エピソード2
驚くことに視界に現れたのは、ジークスではなく、ディヴァインタイプの未知の戦闘機だった。
180度左右にロール、上下を元に戻すと、大きく左に旋回して敵機の後方に回る。
「少尉!見たか?」
「見ました!」
AIの識別コードを改めて確認するレイジ。
「識別コード不明、パターンX011、確率84.07%」
「AIはジークスだと言ってるな」
「ガンマともデルタとも違うようですが、明らかにディヴァイン・タイプの戦闘機でした」
「変形機構のない初期型のようなフォルムだったな」
「自分にもそう見えました」
「ジークスがディヴァインに偽装しているのか…?」
「ロックオン!どうしますか?」
「待て…僚機だとすると味方を殺すことになる…」
「既に我々は攻撃されています!味方なら撃って来ないのでは?」
「先に攻撃したのは我々だ…」
レイジがトリガーに指をかけたまま命令を待っていると、敵機は突然大爆発を起こし、その衝撃波で機体が錐揉み状態となる。体勢を整えると大きくターン。二人は方々に拡散していく破片の軌跡を目で追う。
「自爆……一体どういうことなんだ…」
基地への帰投後、クリゲンバーグ司令に呼び出されたレイジとダリル。
「ディヴァインのレコードを確認したところ、当初AIは各種観測データからあの物体を99.2%の確率でジークスと判定していた。しかし、有視界に入った後の画像解析に限っては45.03%の確率でディヴァインと判定しており、君らの報告と大部分は一致することがわかった」と司令。
「やはりそうでしたか…」
「しかし、この事実をもってジークスがディヴァインに偽装していたと考えるのは早計だ」
「!?…では、あれは何だとおっしゃるのですか?」
「いいかね。ジークスは、未知の知性体が製造した兵器だ。我々に簡単に推し量れるものではない。自爆したのならなおさらだ。以後、本件については科学省が解析と調査を続ける。君たちは余計な詮索はせず、本来の任務に専念してくれ。この件は、レベル3の機密事項だ。言うまでもないが、漏洩した場合、厳罰に処されるので留意したまえ。以上だ」
「イエス…サー…」
レイジとダリルが退室すると、クリンゲンバーグは、開いていたコンピュータ画面に目を向ける。画面には、ダリルとレイジの顔写真が付いたファイルが表示されており、クリンゲンバーグはファイルにタッチして下部をスライド表示すると、英語で「軍に対する不信感表明」と書かれた項目のゲージを2から4に引き上げる。すると英語で「不穏分子ランクがB+に変更されました」とメッセージが表示される。
OKボタンをタッチしてそのメッセージを消すとクリンゲンバーグはつぶやく。
「馬鹿な奴だ…」
エレベーターに乗り宿舎のある上層へと向かう二人。(※最も安全な最下層に司令部があり、レイジ達の宿舎は司令部よりも上層にある)
「復帰早々軍事機密を握った気分はどうだ?」
「正直、動揺しています」
「だろうな。俺も動揺している」
「…」
「妙だと思わんか?軍事機密というのはこうも簡単に握れるものなのか…」
「偶然握ってしまっただけですから」
「果たして偶然かな?」
「?」
「俺達だけでなく、既に他の全員が知っていたとしたらどうなる?全員が守秘義務を守っていれば、全員が自分しか知らない秘密だと錯覚することもありえる。だとすれば、これは偶然ではなく必然だ。それだけ頻繁に目撃されていることになるからな」
「まさか…」
「誠に申し訳ありません」
モニターを通してトライデント社社長に頭を下げるトライデント技術開発部部長。
「構わん。事前の取り決めでこうなることはわかっていた。無人化のプランを取り下げる見返りに次の新型ディヴァイン開発では我が社の単独受注となるようにロズウェルとは話がついている」
「…談合、でありますか?」
「そういうことだ。君は技術者としては有能だが、政治には疎いようだな?」
「はぁ」
「ゴールトン家は、長年ロズウェル家に使用人として仕えてきた一族だ。例え大統領になってもその関係は変わらない。選挙資金もロズウェルから出ている。ロズウェルの使用人である以上、ロズウェルの意向に沿った決定を下すのは、やむをえん。しかし、閣僚の中にはそういうことを理解していない者や我々とは利害が一致しない者もいる。閣議室での秘密会議とはいえ、我々からすれば表の世界の一部だ。表向きは我が社とロズウェルはしのぎを削っているように見せなくてはいかん。だから、君のように政治には疎い人間を送り込んだというわけだ。事情を知ってる閣僚にはさぞ名演技に見えたことだろう」
「…」
「しかし、我々は一枚岩ではない。神の槍の改良計画は、ロズウェル総裁の肝入りという情報もある。何故ロズウェルがこれほど神の槍にこだわるのか、それは謎だ…」
深夜、ダリルは宿舎の自室でPCを開いてメールを確認していた。受信フォルダにはタイトルに『**警告** このメールの閲覧によってあなたの身に重大な危険が及ぶ可能性があります。』と英語で書かれたメールがある。
ダリルはしばらくタイトルを凝視した後にそのメールのタイトルの上まで人差し指を移動、何度かメールをタップしようとするが、思いとどまってメールを削除し、メールソフトを終了させる。
「ふぅ…」とため息をつくとダリルはしばらく天井を眺めた後、電話機を手にとって誰かに電話をかける。
「どうしたの?こんな時間に…」
電話に出たのはダリルの妻、ローラだった。
「そっちも夜だったか。すまん。急に君の顔が見たくなった。」
モニター画面に映るローラのまぶたは少し腫れぼったく、顔色も少し悪く見える。
「ん?いつもと印象が違うな…どうかしたのか?」
「私の顔忘れたの?夜だもん。ノーメイクよ。あなたが帰って来ないから最近は昼でもノーメイクの時が多いけど…」
「!」
ローラの話を聞いて何か閃いた様子のダリル。
「すまん!また後でかけ直す!」
電話を切るダリル。突然電話を切られて憤慨するローラ。
「何よ!もう!」
ダリルは慌ててメールソフトを起動すると、ゴミ箱フォルダを開く。先頭には先程削除したメールがあり、再びそのタイトルを凝視しながらしばらく指を止めるダリルだったが、やがて意を決してタイトルをタップする。
一方、世界連邦安全保障局(WUSA)にある通信傍受システムの管制室ではダリルの様子が傍受されていた。ビーーッとブザーが鳴ると、オペレータの一人がモニターを見ながら上官に報告する。
「ヴェスタ基地、火星方面軍第4特別攻撃隊所属ダリル・スチュワート中尉、ウォルフェルト・レポートを開封しました。不穏分子ランクA-!」
ダリルは、メールを読み終えると驚愕の表情を浮かべて言う。
「やはり…そうだったのか…」
翌日、ダリルは、レイジととあるバーで会う約束を取り付ける。
人目を避けながらバーに向かうダリル。その様子を怪しげな男が遠くから眺めている。男は、ウェアラブル端末に口を近づけると何者かと通話を始める。
「早速、動き始めたようです」
「そのまま泳がせてメンバーを洗い出してくれ」
「了解」
ダリルがカウンターに座ってレイジの入店を待っていると、チャリンとドアを開ける音がしてレイジが入店してくる。
「こっちだ」
「遅れてすみません」
「いや、俺こそ急に呼び出して悪かった」
「で、話というのは…?やはり、例の…」
「ああ。例の件だ。しかし、ここなら絶対にWUSAにも盗聴されない。俺達が確認済みだから安心しろ」
「俺達?」
「アレーティア…って聞いたことあるか?」
「アレーティア…反連邦組織の!?」
「反連邦組織というのは誤解だ。俺達は単に真実の探求者が集う市民グループだ。こうやってたまに政府や軍の目を盗んで情報交換をしている」
「…」
「驚いたか?」
「はい。まさか中尉が…」
「ここのマスターも一員だ。誰とは言わんが、軍関係者には俺以外にも何人かメンバーがいる。とにかく一度先入観を捨てて聞いてくれ。今回の件、どう考えても軍は何かを隠している。お前もそう思うだろ?」
「はい…」
「俺が思うにアレはジークスの偽装じゃない。その逆だ」
「といいますと…」
「いいか、ロズウェルやトライデントは兵器を連邦軍に売って利益を得ている軍需企業だ。軍需企業が利益を拡大する最も簡単な方法は、戦争を勃発させること…。ヒジリは、何故ジークスは一気に人類を滅ぼして戦争を終わらせないのか?と思ったことはないか?答えは簡単だ。戦争が終わったら奴らの稼ぎがなくなって困るからだ」
「ちょっと待って下さい。確かに彼らは戦争で利益を得てるかもしれない。しかし、それはジークスが攻めて来たからであって…」
「わかっていないな…。ジークスは、ディヴァインが偽装した人類製の兵器だと言ってるんだよ」
「…人類製の兵器…?」
「クローキングという技術を知ってるか?実体とは異なる電磁波を出力することによって、あたかもそこに別の物体があるかのように機器のセンサーを欺く技術だ。おそらくジークスはこれを応用して可視光線まで変化させているのだろう。女の化粧に例えるなら、ディヴァインがノーメイクの姿、ジークスがメイク後の姿ってわけだ。俺達が目撃したあの機体は、当初ジークスに偽装していたが、交戦中に何らかのトラブルで偽装装置が故障したのだろう。通常は即座に自爆して証拠隠滅をはかるところが、その自爆装置にも何らかの異常が発生し、俺達に真の姿を晒してしまった…と考えれば辻褄が合う。この戦争はな、全てフェイクなんだ。奴らは兵器を売りさばくために架空の敵をでっちあげたってことだ」
「…」
「信じられないか?」
「そんな話…信じられるわけがないですよ。俺達は、命がけでジークスと戦って来た。何十億という人が死んだ。だいたい人間がそんなことのために…」
「…人を殺せるわけがないって?人間は自分を基準に物事を考える。だから、大多数は人間がそこまで卑劣なことをするわけがないと思ってる。そのことを奴らはよーくわかっている。だからやりたい放題なんだ。奴らの陰謀は今回が初めてじゃない。大昔からずっとこうなんだ。第三次世界大戦も何もかも。全部奴らが引き起こした戦争なんだよ!」
「証拠は…証拠はあるんですか?」
「証拠ならいくらでもある。クローキングの情報は先日亡くなったウォルフェルト博士から入手したものだ。他にもあるぞ。ジークスの破片は数時間で自然消滅すると言われているが…」
「申し訳ないですが、自分はこれで…・」
自分が信じて来たものを否定され、我慢の限界に達したレイジ。席を立って出口へと向かうが、ダリルはなおも話し続ける。
「受け入れられないのは無理もない。俺も最初は受け入れられなかった。しかし、いずれ俺の言っていたことが正しかったとわかるはずだ。その時はもう俺はWUSAに消されてるかもしれんが…」
レイジは一瞬立ち止まるが、無言でドアを開けて店から出ていく。重い空気の残る店内。
就寝前、自室のPR(パーソナルロボット)に話しかけるレイジ。「ピロ、"ジークス 最新情報"で検索してくれ」
すかさず立体映像で100件のリストが空中に表示され、視界全体が検索結果で埋まる。ベッドで横になり、そのいくつかに目を通すレイジ。検索ページの文字がレイジの目線を自動認識して自動的に拡大される。
「正体不明」「未知のテクノロジー」「未知の異星文明」といった曖昧な言葉が並んでおり、ため息をつくレイジ。
レイジは、ふと思い立ったように上半身を起こすと、テーブルに置いてあった携帯端末を手に取り、操作画面をタッチする。携帯端末のディスプレイに映し出されるソフィアの写真。それをしばらく無言で眺め続けるレイジ。
一方、ソフィアは、宿舎のベッドで悪夢にうなされていた。
12、13歳頃とおぼしきソフィアが暗闇の中で何か怯えている。
「いや、いやああ!」
そのソフィアに話しかける低い中年男性の声
「簡単なことだ。一度経験すれば楽になる。みんなこうして大人になるんだよ?」
「いやだ、いやだっ!」
「人間は子供のままでは生きていけないんだよ。ソフィア。死にたくなければ大人になるしかない。大人になるということはね。汚れるということなんだ。さあ、やるんだ。ソフィア!」
「いや、いやっ!」
「しょうがない子だ。じゃあ、私が一緒にやってあげよう」
男はそういうと背後からソフィアの腰に手を回して何かをしようとする。
目を大きく見開き、目の前の"何か"を凝視しながらソフィアは絶叫する。
「いやああああぁぁぁーーー!!」
脳内に響いた自分の絶叫でソフィアは目を覚ます。
「はぁーーー」夢だとわかって安堵のため息をもらすソフィア。
ふと気付けば、ぐっしょりと寝汗をかいている。
キャミソール風のルームウェアを脱ぎ、カゴに投げ入れるソフィア。
シャワーを浴びるソフィアの姿。シャワーを持つ左手首にはためらい傷がある。ソフィアは何か思いつめた暗い表情で傷のある左手首を右手でゆっくりと擦る。ふと鏡に映る自分と目が合うと、立ち止まってずっと自分を睨み続ける。
翌日、レイジが宿舎から基地の待機室へと向かうと、前方にダリルの姿が目に入る。
背後からダリルに声をかけるレイジ。
「中尉」
「おお、ヒジリか…」
「昨日の話は内密にしておきます。安心してください。部隊では中尉の命令に従いますから。でも、二度と自分を誘わないでください」
「わかった…すまんな」
そんな二人の様子を不審な表情で眺めているドーキンスという名の隊員
※中略※
「S6方面に敵機襲来。第4特別攻撃隊は全機出撃せよ! 」
ジークス襲撃を伝えるアナウンスとともにスクランブルがかかり、レイジたちは、急いでディヴァインに乗り込んで飛び立って行く。
戦闘が始まると、ダリルはドーキンスに後方での援護命令を出すが、ドーキンスは他の機体がジークスにやられるのを見計らってダリルの機体をロックオンする。
「反逆者め!」
叫びながらトリガーを引くドーキンス。
ダリルはコクピット内に貼られた妻の写真に目をやるが、次の瞬間ミサイルはダリルの機体に命中。ダリル機は爆発する。
「よっしゃあっ!」
ドーキンスは歓声を上げるが、後方から襲いかかったジークスに攻撃され、ドーキンスも爆死する。
一方、レイジはレーダーからダリル機のアイコンが消えていることに気付く。
「まさか?」
僚機から無線が届く
「隊長がやられたらしい!」
「中尉が?そんな…」
そこへ司令部からの帰投命令が入る。
「全機に告ぐ。至急帰投せよ。全機に告ぐ。至急帰投せよ」
操縦桿を握りしめたまま呆然とするレイジ。
呆然としながら基地に戻ると同じ部隊のジョンとカルロが口論をしている。
「俺は見てたんだ!あの時隊長の後ろにはドーキンスしかいなかった!ドーキンスが隊長を撃ったんだ!」とジョン。
「そんなことするわけがないだろう」
「いや、あの時前方に敵はいなかった。隊長を狙ったとしか思えない」
「だとしたら動機は何なんだ」
「それはわからん」
「動機が不明じゃな…」
レイジはしばらく呆然としていたが、ダリルの言葉を思い出して二人の口論に割って入る。
「WUSAに消される…」
「ん?」
「WUSAに消されるって、この前中尉が言っていたんだ」
「それ本当か?」
「本当だ」
「WUSAはテロリストの摘発が主任務だろう?ってことは、隊長はテロリストだったってことか?」
「それは…」言葉を濁すレイジ。
「それが本当ならドーキンスはWUSAのエージェントだったってことにもなるな」
「中尉がそう言っていたのは事実だ」
「となると、迂闊にこういう話も出来ないってことか…」
そう言って周囲を見回すジョン。
その様子を監視カメラでモニターしているクリンゲンバーグ司令。
*中略*
宿舎に戻る途中、レイジも何者かに狙われている気配を感じていたが、気付いていないフリをしてディヴァインの置かれたデッキへと向かう。レイジがデッキに着くと、先日の整備士が現れ話しかける。
「おや、少尉、こんな時間にどうしたんですか?」
「ちょっと愛機を眺めたくなってね…」
「デルタは惚れ惚れするいい機体ですからねー」
「ああ」
「こんないい機体に乗れる少尉がほんと羨ましいですよ」
そんなたわいもない話をしていると突如整備士がスパナーで襲いかかる。予想していたレイジはそれをかわし、すかさず肘と膝で整備士を数回突いて整備士を気絶させる。
整備士の持っていた無線機からクリンゲンバーグの声。
「どうした。やったか?」
レイジは無線機を取り、整備士になりすまして答える。
「やりました」
「よし。ヒジリは適当な場所に隠してそのまま待機していろ。これからそっちへ向かう」
「イエッサー」
クリンゲンバーグが整備士のところへ向かうと、レイジはディヴァインに乗り込もうとしていた。クリンゲンバーグはレイジに向けてピストルを構えるが、発砲寸前にキャノピーは閉まり、レイジは被弾を免れる。
他のエージェントが駆け付け、マシンガンを構えるが、レイジはエンジンを始動し、ノズルからジェット噴流を吹き出す。
クリンゲンバーグはジェット噴流に吹き飛ばされないように立っているのがやっとで動きを封じられる。
カタパルトを走行し、爆音を上げて飛び立っていくディヴァイン。呆然と立ち尽くすクリンゲンバーグにエージェントが駆け寄るとクリンゲンバーグは命令を下す。
「ただちに追跡しろ!絶対に逃がすな!」
「イエッサー!」
アテもなくディヴァインを飛ばし続けるレイジ。
「中尉の言っていたことが本当だったというのか…。そんなことが、本当に…これから俺はどうすればいいんだ…」
未だ納得出来ずに自問を続けていると、ディヴァインのAIが一通のビデオメールを受信したことを伝える。メールは、ダリルからのものだった。
「俺の身に何かあった場合、時間差でこのビデオが届くようにセットしておいた。これから見せるのはウォルフェルト博士が命がけで入手した情報だ。博士は軍の機関誌にも名前が載っているディヴァイン開発者の1人だ。博士は、破壊された直後のジークスの破片を密かに研究室に持ち帰り、成分を分析した。しかし、数時間で自然消滅するはずのその破片は消滅しなかった。しかも分析の結果、その組成は、グラヴィニウムと判明した。知っての通りグラヴィニウムは、主にディヴァインの装甲で使用されている素材だ。証拠はこれだけではない。博士と親交のあった数学者のオサリヴァン博士は、長年ジークスの暗号解読に取り組んでいた。ついぞ暗号は解読されなかったが、最近博士はある重大な発見をした。ジークス同士が通信で使っている暗号パターンが、丁度24時間で変わっていることがわかったんだ。時間、分、秒、これらの単位は、地球の自転周期が元になっている。
敵が地球外に起源のある知性体なら敵の使う時間の周期は地球のものと異なっていないとおかしい。しかし、それが完全に一致するというんだ。これでも信じられないのなら俺は諦める。もし俺の言うことを信じたのならこの情報を全世界に拡散して欲しい。アレーティアのメンバーでTVプロデューサーのレイモンドという男がいる。位置情報はここだ。彼なら全世界に瞬時にこの情報を配信できる。俺と関わったことで少尉も既に危険にさらされているかもしれない。しかし、誰かが阻止しなければ、人類は永遠に奴らに食い物にされる。今日死ぬか、明日死ぬかの違いでしかない。この世界は、俺たちの想像を遥かに超える恐ろしい連中に支配されているんだ!世界を変えるには少尉の協力が必要だ。よろしく頼む!」
あまりに唐突で大それたリクエストに半笑いを浮かべるレイジ。
「無茶だよ、中尉。そんなこと、急に言われたって…俺は…人類を救うとか、世界を変えるなんてことは考えていない。俺は、両親を殺したジークスが憎かった。奴らを叩きのめしたかった。軍の孤児院では身寄りのない俺を家族のように迎えてくれた。だから俺は軍に入った。ただそれだけだ…」
しかし、そこで車の中で聞いた中尉の言葉を思い出す。
『命に代えても守りたいものがある。それが強さだ』
そのフレーズとともにソフィアの顔を思い浮かべるレイジ。
そうこうしている内にレイジを追って来た5機のディヴァインの編隊に包囲される。
「ヒジリ!言うまでもないが、脱走は重罪だ。しかし、今すぐ投降すれば少しは減刑される。十秒だけ猶予を与える。10、9、8、7…」
「しかし、こうなると戦うしかしかないか…」
※中略。ここで追撃隊の5機とバトル。1機目:ミサイルで撃破。2機目 ソードで切り裂く。
なんとか2機は撃墜したものの、残った3機はなおもレイジに襲いかかる。
「観念しろ!ヒジリ!」
ソードであわや切断されるかと思ったその瞬間、敵機は後方から受けた粒子ビームで胴体部を吹き飛ばされる。
続いて他の2機も粒子ビームの直撃を受けて爆発。追撃隊は全滅する。
何が起こったのかわからず呆然としていると、粒子ビームが飛んで来た方向から一隻の宇宙船が近付いて来る。やがてディヴァインのすぐそばまで来ると減速して、宇宙船はディヴァインの目の前で停止する。
ブリッジの窓からは数名の人影が見える。やがて無線で音声が届く。
『こちらは巡洋艦ソーテリア。ヒジリ少尉、聞こえる?』
驚いたことに、その声の主はソフィアだった。
「その声は…ソフィア!?…何故ソフィアがここに…」
ブリッジを良く見ると、その中央には軽装の宇宙服を着たソフィアがマイクを持っており、その横にハーディンらしき男が立っている。
「君たちは、一体…」
レイジに問いにソフィアが声を張って答える。
『私たちは、反連邦組織アレーティア』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます