第3話 だから俺は反撃することが出来た
「一人旅とは気楽なもんだなお兄さん」
見るからに全うな生活はしていませんという服装をした男がこちらに向かって声をかけてきた。
既に抜刀していてこちらを威圧してくるように剣の切っ先をこちらに向けて揺らしている。
「そりゃ一人旅は気楽だろうよ。俺達みたいなのがいなければな」
「ちげえねえ! わっはっは」
後ろからもう一人現れて退路が塞がれた。振り返ってみるとこっちの男は冒険者から装備を奪ったのか、それなりの装備をしていた。
そちらも当然のように抜刀しているが、余裕の笑みで肩に担いだりしている。
「さて、状況はわかるだろ。持ち物全部置いて逃げるか、殺されて奪われるかどっちがいい」
最初の男が問いかけてくるがどう考えても逃がすつもりはないだろう。
盗賊が出ると言われているこの森の中でも詳しい場所はギルドでもまだ情報はなかった。
つまり、襲われた人達は情報を持ち帰れていない事がわかる。この森は基本的に強い魔物はほとんどいないし、役に立つ薬草類も多くないため人があまり入らない。
そのため帰ってこない冒険者や商人の話からこの森には盗賊が出るかもしれないと言う話になり依頼が出るようになった。
その後冒険者は何人か行ったようだが、帰っては来なかったようでその旨も記載され、確実に盗賊が出ると言う情報に変わった。
本来なら冒険者登録して日が浅い俺のような人物は受けられないが、召喚されて能力があることと、更には少し口利きしてもらったのもあって俺のランク自体は結構高くなっている。
でも一人で行くと確実に止められるから依頼は受けずに内容だけ確認してきた。
ギルドの依頼は受注して受けるのが基本だしこの盗賊討伐の依頼も本来だったら受けた方が間違いが起きづらい。
しかし盗賊等そこに本当にいるかどうかわからないものの場合は受けなくても報酬はちゃんとでる。
それに一人でやった方が効率良いし、受付であれこれと時間食ってめんどくさいのも嫌だから事後報告でも良いでしょというノリでやって来た。
「おいおい黙ってるってことは殺されたいみたいだな!」
何も反応せずにいると、最初の男が挑発してきて装備がきっちりしている方が襲いかかってきた。
注意を引き付ける方と攻撃する方が別々で、こういうことをやり慣れてるんだろうと思うくらいには自然な動きだった。
だから俺は反撃することが出来た。
「っ!?」
装備の隙間に短剣を刺し込み相手の胸から血がにじみ出できて口からも血を吐いた。そしてそのまま倒れて動かなくなった。
「お前何しやがった!」
不自然な動きをした俺を警戒しながら仲間の様子をうかがっている。すぐに襲ってこないしなんだったら逃げようとまで考えているように間合いを図って移動している。
仲間の事が心配な訳じゃなくどうしてやられたのかを考えているのかもしれない。装備差もあるしもしかしたらあんまり仲良くはなかったのかもしれない。
一定の距離を取って警戒しているようなのでこちらから声をかけることにした。
「お前にはアジトを教えてもらう」
「言うわけねぇだろが!」
さっきとはうってかわって素早い動きでこちらに攻撃してくる。上から切りかかるように襲ってくる攻撃をそのまま動かずに対処する。
「は?」
その攻撃は俺に全く触れることなく地面に叩きつけられた。相手からしたら確実に頭を真っ二つにしたと思っただろう。
しかし実際は当たらず通り抜けた。
その隙を逃さず、相手の肩口に短剣を突き刺すと相手は剣を落とし絶叫する。
「いてえええええ!!」
剣を拾うと相手の喉元に突き付け、もう一度言う。
「お前にはアジトを教えてもらう」
ダメージが利いているのか殺されるのが怖いのか涙目になりながら相手は頷いた。
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