第8話 ロリータ達との会話
街に着くととりあえず二人を休ませるために宿に案内しようと思ったがその提案は却下された。どうやら二人とも俺から離れるのが嫌らしい。
というのは冗談で街の中を見てみたいというのが本音のようだった。最初は二人きりにしてしまうとまた狙われるのが怖いのかと思っていたがそんなことは杞憂だった。
というか戦闘力だけだったら結構高いと思われる。街に戻ってくる際に何回か戦闘を挟んだが妹の方の魔法だけであっさり戦闘が終わったのには驚いた。まじでなんで捕まってたんだこの二人。
「この街のギルドはどこにあるの?」
「ああ、この街のギルドは中心街にあるよ。文字通り街のど真ん中に存在してる。有事の際には逃げ込むことも出来るように地下に施設とかもあるみたいだ」
「へぇ……そうなんだ」
なんだか少し含みのあるような言い方だったがなんだか楽しそうだったのでギルドまでの道を説明することに従事した。
ここは鍛冶屋だの武器屋と仲が良いだの、小さい子ども達もギルドでちょっとしたお小遣い稼ぎの仕事もあるだのたわいのない話をしているうちにギルドにはすぐに着いた。
ロリータたちとの会話はオアシスでしかない。現実だったらこんなに可愛いロリと知り合いになってたら逮捕案件だからな。凄く疲れていそうな女神様に感謝しないといけないな。
「じゃあこいつら連れて報告行ってくるけどクロエとイリスはどうする? 中の見学でもして待ってるか? それとも外で待ってるか?」
「絡まれても面倒だし一緒に行くわ」
「キミヒトのボディーガード」
「それは心強い」
精神安定的な意味で。
ここに来るまでに、というか街の中に入ってからかなり見られてもいた。なぜかというと銀髪ロリータコンビは非常に目立ったからだ。ついでにケバイ女二人もいるから大所帯だっていうのもある。
なのでフードの着いたローブを二人に着せてなんとか誤魔化しながらここまできた。というかもしかしたら俺がいつも一人なのに複数人で歩いているのが珍しいのかもしれない。
ギルドの中に入ると相変わらず盛況だった。ギルドは食事処も併設していることもあり朝だろうが夜だろうが関係なく人が多くいる。だから俺は情報収集や人付き合いを増やすために結構な頻度でギルドには足を運んでいる。仕事はしていなかったが。
そのため受付嬢のほとんどと知り合いだったりするのだが、最近はよく話しかけられた。
「キミヒトさん、また冷やかしですか」
そう、勇者召還されたにも関わらず勇者たちはギルドの仕事をほとんどしていない。というのも魔王と戦えるだろうスキルを持っている連中はダンジョン攻略や、かなり割のいいみんなやりたいような危険な仕事を持っていってしまう。
さらに魔王と戦うには厳しいと判断された俺のような元勇者たちは俺をのぞいて旅立ってしまった。
せっかくギルドから通常は数年かかってようやくなれるくらいのギルドランクを特別待遇でもらったというのに誰もここで貢献しなかった。
つまり何が言いたいかというと、残ったお前は何をしているんだ? 残って何もせずただいるだけなら迷惑なんですけど? というわけだ。
「いや今日は真面目に仕事してきたよ、ロゼッタさん。事後報告になるけどお願いしていいかな?」
俺に話しかけてきたのは受付嬢のロゼッタさん。目はキリっとしていてややきつそうな印象を受けるが美人なのでそれなりに人気がある。主にいじめられたい願望の特殊な性癖をお持ちの方々に。
「え!? あの実力があるにも関わらず何もしないで散歩ばっかりして誰からも役立たずのゴミ勇者と罵られても平然としていたあのキミヒトさんが!?」
こんな感じで罵倒してくるが、たまに可愛かったりするので俺も結構この人が好きだったりする。というか敬ってこない姿勢に好感が持てる。
元勇者だと知っている受付嬢は一歩引いた感じで接してくることが多く、他の冒険者に比べて明らかにへりくだった物言いをしてくる。だからこそ俺はギルドの仕事をやる気にならなかったって言うのもあるが、ロゼッタさんがいるからやってやるかという気持ちになったのもある。
「そう、最近盗賊被害が出てたでしょ? このクエストなんだけど確認してもらえるかな?」
そう言ってクエストの紙と討伐証明の剣を渡す。てか今確認したけどこのクエストのランクたけぇな。この前もっと低かっただろ。
「……キミヒトさん、話は奥で伺います」
ロゼッタさんは声を低くして付いてくるように言ってきたので素直に従う。その際残りの銀髪ロリとケバイ二人も連れて行く。
「キミヒトさん。あなたはやってくれる人だとは思っていましたがやってくれましたね」
「ええ、暇だったもので」
「……」
ちょっと真面目に褒めてくれたのに本音を言ってしまった。この人相手だとどうしても力が抜けて本音で話してしまう。
そのまま別室まで連れていかれロゼッタさんはギルドマスターを呼んできますと席を外した。そのまま待っているとノックが数回された後にギルドマスターが顔をだした。
「キミヒト、お前がベイルを倒したというのは本当か?」
「ええ、そのクエストの事を言っているならそうです。盗賊の頭の名前がベイルっていうのは初耳ですが。これが討伐証明の剣と側近の二人です」
そう言って剣とケバイ二人を差し出す。
ギルドマスターは少し驚いた風だったが剣を魔法で鑑定していく。この世界のギルドはクエストをクリアしたかどうかは魔法で確認が出来るためそのチェックを特別な魔道具で行う。
簡単な、というと失礼だが難易度の高くないクエストは簡易術式で受付嬢が使えたりするが難しいクエストになるとこうやって特別なアイテムを使って確認したりする。
「確かにこれは本物だ。ベイル本人が使っていた剣に間違いない。この二人も側近って話だったが……なんでお前に従順なんだ?」
「俺にもわかりません」
「……その二人は人形よ」
俺たちの会話に横やりを入れてきたのはクロエだった。
「どういうことだ?」
「聞かれなかったから言わなかったというか気づいてると思ったから言わなかったのだけど、その二人はマスターと認めた人物の命令に忠実な人形よ。あんまり出来が良くないからちゃんと命令しないと動かないみたいだけど」
「自動人形か。お嬢ちゃん、詳しいな?」
どうやらクロエはこの人形の正体を知っていたらしい。どおりで目に生気がないわけだ。生きてないんだもん。
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