第61話 異彩を放っていたあの場所

 女神は一時間経っても全く起きる気配を感じさせなかった。熟睡である。


 寝るためだけに俺という信者をここに強制的にしばりつけ、ぐっすり幸せそうに寝る女神様。その寝顔は美しく神々しいが、空中にただよい寝そべる姿はどうにもだらしない。


 俺は仕方なく新しいスキルを確認していたがめぼしいものは特になかった。チート的なスキルはもともとポイントが高そうだし俺には適正がほとんどないようだ。


 飛行とか属性付与とか遊び要素もあるスキルあれば取りたかったんだけどな。


 片っ端から調べてもどうしようもなかったので俺は女神を放置して帰ることにした。金縛りは俺が了承した時には解けていたので椅子から立ち上がる。


ロリ達も待ってるだろうしな。長居しすぎるのもよくない。 


「じゃあ女神様、そのうちまた来ます」


「……はーい、おやすみなさい。これ感謝の気持ちですー」


 完全に寝ていると思ったが、女神様は寝言のような感じでひらひらと俺に手を振った。何か温かいものが流れてくるのを感じる。


「『看病』のスキルですー。怪我は治せませんが、病気なら大抵治せますよー」


「まじですかありがとうございます女神様」


「こちらこそー」


 これはチートではなかろうか? 簡易エリクサー的な。いや怪我治せないからそこまで万能じゃなさそうな気もする。でも風邪とか体調不良治せるんだったら冒険する身としてはこの上なくありがたいな。


 女神様まじ素敵すぎる。これでロリの看病するときは俺に任せておけ状態だな。熱に浮かされている幼女を俺の力で治してやるぜ。


 女神様は俺がいなくなるまでずっとふよふゆ漂っていたが、俺が教会からでるとその姿は消えてしまった。やはり姿を現せるのは教会限定なのだろうか。


 教会を後にした俺は思わぬ嬉しい加護に心を躍らせていた。結構時間が経ってしまったがロリ達は何をしているだろうか。ナニをしているかもしれないが。


 クロエの吸血の影響が残っていてそこにさらにイリスも混ざっていた。二人のお仕置きによってフラフィーがどんな末路をたどるのかはさっぱりわからないがろくなことにはならなさそう。


 ひどいことになっているような気がする。あ、でも体調悪かったらこの看病スキル試せるから良いかもしれないな。


「ただいまー」


「キミヒト、おかえり」


 みんなの部屋を訪ねてみたがそこにはイリスしかいなかった。クロエとフラフィーは俺の部屋か……?


「お姉ちゃんとフラフィー、おでかけ」


「そうか、じゃあイリスと二人きりか」


「うん。二人ともどこか行っちゃったからね」


「……」


 もしかしてイリスなにかした? 昨日のクロエを見習って邪魔者はとりあえずどこかにやっておこう理論が発動したとかないだろうな?


 イリスだから普通にあり得そうで怖い。フラフィーは包丁もって襲い掛かってくるだけだからわかりやすくて良いけどイリスはトリッキーなことしそうな雰囲気あるからな。


 包丁で襲ってくるのは別によくはないけどこれはこの際置いておく。看病スキルで病んでるの治せないかなまじで。


 しかしもしも二人をどこかにやったりしてたらこのロリ物騒極まりないな。いやこのロリというかロリ姉妹二人ともだが。片や薬を盛り媚薬みたいな吸血行為、片や邪魔者をどこか遠くに排除する。


 愛なら仕方ないね。


 そういうことにしておこう。


 まともなやつ誰もいねぇな。


「キミヒト、デートしよ」


「おお、おおお……」


「キミヒト?」


 物騒なこと考えてたから急に可愛すぎて死ぬかと思ったわ。イリスのこのちょこちょこした仕草まじたまらんわ。そしてこのおねだりのセリフの破壊力よ。


 どうしてロリはこうやって俺の心をかき乱してしまうのか。上目使いしながら服を遠慮がちに引っ張るとかもう何もかも許してしまう。


 たとえこの状況を作り出すためにわざとやってるとしてもそれはそれで問題なし! あざとさを武器にし続けて翻弄してくれるならいつまででも翻弄されていたい。


「もちろんいいぜ!」


 なので当然のようにイエス。テンション高まりすぎて言葉につまったけど頭を撫でることでその時間を消費することに成功する。まじ可愛いな。


「キミヒトは、行きたいところある?」


「あるぜ、本当はみんなで行こうかと思ってたけどデートのお誘いだからな。この際二人で楽しんじゃおうぜ」


 この街に来た時に教えてもらったデートスポットっぽい場所。こんなダンジョン街にありながら異彩を放っていたあの場所。


 実際に中を見たことはないが初心者でも問題なく安全に楽しめると言っていたし、軽く装備をしていくくらいで丁度いいだろう。


「キミヒト、話がわかる。もしかしてその場所ってあそこ?」


「ああ、たぶん同じところ想像してると思うぜ。いくかあの場所に」


 イリスもあの時反応していたから行ってみたかったんだろうな。という俺も盛大に突っ込みを入れていたしかなり気になっていた。情報を教えてくれたティティには感謝しておかないとな。


 俺とイリスはわくわくの気持ちをかかえながら目的地、アトラクションのダンジョンに足を進めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る