第250話 正直に白状

「あーもうはいはいわかりましたよ。思い入れのあるダンジョンに隠し要素で何かあったとか報告しておきますよ」


「さっすが! よろしくおねがいしまーす!」


 女神はどうやらめぐの痕跡を見つけても、それのありかがどこにあるのかまでは見つけられなかったようだ。実際に俺の中にあるから見つからないと思うし、見つかっても前の世界から持ち越したでごり押せると思う。


 というか仲良いなあいつら。女神様が他の女神に愛されていたのだろうというのがよくわかる。俺の体感ではそんなに長い時間じゃなかったけど、女神様達の世界はきっと時間の流れが違うんだろうな。


 人を教育してるみたいなこと言ってたし、だからこそ人徳みたいなものがあるのだろう。距離感がかなり近いからいつも一緒にいたとかなのだろうか。


「でも一応気になるので、先輩が助けた人間達の状態も見せてもらいましょうか」


「かーえーれっ! かーえーれーよー! すいませんでした帰ってくださいお願いします!」


 めぐは女神の服を掴み帰れコールをし出す。あの女神実体ないと思ってたけどめぐは触れるのね……。なんというか、不思議な光景だ。もし加護をもらってなかったらきっと凄くへんな感じに見えているに違いない。


 めぐに帰れ帰れ言われて女神はちょっと涙目になっているの少し可愛く思えるよ。俺たちのこと調べられたら完全に色々とばれてしまうから仕方ないと言えばしかたないけど。


「……先輩冷たくないです?」


「私がしてること天界にばれたら結構なことだし……」


 ジト目でにらまれてめぐは正直に白状する。自分がどれだけヤバイことをしているかをしっかり認識していながらも、やってしまうというなんとも可愛い感じである。


 それが本当に可愛いことで済むかどうかはわからないけれど。というか本当にヤバいんだったらスケルトン倒したっていうのにな。


「冷たくするなら他の人呼びますよ」


「えー!? どうしたの今日、めっちゃ羽綺麗じゃん! 背中に天使が宿ってるー!」


 仲良いなぁ。というか天使そのものだと思うんだけどそこは別にいいんだろうか。そういえば天使と女神の違いってどんなもんなんだろうな? この二人はたぶん女神様だろうけど、こういうやり取りできる天使っているのかな。


 でも確かにめぐの言う通り羽の輝きはかなり綺麗だと思う。めぐは女神様してるとき羽出してなかったけどなんか違うのかな?


「……お兄ちゃん、私も羽はちゃんとあったよ? 出してると寝づらいし邪魔だから消してただけで」


 俺が女神の羽を見つめていたからか、めぐから謎の注意が入る。見た目よりも寝づらさを優先するあたり実にぐうたら女神様っぽくて好き。というか別にめぐに天使の羽があろうが無かろうが俺は気にしないよ。崇める女神様はずっとめぐたった一人だ。


 そんな気持ちを込めてめぐの頭をよしよししてやると少し満足そうにしているめぐがとても愛らしい。自分の娘を推す父親のような気分に浸れて不思議な気分だわ。娘っていうか設定的には妹だけど。


「はぁ、わかりましたよ。おい、人間とエルフ」


「ん?」


 めぐに対する態度とはかなり違い、完全に上から目線でのセリフ。実際に偉いし上の世界の人だから何もおかしくはないけど、言葉から受ける印象とは裏腹にその目には慈愛の光がある。


 その目の先にはめぐがいて、めぐのことをとても大切に思っているのがそれだけで伝わってくる。そしてゆっくりと俺たちに頭を下げる。


「先輩をよろしく頼む」


「おっけ、任しといて下さい。めぐは俺の存在意義なので」


「色々と助けてもらったし今度は私たちが力になるよ。というかめぐちゃんは自由すぎるけど……」


「そうね、感謝しているから仲良くするわ」


「みんな優しい……」


 めぐは俺たちのセリフにちょっと感動したようだ。俺がいつも言っているのは当然だからスルーされたけど、あかねとクロエからもちゃんと感謝されて嬉しそう。相変わらず耐性ないよね。俺以外には。


「……良いでしょう。今回のことは見なかったことにします。嘘のないその気持ちを大切にしてください。先輩もほどほどに」


「はーい!」


 そういって女神は空に帰っていった。実はあの女神はめぐの痕跡を辿ったとかいいつつただ様子を見に来ただけなんじゃないかと思う。そのくらい優しい顔をして俺たちに頭を下げていたし。普通にいい人にしか思えない。


 そもそも真面目に探すなら共に行動している俺たちに何かしらするべきだし、女神の力を普通に持ってるめぐに対して厳罰があってもいいはず。だからめぐもびびっていたし。


 もしかしたら本当は別の女神が来るところをあの女神が無理やり変わってきたんじゃないかと考えてしまう。何だかんだでめぐは面倒見良いから恩返し的な乗りで来てくれたのかもしれない。


「さぁ皆、邪魔物はいなくなったから先に進もう!」


「なんかめぐちゃんテンション変じゃない?」


「そっとしといてやれ。めぐは今皆からよいしょされたからめっちゃ照れてるんだ」


 俺が皆にそう伝えるとめぐは俺の腰を後ろから押して無理やり進み始める。ちょっと顔赤くして見えないようにしてるところとか、やっぱこの女神様可愛いと言わざるを得ないわ。


「めぐ、まだやることあるから」


 照れ隠しに階段の方へ俺をぐいぐい押していためぐだが、この階層にきたのはあずきの戦いを見るだけじゃない。例の解呪のスクロールというかメモも取りに来た。


 

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