第7話 萌え袖の何がいいか
「お姉ちゃん、どうするの?」
髪を下ろしているほうのロリータがもう一人のツインテールロリの服をつまんでちょいちょいと引っ張っている。なんだこれ可愛すぎかよ。
「ちょ、ちょっとまって。抵抗されてるんだけどなんかすごい気持ち悪い」
俺は現代にいる時にも思っていたけど、がっつり手を握っていイチャラブしているよりも袖をつまんで恥ずかしそうにしている女の子の方が好みだったりする。
「? 私は感じないよ?」
いやがっつり手を握って恥ずかしそうにしている女の子もめちゃくちゃありだしなんだったらルンルン気分でテンション高めなのも大好きだ。
「なんていうのかしらね、普通この魅了にかかったら好意よりも忠誠が高くなるから逆らえないの。でもなんかこいつ、好意と忠誠の割合がおかしいというか好意の値が最初から高すぎるというか……」
しかしそれでもこう控えめな行動を取る女の子ってやたら可愛く映らない? 服装で言うなら萌え袖の女の子。
「それって一応成功してるんだよね? 何かまずいの?」
萌え袖って伝わるか? 萌え袖の説明として手の甲まで覆うやつと手全体覆う奴の二種類があるけど俺が認めるのは手の甲まで隠してある奴。全体隠してるのは萌え袖じゃなあなくただダボダボの服着ているだけだ。可愛いけど。
「まずくは……ないんだけど……こんな変な感情向けられたことないからすごく気持ち悪い」
萌え袖の何がいいかって指先しか出てないから何かする時にもちまっとした行動を取らざるを得ない所とか、さっきも言った手をつなぐときにも指先でつまむとかそういう所がたまらないよね。
「大丈夫? もしかしてこれ以上魅了する相手増やすとまずい?」
あとはそうだな、控えめな行動とはちょっと違うかもしれないけど移動しようとしたときに服のすそとか引っ張ってこっちの行動阻害してくるやつ。上目遣いだと尚良いよね。
「それは大丈夫……と言いたいところだけど毎回こんなやつだったら最悪かもしれないわね……。こんなに好意が高いんだったら魅了必要ない可能性もあるわ」
ゲームとかアニメだと玄関先で出かける時に引っ張ってこういうシチュエーションよく見るけど毎回悶絶クラスだから正気を保つのがとても難しい。アニメとか真顔で見てるけど精神崩壊してるよね。
「そうなの? 私にはよくわからないけど」
しゃああああ行かないでいただきましたああああああ!! みたいな。
「人っていうのは、基本的に初対面の人間に好意か無関心か悪意を抱くものなのよ。そして好意を持つ場合なんてかなり限られてるわ。私たちなんて捕まってるから誰にあっても好意なんて抱けないし、またきたのかっていう無関心か悪意くらいしか持てない」
あとあれだ、後ろから飛びつかれるのもたまらないよね。普通はタックルされたら吹っ飛ぶけど、なんとか耐えられるっていう所から体重の軽さや体の小ささが伝わってくるのがものすごく良い。
「でもこいつの場合、私たちに悪意無しで全開の好意を向けて来てるから異常なのよね。強い下心とかあればこんなことにはならないはずなんだけど……」
自分の強さってやつを良く分かってると思うんだ。ロリってやつはどうして俺を狂わせてしまうのか。なんて罪深く慈悲に溢れた存在なんだ。もうロリが神で良い。
「じゃあ解いてみる?」
「ちょっと怖いけど……」
ああ、前の二人が何か喋っているけどなんだかぼんやりしていて上手く聞き取れないな。さっき名前聞いたけど答えてくれたんだろうか。聞き取れてなかったらごめんねロリ達。
「じゃあ、一応警戒しててね。解除」
突然視界というか感覚がクリアになった。なんだ?
「あなた、ええとキミヒトだったかしら。あなた何者なの?」
ツインテールロリが俺に声をかけてくれたので、感覚がおかしくなっていた違和感をなんとか無視してそれに応える事にする。ロリータを無視することなんて俺にはとてもできない。
「俺は一応冒険者なんだけど、そうだな話すと長くなりそうだからとりあえず脱走しない?」
「無理よ、この檻はかなり頑丈だし物理的な魔法も効かないわ。鍵もないし特別な方法を使わないと開けられない」
「私たち、結構強い」
どうやら二人は不意打ちか何か食らって捕まったらしい。その辺の事情もおいおい聞いていきたいところだけど俺に壊せないものはあんまりない。
「やってみないとわからないだろ?」
俺は二人が何か言いたそうなのを無視して近くに転がっている金属の破片を手にする。それをトオシを使って檻の鉄棒の上下に無理やり挟ませ解除すると鉄棒がカランと外れた。
「え……? 何したの?」
「すごい魔法……魔法?」
ロリータ二人が凄く驚いているので俺はとても満足した。ロリの驚いている顔とか見てると幸せな気持ちになる。いやどんな表情だろうとロリの顔見てるだけでだいぶ幸せな気持ちになる。
こいつらほんと可愛いな。まじで助けてあげないとな。
そのまま二人が出られるくらいの本数の鉄棒を外してやるとおずおずと二人は檻から出てきた。
「あ、ありがとう。あなたすごいのね」
「キミヒト、ありがとう」
「どういたしまして」
お礼を言われた。生きる活力が異常な程沸いてくるな。
「さて……えーと」
「私はクロエ。こっちはイリス」
どうやら姉のツインテールがクロエで髪を下ろしている方がイリスというらしい。二人ともぺこりと頭を下げて言ってくるあたり良い所のお嬢様なのかもしれない。
よく異世界転生物とかだと戦闘力のあるゴスロリはお嬢様って設定多いし、二人を見てると何かしら気品のような物を感じなくもない。
「うん、クロエとイリスだね。よろしく。じゃあ脱出しようと思うんだけど」
「その前にその二人はどうしたの? たしかここのボスの側近か何かだったと思ったけど」
クロエが聞いてきたのでここに入ってからの事をぱぱっと説明してあげる。と言っても普通にボス部屋突っ込んで普通に倒したって事だけだけど。
「キミヒト、強い」
「よく倒せたわね。あいつ結構な額の賞金首なのに」
でも俺は召還された勇者の中ではあんまり強くないんだ。対人とかならかなりやれるけど魔物に囲まれたりしたら逃げる事は出来るけど倒す事はできない。
「おうありがとう。その時放置は微妙な気がしたんだけど置いてった方がいいのかなこれ」
「その状態みると別に連れてっても良いんじゃない? ギルドに預ければ討伐証明にもなるし」
なるほど、確かにお頭の側近だったなら討伐証明にもなるか。とりあえず剣はかっさらってきたけど二人が認知されてるなら確実かな?
「そうだな、じゃあ残りのやつらにばれない様にこっそりいこう」
「その必要はないわ。全部操り人形になってるから」
「え?」
クロエの言葉に驚いていると、クロエとイリスの二人は出口の方に歩いていってしまった。
「はやくいくわよ。お腹すいたし」
「お、おう」
二人の後をついていくと本当に誰にも邪魔されなかった。出る時に残りの盗賊を見てみたが全員やる気なく過ごしていた。側近の二人のように目に生気がないわけじゃないけど何にもやる気が感じられない雰囲気だった。
そして俺たちはそのまま森を抜けて街に戻っていった。
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