第97話 たまには勝ちを譲って

「ロリコン戦士よ、こちらはいかがかな?」


 ミカが奥からフラフィーを連れて戻ってきた。ミカはやはり嬉々とした笑顔で、しかしフラフィーは少し不思議そうにしていた。


「今回のはちょっと地味ですね?」


「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!」


「キミヒトさん!?」


 フラフィーがふざけたことを言ったので思わず叫んでしまった。いやこれは俺は悪くない。この服が地味だったら世の中の童貞諸君は一体どんな服装に劣情を抱くべきなのかと問い詰めなくてはならなくなる。


 世の中には童貞を殺す服というものがある。しかしこれはひとくくりにされてはいるがその中でもいくつかのジャンル分けがなされ、その中でも一際強い人気を誇っているのが清楚系だ。


 そもそも童貞というものは処女性を大事にしすぎるあまり清楚な服装を好む傾向にある。そのためいわゆるガチエロよりも清楚な女性に興奮を覚えると言う悲しい生き物だ。


 俺だってそうだった。だからこれに関しては色々とあるが討論したいならいくらでも受けて立つと言う心意気をもって俺は覚悟をしている。


 そして今回のフラフィーの服はガチエロ系ではなく、そういった清楚系の童貞を殺す服になっている。


 白と黒のツートンで占められているこの清楚感は他の色では絶対に出せない貴重なカラー。そう、メイドが好んで使うような落ち着いた色の中にありながら何故かそこに存在するエロス。


 そこに天才たちは目を付けてしまった。


 メイド服では隠れすぎ、しかし出し過ぎると失われてしまう清楚な印象。こちらを立てればあちらが立たず、かといって妥協をするにはあまりにも惜しい存在感。


 ならば上下で別にしてみてはどうか? ある日天才たちは正解を導き出した。


 上は動きやすく機能美に溢れ、露出が少ないながらも白色という犯してはならない純白のブラウス。そこに女性の象徴たる大きな胸を内に内包することによってさらに際立つ背徳感。


 さらには首から下がる細い緑色のリボン。これがあることによってワンポイントの協調を行い可愛らしさと美しさ、そして何より物足りないという感情を置き去りにするおしゃれを表現している。


 そして下半身は膝丈の長さのスカート。これがかなりいい。


 腰をベルトで固定したかのようなかっちりとしたスカートでありながら、その実胸を支えているだけなのではないかと思わせる半端ないエロス。


 ボタンでしっかり留めていながらも、だからこそ簡単に取り外せるのではないかと思わせる機能美。脱がせてみたいという清楚とは真逆の欲望を感じさせる。


 恐ろしいことにこのスカートは下から胸を持ち上げ強調するだけでなく、サスペンダーのような肩紐を搭載し横からも胸の形を強調するハイパースペックだ。


 俺には詳しくわからないがきっと形を整えるとかそういう意味合いがある部位なのだろうが、この場合はそこはかとないエロスの調和を生み出す。


 さらに特筆すべきはなんといっても絶対領域を生み出すニーソックス。


 これがあると無いとでは天地の差がある。ソックスで隠しているはずの足が少しだけ見えるスカート下の絶対領域から想像されるのは太ももの柔らかさ。


 ニーソックスにより締め付けられ、太ももの柔らかさにより思わずはみ出してしまいソックスに乗り上げる肉の柔らかさは筆舌に尽くしがたい感動を覚える。


 ニーソックスとスカートの間に生み出される領域はまさに不可侵の領域。しかし不可侵でありながら映し出されるのは無防備な肉体。


 ほんの少しだけ見えるからこそ生まれる覗きたいという気持ち。反応してしまうのはいけないことなのだろうか。いいやそれは断じて否だ、脊髄反射のごとく人はチラリズムを求めてしまう生き物なのだ。


「ミカよ。内側はどうなっている?」


「もちろん、ニーソを支える紐完備です」


「パーフェクト……」


 やはりガーターベルトをチョイスしているあたりミカはわかっている。いやわかりすぎている。ミカがいればきっと俺のパーティは恐ろしいほどのクオリティに仕上がってしまうだろう。


 何てことだ。女神の加護はこれだったのかもしれない。


「キミヒトさんが怖いです……」


「信じられないほど感情高ぶってるわね……」


「お姉ちゃんが魅了かけた時みたいになってる」


 ロリ達が何か言っているが俺はフラフィーに夢中になっていた。あかんわこれまじスーパー可愛いどうしよう。この服封印してもらわないとフラフィーをいじりキャラとして扱うのとても難しいわ。


 少なくともこの服は俺の性癖に刺さりすぎるからダメ。くそうフラフィーの癖に。


「その服ください」


「まいどー」


 買ってしまうしかない。だって俺には抗う術がないのだもの。どうしようもない。


「ええと……ありがとうございます……」


 フラフィーは俺の豹変ぶりと全くいじってこなかったことに照れてしまいうつむいてしまう。清楚な雰囲気を出すなまじで可愛いからよぅ!


 なんでクロエの魔法少女服買いにきてフラフィーに悩殺さればければならないのか。全く後悔はしていないけど俺これ体持たないよ。


 この後クロエの魔法少女服買うしイリスにも可愛いの買うしどうすんだよ俺死んじゃうんだけどあかんよこれまじで。


「うえへへ……眼福じゃあ……。じゃあ次はイリスさん行きましょうねぇ」


「怖い」


 イリスは着せ替え人形にされてからミカに対して単語しか喋らなくなってしまったが大丈夫だろうか。というかミカが持っていたあの布地はもしかしてアレなのではないだろうか。


「キミヒトさん」


「ぐぬぬ」


「えへへ」


 フラフィーは俺の横に座り俺の事を見つめてくる。今回はイリスが連れて行かれてしまったので片方空いてしまい隣を陣取られた。


 めちゃくちゃ可愛い服着たフラフィーにどうしようもないほど興奮してしまうので俺は何も喋らないことにした。目は口ほどにものを言うってさっき言ったけど、今回はフラフィーに調子に乗られる結果になってしまった。


 ……たまには勝ちを譲ってやるよ。

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