第247話 久しぶりに

「久しぶりに鬼畜なことしてるキミヒトを見た気がするわ」


 クロエが半目で俺の事を見ているが、やれやれという感じで子どものいたずらを見守る母親みたいで俺が微笑ましくなってしまう。ロリなのに母性もあるとか反則以外のなにものでもないよね。胸は全然ないけど。


 クロエのこともめちゃくちゃ構いたいなぁ、クロエは一人で構いまくると逆襲にあうから何かいい感じにストッパー役が必要だけど……。何とかしてくれそうなのは……いなくね。


 前の世界のあかねのノリだったらたぶん止めただろうけど、今の世界のあかねなら絶対悪乗りを重ねて二人で俺をやりたい放題するだろう。魅了と洗脳持ちのコンビは組ませたらあかん。


 とか考えてるうちにあかねの解放によってスケルトンはその姿を徐々に失っていく。外側からゆっくりと内側に向かって砂になっていく。どこか穏やかな顔に見えるのは気のせいだろうか。


 もしかしてなんだけど女神の力を手に入れて暴走してただけで本当は普通に意識のあるスケルトンとかだったのかな。それがようやく解放されてゆっくり眠れる的な。ただ強化されただけにしては強すぎるしあり得る話か。


「あー……」


 めぐはスケルトンが溶けていく姿を見ながら気の抜けた顔をしていた。まるでFXで全てを溶かした人物のような顔で、めぐも一緒に浄化されて溶けているようになっている。でもへちょってる顔も可愛いから個人的には大好きだよ。


 とりあえず可愛いので頭をぽんぽんと優しく叩いておく。ぼけーっとした顔のまま為すがままなのでさらっさらの髪をツインテールにしてクロエとおそろいにしておく。はーかわいい。


 めぐはスケルトンの方を見つめて手を前に出していて、なんか宝物を持ってかれる子どもをみている気分になってきた。実は俺悪い事したんじゃないかな的な。


「キミヒト君、おわったよー」


「おつかれ。あずきもお疲れ様な。魚とお肉どっちがいい?」


「がうがう!」


 あずきにご褒美とばかりに収納から食料を取り出すと両方持って行かれた。とてもおいしそうにもぐもぐしているのはやっぱかわいいわ。小さい体で一生懸命何かしているのってすごい良いよね。というわけで追加で果物もあげておいた。バランスよくお食べ。


 あかねも一仕事終えたので何か物欲しそうにしているが、とりあえずほっぺたを引っ張って置く。以外にやわらかいほっぺたでちょっと女の子らしさを感じさせる。ほっぺた柔らかいのはロリコンの弱い所をよく抑えていると思うよ。


 イリスとクロエの柔らかさには劣るけどこのくらいの感じも凄くいい。


「ひゃんで」


「いやなんとなく」


 あかねを普通になでなですると俺がはまりそう。こいつのヒロイン力どこまで高まっていくん? 定期的に雑に扱っておかないとクロエとイリスのロリコンビに申し訳が立たない。俺はみんなを愛しているのにあかねを贔屓しているみたいになってしまう。


 フラフィー? あいつは何しても好感度マックスだから大丈夫だよ。元々雑に扱うキャラ筆頭だしこっちの好感度があるうちは余裕余裕。下がるようなことがあってもすぐさまフォロー入れる気だし大好きだから本当に嫌がる事をする気はないし。どっちにしろ行き過ぎは禁物だけど。


「それでめぐ、どうしたら……」


「あれだよぉ……お兄ちゃんの鬼畜ぅ……」


 めぐはスケルトンが溶けていた辺りを指さす。通常では見えないが、透視を使う事によってその力の源みたいなものが見える。魔力の塊のようでもあり、精霊のようでもあり、しかし何もない様にも見える。


 純粋な力の塊というか空気の塊というか、何とも表現し辛いものがそこにはあった。しかしただただ綺麗。あれが女神様の力か。もしかしてこれ、俺も触れるのでは? やってみる価値はある気がする。


「あ、お兄ちゃん! 危ないよ!」


「え?」


 俺がその塊に近づいた瞬間、ものすごい抵抗を受ける。それは電気ショックのようでもあり、物理的に強い力で押されているようでもあり、何かに殴られているようでもある。そしてそのダメージは俺の防御を普通に突破してきた。


 そのせいでやや後ろに飛ばされ、元の位置に戻される。


「いってぇ……」


「だから言ったのに。あーあ、きっと回収されちゃうだろうなぁ」


「回収されるとまずいのか?」


「そりゃね。そのまま無くなれば元から無いで済ませられたけど、天界にバレたらかなりの大ごとだよ。それに魔物に取られてたって言うのもあるから……人間の姿すら許されないかも」


「あ、じゃあ俺が回収するわ」


 俺は透過のスキルと不屈のスキルを全力で発動させる。そしてもう一度塊に近づくと、先ほどより攻撃が弱く感じられた。やっぱ透過を使っても貫通してくるのがいくつかあるな。そのまま通り過ぎるのもいくつかあるけど。


 しかし貫通して食らうものは不屈の力を発動し無理やり耐える。これは防御でも守護の光でも耐えられなさそうな変な力だ。それならおかしい力の一つである不屈を使っていくしかない。


 というかこの元々女神様の力だったもの普通に欲しい。だってこれを俺が回収したらもうそれって女神様と一心同体的なあれじゃん? 女神様信者としてはこの機を逃せるはずもなく。誰かに回収されるとか許さん。というかそのために解放したまである。


「ぐぬぬぬ」


「お兄ちゃんまじか……いやほんと頑張って……!」


「めぐちゃんさー、そんなにまずいなら先に言っておけばキミヒト君も私もやんなかったのに」


「そうなんだけどね、なんかこう、何とかなるかなって思って……あずきで削りきれると思ったんだけどなぁ。あともしだめでも自分で回収できると思ってたんだよね。だめだったけど! てへぺろ」


 後ろで和やかな会話が行われているような気がするが俺は正直にいってめちゃくちゃしんどい。なにこれまじでやばいんだけど。塊に近づくにつれてその抵抗は激しさを増してくる。正直気を抜けば一瞬で後ろに弾き飛ばされるだろう。


 地味に塊が上に向かって進んでいってるのも相まって距離が近づかない。いやこれ回収するの無理くね? 女神様の一部だと言っても俺の限界値を優に超えてる力なんだけど。


 俺が諦めかけた時、後ろから声が聴こえた。


「諦めるなんてらしくないわね。ちょっと負荷が高いけど……耐えてね? オーバーブースト」


 ドクン、と俺の中で何かが異常に作動を開始したのを感じる。心臓の他にもう一つ、いやもっと、体の各場所に臓器を追加されたような不思議な感覚がある。そして全ての場所に意識が集中され力がみなぎる。おかしな話だが体の細胞一つ一つまで意識的に動かせる気すらする。


 あぁ、何でも出来るわ。


 俺は全ての抵抗を無理やり押しのけながら一気に駆け抜け塊に触れた。

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