第251話 休憩はあり
「そうそうこれこれ」
俺は懐かしい隙間に剣を差し込み無理やり広げていく。そうすると前と同じように隙間は大きく広がっていき人がはいれるスペースが出来上がる。そのまま奥に進んでいくと大きな空間が出来ていて、箱に入ったメモを発見する。
「懐かしいねぇ。これってどんな呪いでも解けたりするのかな?」
「俺もそれが気になっててな。一応もらっておこうと思ったんだ」
この勇者の呪いを解くことの出来る呪文、洗脳の呪文はこの世界ではかなりの上位というかもはや禁術。まともな方法で解くことは不可能だしだからこそこうやって非正規なルートを使わないとあかねは呪われたままだった。
あかねの解放スキルを野放しにしたのは正直にいって王様からしたらかなりの痛手になってしまったな。そういえば王女様と王様の親子喧嘩はどんな結末をむかえたんだろうか。そのうち王都に戻って聞きに行くか。
「うわ、これ女神の力使ってるじゃん……。あー、こっちもばれたら大目玉だったなぁ。そう言えば変な死因の人に加護与えた事ある気がするなー、勇者だったんだーへー」
「……めぐちゃんって大概だよね」
「あらあかね、あなたも前の世界ではこんな感じだったわよ」
「えー? 私はここまでひどくないよー、ねぇキミヒト君」
「あかねは一回客観的に前の世界のさぼりっぷりを見た方が良い。スキルで体力を消耗しいていたのは聞いたけどやっぱりあれはおかしいからな?」
クロエと俺がかなり本気で言ってるのをわかったようであかねはちょっとむくれてしまった。めぐと二人でいじけていてちょっと微笑ましいのでほおっておく。というわけでクロエと今後のダンジョン攻略について話し合う。
といってもこのまま進むか戻るかのどっちかになるだろう。すんなりここまでこれたし、戻るだけなら何も苦にならない。
「クロエ、今から戻って二人を拾ったらすぐに攻略しようと思うんだがどうだ?」
「反対ね」
あれ、てっきり俺と同じく押せ押せでいくのかと思ったけどそんな事は無いようだ。あずきも見た感じほとんど消耗していない、というか回復しているしみんなほとんど戦闘らしい戦闘をしていない。
これなら別に一旦戻ったあとに攻略しても良いと思うけど。イリスとフラフィーも外で戦ってるままだし一旦止めに戻った方が良いとも思ったんだが。二人が思ったよりも激しく戦闘していた場合マジでやばいだろうし。街とかその辺りが。
クロエは物怖じしている、というわけでもないし攻略に反対しているようにも見えない。進むでもなく戻るでもない感じ?
「キミヒトの考えていることもわかるわ。でもねキミヒト、あなたはどうなの?」
「俺? 全然平気だけど」
クロエはどうやら俺の心配をしているようだが俺は別に消耗している感じはない。さっきあずきとスケルトンの戦いを見ている時に防御と守護の光を発動して皆を守っていたのと、めぐの力を回収するために全力だしたのと、それでクロエからやばいバフもらったくらいしかこのダンジョンではしていない。結構してるな?
このダンジョン入る前はあずきと戦ってその足でこのダンジョンに向かってきて……そう言えば確かに俺めちゃくちゃ疲れててもおかしくないだろ。あずきは格上だったし結構色々無茶もやらかしたな。
でも何故か元気なんだよな……原因はたぶんあの薬飲んだからだろうけど。あの薬の効き目マジでやばい。
「わかった? 自覚症状が無くても休める時に休んておいたほうがいいの。ちょっとくらい休んだって別に大丈夫よ」
「そうか……そうかもしれないな」
一応メモも回収したし、スケルトンの大剣もゲットした。後は一度戻ってからまたみんなで潜って最下層まで攻略しようと思っていた。でも確かに言われてみればちょっとくらい休憩はありだな。
あの脳筋の二人も俺達が戻ってこなければ流石に戦うのやめてくれるかもしれないし。いやどうかな、逆に戦い続けたりしないかな? わからん。でもいいか、たまには放って置こう。
「私にはわかる。クロエちゃんの本心が。たとえ心が読めなくともクロエちゃんはきっとこう思っている。『キミヒトはめぐには手を出さない。そしてあかねは昨日いっぱいした。それなら今休憩を挟めばきっと二人きりになれるはず』と」
「いやいやクロエに限ってそんな下心全開な提案をするわけないだろ……クロエこっちむいて」
「あかね嫌い」
「かわいっ」
クロエかわいっ。搦手使ってくるとことか最高に好き。あーあ我慢できなくなってくるから本当に自重してほしいわ。そしてあかねの考えたクロエの考えは当たっているだろうし、俺もここで休憩するならそういう分け方にしようと思っていた。
俺がめぐと二人きりになるのは絶対に止められるだろうし、かといってあかねと一緒になるのはクロエに申し訳ない。ならクロエと二人になるのが定石。全員一緒に寝るという手もあるにはあるが、二人が仕掛けてきたら我慢できないから却下。
なので必然的に二人ずつで別れることになって俺はクロエと一緒になっただろう。というかなにが休憩なのか、ホテルとかそう言う意味でのご休憩なのだろうか。まったく休む気ないじゃんかクロエ。
「これは休憩は無しで帰るか。ここで休んだらダンジョン攻略どころの騒ぎじゃなくなるから今日ダンジョン攻略終わって落ち着いてからゆっくりしような?」
「嫌」
俺がクロエのことをよしよしすると思いのほか強い否定の言葉が返って来る。嫌がっているというよりは、拗ねているといった感じの否定の言葉。嫌っているとかそういう感じじゃないから気にならないけど、地味に心に来るよねこの言葉。
クロエは珍しく黙り込んでちょっと恥ずかしそうにしているがどういう事だろうか。俺がクロエに聞こうとするとあかねが颯爽と現れてクロエをなでなでし始める。
「あかねちゃんが解説します! クロエちゃんはこう思っています。『今なら二人きりになれるけど、宿に帰ったらフラフィーも一緒になるじゃない……』です」
「スリープ」
「すやぁ」
おうまじか。めちゃくちゃ可愛いこと思ってくれてるなクロエ……。っていうかあかね守護の光使って状態異常無効化してたよな……? イリスのは弾いてたけどクロエのこれは……?
クロエのこれも魔法とは別のものなんじゃないかと思うとかなりこわいんだが大丈夫だろうか。イリスも若干病み気味だしフラフィーも病んでるしクロエまで本格的に病みだしたら手が付けられないんだが?
「……信者一号、こっちは私が引き受けるので、迷える子羊に優しくしてあげることを推奨します」
そういって女神様は俺の収納からテントを引っ張り出しそこに防音魔法と耐震魔法と……え、時空魔法? というかどうやって俺の収納に干渉したのこの女神様も怖い。でも俺だけしか使えない魔法を女神様が共有してくれているってだけでクるものがあるのでむしろ嬉しいまである。
自分の秘密を崇拝している人に知られているというこの謎の高揚感、イケナイ気持ちになってしまいます。
「……このテントの中では時間がとても緩やかになっています。そしてこの入口から入って、出た時に丁度一時間経つように魔法をかけました。中で何時間過ごしていようともです。ごゆっくりどうぞ」
そういって女神様はもう一つテントを引っ張り出してあかねを放り込み自分も入っていった。至れり尽くせりっていうか……そんなチート必要ないです。
「キミヒト」
「はい」
でも俺は銀髪のロリータに下から切なそうな目で見つめられて抗える精神力は持っていませんでした。
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