第76話 イリスのオススメ

「そういえばもう追手は来ないって言ってたけど大丈夫なのか?」


 少しごたついていたこととロリコンビが余裕かましていたので気にしないようにしていたが聞いておくことにする。


 居場所もばれているようだしこれから街の人たちにも迷惑になる可能性があるなら移動も検討しておかなければならない。


「大丈夫よ、基本的に襲ってきてたのは人間だから。魔物で人質取ろうって考えるの何て魔王くらいだし真面目に取り組んでるの何て数えるくらいよ。追っ払えばしばらくはこないわ」


「人間汚れてる。でもキミヒトは純粋な汚れ方」


「それって褒められてるんですかねぇ……」


 どうやら二人的には人間の方が脅威度が高いらしい。それだったらこのままケイブロットで鍛えておくのがよさそうだな。


 この街なら種族差別自体もないみたいなもんだし気にする必要はないだろう。というかこの街中だったら俺たちにちょっかい出したらロンドの連中が黙ってないしな。


 強者とのコネの力が強すぎる。それにダンジョン攻略で有名になっちゃったからな、そうそうおかしなことにはならないだろう。


 ギルドに着くとそこはいつも通りにぎわっていた。朝の一番忙しい時間帯をはずしてきているのでめちゃくちゃ込み合っているというほどではないが。


「良いクエストはないかな」


 あかねに聞いていたのでその辺の知識はばっちりだ。クエストの依頼がある掲示板の前に行きなにか良いものがないかを調べていく。


 といっても今日はあたりさわりのないクエストが出来ればいいと思っているので簡単なものを希望していきたいところ。


「キミヒト、これは?」


 イリスが差し出してきたクエストの内容を見てみるとそこにはこう書かれていた。


『精力剤の精製に必要な素材回収。オークの睾丸、栄養剤、レッドスネークの全身、亜鉛、柔亀の全身』


 うん欲しいけどいらないね。イリスも欲求不満なのかな? いや欲求不満だったわこの子。でもガチな素材っぽくてやだなこれなんか。


 しかもこれ採取してさ、こんな幼女連れて納品に行ってみ? こいつロリコンなんだなって思われるしもしかしたら相手も同じ趣味だったりして話が盛り上がるのでは?


 あ、楽しいかもしれない。というか今のおれに必要なのはこういうマジで実用的なものなのではないのでしょうかというこじつけで受けることにするか!


「イリスのオススメならしかたないな……」


「キミヒト、エッチ」


 イリスは本当にやるとは思っていなかったらしくちょっと顔が赤くなっていた。可愛いかよ。クロエもちょっと視線そらしてて萌える。


 なんだよこいつら積極的なのにこういう直接的なの苦手なのかよどうするんだテンションあがってきちゃっただろ! 俄然やる気だわ全力でとりにいく。


 クエスト依頼を引っぺがし受付に言いに行き承諾を得る。いつもの受付嬢じゃなかったので特に話すこともなく出発した。


「じゃあまずは栄養剤からか」


 この栄養剤は簡単、薬屋で売ってる。募集じゃなく買えと最初に思ったくらいである。


 実際に栄養剤を調合したとしても素材自体は簡単に手に入る。薬草と元気茸を調合すればいいだけで、両方とも薬草のダンジョンで入手が可能になっている。


 でもお金が余ってるので時間優先で購入してしまう。


「やってるー?」


「……いらっしゃい」


 ゴンズのところのように適当かまして入ったら冷静に対処されました。それでも反応返してくれたことは非常に嬉しいけど。


 受付の人はいかにもな恰好をしていて、魔女といえばこれ! みたいな全身黒づくめのとんがり帽子スタイルだった。調合師とか薬師じゃないんかい。


「栄養剤が欲しいんですけど」


「……はいこれ」


 カウンターからごそごそと取り出して目の前に置く。なんで陳列されてないのか小一時間問いただしたいところだが手っ取り早いので特に文句はない。


「ありがとうございます」


「……今話題のキミヒトっていう冒険者?」


 魔女子さんは俺の顔をじっと見ながらそんなことを言い出してきた。あれ、名前は有名かもしれないけど顔はそんなにばれてないと思ってるんだけど。


「そうですけど、なんですか?」


「……なんでもない。幼女連れてるって聞いてたから聞いただけ」


 さいですか。いや確かに幼女連れてる冒険者って目立つよな普通に考えて。それだけ特徴あればそら本人だってわかっちゃいますわな。


 別の意味で有名人になっていきそうだわ。


「そうか、何か必要になったらまた買いに来るからよろしくな」


「……待ってる」


 なんか敬語使うのもおかしいなって思ってフレンドリーに接したらフレンドリーに返された。敬語使うのも場合によりけりって感じの世界だな。


 買い物が済んだので二人の元へ行くとクロエはちょっと冷めた目をしていた。


「また女の子だからって口説いたの?」


「キミヒト、最低」


「普通に買い物しただけだよ!? あれのどこが口説いてる風に見えるの!?」


 俺をちょっとからかっただけなのか、二人は左右に移動し俺の手を握ってきた。クロエは普通に、イリスはちょっと嬉しそうに。


 普通に手をつないで良いか聞けばいいだけなのにからかった勢いで手をつないでくるとか可愛いかよ。これからは三人で手をつないで歩くようにしようかな。


 そんでフラフィーをみんなでスルーして泣かすまでがテンプレかな。


 必要なものは俺の収納に入っているのでまずは簡単な柔亀でも狩りに行きますかね。生息区域は水のダンジョンの最初の階、難易度もCのダンジョンなので俺達だけで入ることが可能だ。

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