第98話 トリップしてた

「キミヒトがまさかフラフィーにここまでやられるなんてね……」


「自分でも驚きですよ、ミカさんに感謝しないといけませんね」


「ちくしょう、ちくしょう」


 本物のアイドルとなってしまったクロエと、フラフィーの童貞絶対殺す服の間に挟まれこの上ない幸せを感じながらしかし、フラフィーに悩殺された事実の前に打ちひしがれていた。


 しかもここの服うっすらと香水かかってるのかやたら良い匂いするんだよ。女の子の体温で温められると妙な色気が出るタイプのそういう感じのやつの匂いするからほんともう辛い。


 それに今この横にいる二人と既にいたしてるという事実がさらに俺の限界に挑戦してくるから立ち上がる事すら出来ません。


 悶々としているとミカがイリスを引き連れて戻って来た。ああ、やっぱり。


「くくくロリコン戦士、こいつがお望みなんだろう?」


「圧倒的痴女感」


 ミカのキャラクターがどっかに行ってしまっているが正直に言ってその通りでしかない。こいつを望んで止まない男子達の叫び声が頭の中で大合唱する。


 気分は学園祭に巷を賑わしてるアイドルが飛び入りで水着で登場したかのような大興奮。ミスコンが行われ学校一の美女が褒めたたえられ熱狂していてもそこにアイドルを放り込んだらどうなるか。


 さらなる熱狂に包まれ会場は大盛り上がりと同時に大惨事。かなりの不祥事が起こってもおかしくないほどの暴動が起き始めるだろう。


 男子は今まで褒めたたえていた女子からアイドルしか目に入らなくなり、次の日からは学校中の女子と男子の戦争が行われ学級崩壊。先生たちは暴動を抑えるために多数の犠牲者を出す。


 そこには死者も生者もない。ただ亡者が存在し性別の異なる生命体に対して罵詈雑言を吐き出す魑魅魍魎となってしまうのだ。


「はっ!」


 あかんトリップしてた。


「キミヒト、これ気に入ったの?」


 イリスが下から見上げてくるが理性を保つ方法が俺にはもうわからない。不屈を全力で発動させているがこれはたまらない。純粋すぎる欲望が俺の体を支配し不屈の効力を無効化する。


 俺本来の感情を決して妨害しない不屈だが、今回ばかりはまじで仕事をしてくれないと俺は正気を保つことが出来ないだろう。というか体が震えはじめてるしみんな心配そうにしている。


 ただ一人、ミカだけはドヤ顔をしているが今は放って置くしかないし崇めるのは後でもいい。奴は神だった。俺の性癖を知り尽くしているんじゃあないだろうな。


 スキル『性癖探知』とか持ってるんじゃないかと本気で思うほどのドストライク。正直に言ってこんなピンポイントで性癖抉られるとは思わなかった。


 スクール水着。


 みなさんはこちらをご存じだろうか。年々露出が下がっていき可愛いデザインが増えていく体操服。ブルマが廃止になったにも関わらずしかし水着に関してだけは多く変わらない聖なる存在。


 たとえひらひらが装備されたとしても逆にエロスを掻き立てる魅惑の装備品。男子は直視出来ず、かといって興味が尽きないあの正装。


 学校毎に体操服が違っているのにこれだけは何故か全国統一という陰謀すら感じさせる日本の伝統。


 触ったことがあるだろうか? あのすべすべしていながら布のような肌触りを持ったスクール水着。布でありながら水を弾き、女性の体を全体的に強調し幼い体をしっかり保護するあの水着。


 俺は女の子に着てほしい服装ランキングというものを考えた事がある。たぶん男性諸君のみならず女性諸君にもそういった考えを持った同士は多くいるだろう。


 そこに君臨する第一位がスクール水着だ。


 変態? 今更だろ。


 スクール水着のなにが良いかを語り始めると終わりが尽きないことと、意識がどこかにもう一度飛んでしまいそうなので詳しくは語らないがとにかく良い。


 下着姿と何ら変わらないビキニよりも、肌面積を少なくさせるあの圧倒的な布面積。しかしそれでいながらも水着としての役割を充分以上に果たし俺達に夢を与えてくれるそんな存在。


 今はこれだけ感じられればいい。俺の理性が無くなりそうだ。


 そして第二位にはセーラー服があげられる。


 わかるだろうか、あの薄い布地。元々海兵隊の制服だったというあれは水の近くを連想させる不思議な洋服。あれを学校で女の子の指定服にするという発想は狂人のそれだっただろうが、俺は評価せざるを得ない。


 屈強な男が着ていた洋服を女の子に着せて似合うだろうと考えた奴はたぶん海兵という立場を利用し、彼女にその服を着せたに違いない。


 そして気づいたんだ。これは女の子が着る事によって本来以上のパフォーマンスを発揮すると。


 男は訴えた。この服は海兵隊のものではあるが少しデザインをいじって女性も着られる可愛い服になりえると。当然街の人たちは最初は相手にしなかっただろう。しかし実際に見せられ納得しセーラー服の虜になったに違いない。


 どんな時代背景だったかはわからない。ただただセーラー服の良さを語り継ぐしかないと続けているうちに海を渡り世界に激震をもたらした存在になってしまったのだ。


 俺は勝手にそう思っている。


 ああ。可愛すぎるイリス。


 イリスの服装は今語った二つの装備をマッチングさせた悪魔の装備品だ。


 スク水セーラー。


 ある時話題になったアニメがあっただろう。パンツじゃないから恥ずかしくない、どんなに露出しようがパンツじゃなければいいだろうとそういう考えの奴が。


 うるせえパンツよりもスクール水着の方が最初からエロイんだよ最高かよ。ってなったのを覚えているよ。スカートが無いためスク水の下だけ見えるっていうあの素晴らしい発想はどこからやってきたのだろうか。


 ある偉人は言っていた。


 萌えの極意は着せにあり、と。


 わかる。凄くよくわかる。スクール水着という水の中に入るための装備に外で着るべきセーラー服を合わせるというこの技は匠によって生み出されたパラダイス。


 共に学校指定という正しい服装のはずなのに二つの調和はある種の性癖を発生させるに至ってしまった。誰にも到達できない、これからの時代でもこれ以上の組み合わせは無いのではないかと思わせる神の領域に突っ込んだ脅威の合体技。


 さらにそこにオプションを付与するという悪魔的な発想、そして実践。


 このスク水セーラーとニーソの組み合わせは中々に難しいものがあるが、それはイリスの魅力によって見事に調和を奏でるに至ってしまった。


 ミカの趣味なのかもしれないがここはいい仕事をしたと褒めねばなるまいと固く心に誓う。


 本来であれば俺はスク水セーラーを着せた場合は素足が好きだが、イリスの銀髪と幼い体には過度な露出は逆にエロ度を下げてしまう。


 それをニーソという、水着に全く合わないはずの装備品をぶつけることで見事に性的なエロスと健康的なエロス、そして俺の性癖にマックスにぶっ刺さる凶器となってしまった。


「キミヒト、生きてる?」


 俺は過呼吸気味になりながらなんとか返事を返すが言葉にならなかった。


 だって服装だけでもやばいのに髪型編み込みにまでなってるんだもん。


 ロングの髪は姉妹共々だが、ツインテールのクロエとは違いイリスは普通に下ろしている。どちらも大好物なので毎日最高の日々を送らせてもらっていた。


 だが編み込みは刺さる。左右に編み込みを作ってそのままロングの髪型を維持するのわかるだろうか。


 あれは清楚さを出すのにかなりの威力を持っているが、この今のイリスの服装に合わせると破壊力はけた違いに跳ね上がる。当然俺はその破壊力によって死ぬ。


 過呼吸にもなるよそりゃ。


「俺は今日、死んでもいい……」


 感極まりすぎて涙が出てきた。

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