼ぎと行くか……? ああそれにみんなの武器を調達するためにミスリルのダンジョンも攻略してしまうか。一回攻略すればアダマンタイトのゴーレムも出たし……そういやミスリル合金で魔鉄がどうとかなかったっけ。


 やるか、きっと魔鉄はかなりレアな物だろうし全く出回ってないだろう。ミスリルのダンジョン攻略しまくってやるぜ……。全然やることあったわ。ほとんどなくなったのは気のせいだったわ。


 あかねが急に俺の心の声に話しかけてくるのももう慣れたもんだな。


 なんだったら同性愛の街にしないように頑張る理由も出来ちゃうわ。あかねに諭されたけどお金を稼ぐついでに行う事だから仕方ないね。ロンドのやつらは頑張っているのだろうか。


「じゃあ今回のメンバーは……」


「私は二人の面倒見てるわ。あかねは必要になるでしょうし」


「そうか? んじゃあかねとめぐと行ってくるわ」


 クロエは二人の面倒を見るという事で宿屋に残る事になった。クロエの言っているあかねが必要というのは、ダンジョンに入る時にまた悪いことをして入るという意味だ。


 俺達の冒険者ランクは最低ランク、それなのにミスリルのダンジョンに入る事は出来ない。最低でもランクを上げなくてはいけないが……うん、めんどくさいよね。ランク上げも楽しいけど、そんな事してたら全てのダンジョンを攻略してしまうだろう。俺達とルカ達で。


 ダンジョンの難易度を無駄に爆上げしたら一時的にインフレを起こすかもしれないが、ダンジョンで稼いでいる人たちの迷惑になりかねない。なので俺達は絞って攻略をさせてもらう。それでもミスリルのダンジョンにどれくらい被害で出るかはわからないが。


 とりあえず二段階くらいは上げておきたい。


「よーし、久しぶりに人の弱みに付け込んで脅しちゃうぞー」


「迷える子羊よ、女神の前でその発言はいかがなものかと……」


 大丈夫だめぐ。今回はそこまで大多数を巻き込むつもりはない。ほんのちょっと、ごく一部、たった一人を軽ーく脅すだけだから。




「ダメだ」


 俺達はギルドに足を運びジーギスムンドに冒険者ランクの繰り上げを提案しに行ったが当然のように断られた。当然と言えば当然の結果だったが、規則を守るという立場にいて貫禄も持ち合わせているの見ると普通にかっこいいな。


 いくら俺達がぶっ壊れた強さを持っているからといって違法にランクを上げるのは流石に無茶が過ぎたか。


 だがやる。


「ギルドマスター、大人しく俺達のランクを上げてくれた方が良かったって思わせてやりますよ。やれ、あかね」


「……」


「あかね?」


 ジーギスムンドをじっと見て何かしらを探っている風なあかねだったが、全く反応を示さない。あかねの事だから嬉々としてやり遂げてくれると思っていたけど……これはもしかしてあれなのか。


 何も言わない俺達を見てジーギスムンドはやれやれと首を振る。目の下の隈がやばいしきっとまた何徹もしているのだろう。すまんな。


「なんだ? 話は終わりか? もうないなら普通にランクを上げてくれ。本来なら俺に直接こうやって話をすることすら違法だからな?」


 というわけで俺達は締め出された。うん、確かに偉い人脅してこっちの良い様に扱おうとか明らかな犯罪行為だし、それがばれたらジーギスムンドもただでは済まないから引き受けるわけないよねって言う。


 前の門番とかは状況が重なったから成功しただけで普通はこうなる。一応ギルドの最上位だし脅しても屈しないだろうしな。ぶっちゃけた話ただどんな弱みがあるのか知りたかっただけっていうね。


 俺達がここに来た本来の目的は直接の脅しじゃない。ただ言葉を引き出したかっただけだ。


「で、あかね。やっぱギルドマスターは清廉潔白な感じだった?」


「うん。昔から真面目な人だったみたいだね。結婚すらしてないし女遊びも何もしてない。冒険者してギルドに貢献してダンジョン攻略してたら探索者としても認められてみんなから押し上げられてギルドマスターになったみたいだね」


 やっぱりか。結構お堅いイメージと丁寧な物腰から若干予測していたとはいえマジに良い人だったか。ロンドの連中も慕っていたし、お互いに良い関係を築いていたんだろうな。


 街のために頑張っている人たちのためなら身を粉にして働くギルドマスター、慕われて当然と言えば当然だな。ワンチャン一足飛びに楽しようと思ったけど仕方ないな。


「じゃああかね、俺ちょっくら暴れてくるからあかねも暴れて来てくれ。めぐ、済まないがちょっとだけあかねと一緒に行動してくれ。二日もあればたぶん大丈夫。クロエたちに伝言も頼んだ」


「そうだね、言われちゃったもんね。普通にって」


「……嫌な予感しかしないんですが」


 ああ仕方ない。俺達が入れるダンジョンは今の所番兵がいない一番下のランクとその上のランクのみ。つまりそこのダンジョンで物を稼いだり攻略とかしたりしてランクを上げればいいんだろう?


 ジーギスムンドは言ってしまった。普通にランクを上げろと。ああやってやろうじゃないか。二日もあれば低ランクダンジョンはかなりの数潰せるだろう。不屈と透視使って全力で駆け抜ければどこもそれほど時間はかからない。低ランクは長くて十階層くらい。あかねもやってくれるみたいだし突き抜けたるわ。


 俺は最初に釘を刺したからな。大人しく俺達のランクを上げてくれた方が良かったって思わせてやりますと。二日後どんな反応するか楽しみじゃないの。全く仕方ないなー。


 え? 屑鉄のダンジョンの攻略の報告とかドロップの納品? 前回の受付嬢の対応を見るに新しいドロップ品が出ると色々とめんどくさい。なので黙って置く。探索者としてあるまじき行為だが、義務ではないので大丈夫。決してジーギスムンドの対応見て報告をやめたとかではない。

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