第63話 限界ぎりぎりに
あまりに殺意の高すぎるイリスに俺は質問をせざるを得なかった。
「なあイリス、何か恨みでもあるの……?」
「どうして?」
俺の質問にどう考えてもありますという顔をしながら問いかけてくる。イリスの行動が読めなさすぎてとても怖いけど嫉妬の色が見えてちょっと可愛い。
やってることはまったく可愛くないけど。
「俺の事殺そうとしてない……?」
「限界ぎりぎりに生かそうとしてる」
「それ意味一緒だからね」
どうやらご立腹の様です。思い当たることは……クロエとフラフィーの事だろうか。
そういえばイリスに助けてもらって呪い解いたのに何もお礼してないな。そしてクロエと先に肉体関係を築きフラフィーに結婚指輪。
これは俺が悪いですねぇ。殺されても文句言えないわ。
「最初に一緒に寝たのは私なのに」
そこの話だよね。間違ってなくてよかった。たしかに正気に戻った直後イリスと一緒にベッドで寝てたな。やばくなったから脱出したけど。
「なんだかさみしかった」
「すまん」
イリスを優しく抱きしめて頭をなでる。これで機嫌が直るとは思わないが、嫌がらないので続行する。触れているからこそ伝わる気持ちはある。
「おねえちゃんと先にした」
「そこは解決したんじゃないの?」
「するわけない。ああ言ったけどおねえちゃんもキミヒトもどこか行っちゃったみたいで悲しかった」
あぁそうか。何も感じてないように見えたのはそう繕っていたからか。務めて無表情にすることで俺たちが遠慮しないように。優しい子だよなやっぱり。
さっきまでの殺意ましまし行動がなければ素直にそう思える。
「それにフラフィーに指輪あげた。そのことは良いけど左手の薬指は問題行動」
「それは……うん、悪かったよ」
イリスが取ってきたアイテムで作ったとても可愛い指輪。装備としてなら許容してくれてたけど流石にあれは問題だったね。
自分で言うのもなんだけどもうちょっとやりようあっただろっていうね。
「私にも何か特別なことしてほしい」
「うん、考えておくよ」
首輪でもつけてめちゃくちゃ可愛がりたい欲求に駆られるわこの子。庇護欲と性欲が同時に刺激されてくるから本当にやばい。
色っぽいセリフと少し湿った声、そして最高のロリボディ。俺の理想がここにある。
「じゃあ次はあれね」
「……ええと」
「あれね」
「……はい」
その後数時間俺は絶叫系を乗り回され続け、この世界に来てから一番死の恐怖を感じたことをここに明記しておく。
アトラクションが壊れた回数は三回。大ダメージを受けプリーストの人が回復してくれたからなんとかなったもののそのうち一回は意識を手放している。
そうか、そういえば言っていたな。「そういえばキミヒト、打撃じゃ死なないんだっけ?」というクロエのこのセリフに対して。
「お姉ちゃん、任せて」
と。なるほど、空中と地面どっちがいいとはここの事だったか。下調べまでしていたとはお手上げだよ。
そして俺はふらふらになりながらイリスにアトラクションに詰め込まれた。最後に立ち寄ったところでもアトラクションの破壊が行われ、また俺は意識を失い後日出禁を食らうことになった。
「散々な目にあった」
「キミヒト、反省した?」
「あぁ……」
イリスにこそ反省してほしい気持ちでいっぱいである。でも俺が悪いことも確かなので反論することは出来ない。つらいよ。
宿屋に戻り恐怖で精神をすり減らし続け完全に疲れ切っていた。イリスと一緒にいるだけで今日のことを忘れることは二度とないだろうな。
「じゃあ、お姉ちゃんたち戻ってくるまでいちゃいちゃしよ」
「くっつくだけならいいぞ」
ベッドでごろごろしてイリスをあやす。あー癒されるわ。イリスに恐怖を味合わされてイリスに癒される。うーむアトラクションのとこもそうだったけどマッチポンプがすぎるぜ。
「クロエの髪もそうだったけどイリスもサラサラだな」
姉妹だからかよく似ている手触りだった。とても綺麗で触り心地がサラサラ。長い髪って言うのも俺の好みにジャストフィットしてくる。
「今はお姉ちゃんの話はだめ」
「はいはい」
「むう」
なんか甘えんぼになってしまったなイリス。愛おしさがあふれてしまって性欲が洗い流されるレベル。ごめん嘘ついた触られると性欲刺激されます。聖人君子じゃないので。
「そういや二人はどこに行ったんだ?」
「ゴンズさんとこ」
おお、イリスが魔術でどこかにやったわけじゃなかったのか。めちゃくちゃ安心したわ。さっきまでの行動から二人も何かしら食らってたと思ってたわ。
それにしても何故にゴンズのところへ。
「この前作れなかったアクセサリー、作りに行った」
「あー、そういえば耐性系のアクセサリー作ろうとしてたな。二人が行ってくれてたのか」
そういえばあの時はお金が足りなかったからやめたんだった。でもミスリルのダンジョン攻略してお金が入ったから作れるようになってたわ。
攻略したことの嬉しさですっかり忘れてた。クロエあたりが気を効かせてくれたのだろうか。
「みんなでおそろいのアクセサリー、する」
いやこれはイリスかな。寂しそうにしているイリスが提案して二人がイリスに俺を預けていった感じだろうか。
パーティ内がギスギスしていないようでなによりだ。めちゃくちゃ心温まる。
「ああ、俺たちはパーティだからな。これからもずっと一緒にいよう」
「うん、ずっと一緒」
こうして俺は文字通り死の淵から這い上がりイリスの機嫌を直すことに成功した。
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