エピソード1

瞳に差し込むまばゆい光。

光が弱まると、中央にうっすらと人影が見えてくる。

近付いてくる白衣を着た金髪碧眼の若い女。女は「はっ」と驚いた表情を見せると声を上げる。

「ドクター!患者が…患者が目を覚ましました!」

白い病室の中に置かれたベッドで仰向けになっているレイジの姿。


痩せた中年医師がレイジの顔を覗き込む。

「聞こえるかね?私は医師のハーディン、彼女は看護士のソフィアだ」

「ここは…?」

「ヴェスタ基地にある病院だよ」

「ヴェスタ…?」

「ん?記憶が飛んでいるのかな?ヴェスタというのは小惑星帯(アスレロイドベルト)にある小惑星の一つだよ。小惑星の中では3番目に大きく…」

「いえ、そういうことではなくて…」

「ん?」

「セレスではないんですか?自分はセレス基地所属の…」

「ああ、そういうことかね。君のいたセレス基地は壊滅してしまってね。現在はここが前進基地になってる」

「壊滅…」

「負傷した時のことを覚えてるかね?」

「敵機に突っ込んだところまでは…」

「すばらしい…」

「え?」

「いや、あれほどの重傷を負った場合、直前の記憶は失われるのが一般的なのでね。その後、激しい攻撃を受けたのだろう。ここに運び込まれた時には君の左腕と右足はなかった」

「!」

布団から自分の両手を出して左腕を確認するレイジ。確かに左腕はついているが、やせ細っている。

「再生医療!?」

医師は頷く。

「全く君は運がいい。通常あれほどの重傷を負えば、急激な血圧低下によるショックで心肺は停止し、脳細胞も壊死して再生は不可能だ。君の場合は奇跡的に…」

そんな医師の説明も上の空で、ただ自分の姿に呆然としているレイジ。


『再生医療は俺たち軍人の特権だ。再生医療という"保険"によって死の恐怖をいくらか軽減出来る。しかし、最先端の医学をもってしても死人を生き返らせることは出来ない。偶然この基地まで吹き飛ばされた俺は、救命艇に救助され、奇跡的に一命をとりとめた。しかし、ティム達は…。どんなに科学が発達しても死から完全に逃れることは出来ない。だからこんな時代でも……、いや、こんな時代だからこそ人々は神に救いを求める…。』


ベッドで上半身だけを起こしてTVのニュースを見ているレイジ。TV画面には瓦礫の山の傍らで手を合せ天を仰いでいる老人や泣きじゃくる子供が写っている。その様子を見てレイジは自分の幼少時代を回想する。


レイジを連れて走るレイジの父と母。レイジの母がつまづき転倒。「待って」と叫ぶレイジの母。レイジと父が駆け寄るとレイジの母は怪我をしている。上空を見上げると巨大な黒い物体が迫っている。


「レイジ!お母さんのことは俺に任せて、お前は1人で行くんだ!」

「え…?」

「何をしている!早く行くんだ!!」

「だって…」

「男だろう!1人で行くんだ!」

戸惑いながらもレイジは走り出す。後ろを振り返ると、レイジの父は母を抱えながら歩き始めている。

さらに接近する上空の物体。その底面から伸びた突起が光る。次の瞬間、レイジたちは背後から受けた爆風に吹き飛ばされる。

レイジは地面に叩きつけられるが、すぐに起き上がって背後を振り返る。すると、20m程先ではレイジの父と母が瓦礫の下敷きになって血を流している。

「お母さん!お父さん!…お母さん!!!!」


『地球外敵性知性体XIIX(ジークス)。突如太陽系内に飛来し、俺たち人類の、半数の命を奪った憎むべき敵。敵の機体は未知のテクノロジーで作られており、それを製造した知性体にいたっては視認されたことすらない全く未知の存在。そんな得体の知れない敵と人類は10年以上も戦い続けていた…』




筋力補助スーツを着て病院の中庭を歩いてるレイジ。それを看護士のソフィアが見守っている。

「だいぶ筋力が付いて来たわね。次回からアシストレベルを2に落としましょう」

「やっと2か」

「後もう少しよ。頑張りましょう」

「これだけ科学が進んでも筋力は自分で付けるしかないとはね…」

「寝ている間にトレーニングすることも出来るけど、予想より意識の回復が早かったから…」

「寝てる時に勝手に動かされるよりはマシか」

「そうよ。ふふ」

スーツを脱いだところで油断してよろけるレイジ。慌ててソフィアが支えようとするが、抱きかかえたまま転倒してしまう。咄嗟に身体の向きを変えてソフィアの下敷きになるレイジ。

「ぐっ…」

「ごめんなさい!」

「いや、君は悪くないよ。俺の不注意だ」

「本当にごめんなさい」

「大丈夫だよ。パイロットはそんなにヤワじゃない」

「でも…」

「本当に大丈夫だから」

レイジが起き上がろうとすると、手を差し出すソフィア。

ソフィアの手を取って立ち上がると二人はしばらく見つめ合う。

「ありがとう」そう言って微笑むレイジにソフィアも微笑み返す。


そんな二人の様子をハーディン博士は不審な表情で眺めていた。コンピュータ画面に目線を移すハーディン。そこにはレイジの電子カルテが表示されている。電子ペンで備考欄に英語で「適格者」と記入するハーディン。


ソフィアがハーディンのいる医務室に戻り、棚に医療器具を片付けていると、背後からハーディンが話しかける。

「随分親しくなったようじゃないか」

「…見てたんですか?」

「君を監視するのも私の務めだからね」

「……」

「わかってるだろうが、私情を挟めば、最後に苦しむのは君だぞ」

「わかっています……」


「検診の時間よ」レイジの病室を訪れたソフィア。レイジはベッドの上で携帯端末で何かを見ている。

「何見てるの?」

「軍の広報サイトだよ。養成学校以来の友人がこの前の戦闘の後行方不明になっててね…」

ソフィアが近寄って携帯端末を覗き込むとレイジはティムの顔写真を拡大する。

歯並びの良い白い歯が印象的なティムの笑顔。

「いい人そう」

「ああ、いい奴だった」

「過去形?生きてるって信じてあげなけきゃ」

「…そうだな」

 そう言うとしばらく無言でソフィアの横顔を見つめるレイジ。ソフィアは、レイジの視線に気付くと、一瞬照れたような表情を見せ、目を伏せる。

 レイジはソフィア見つめ続けながら言う。

「君は、やさしいな」

「そう?」

「やさしいよ。見ず知らずの男の気持ちを考えてあげられるなんて」

「普通よ。あなたこそやさしいじゃない。ずっと友達のこと心配してるんでしょ?」

「はは、それこそ普通だろ」

 しばらく沈黙が続いた後、レイジが口を開く。

「奴がここにいたら今頃君を口説いてるだろうな…」

「女好きなの?」

「いや、丁度君みたいな娘がタイプなんだ。あいつは…」

「あなたは?」

「え?」

「あなたのタイプは?」

「俺は…」


レイジが言葉を詰まらせたままソフィアを見つめていると、軍服を着たガタイの良い男が病室に入ってくる。

「おっと、邪魔したかな? ヒジリ少尉だな?」

「…あなたは?」

「火星方面軍第4特別攻撃隊中尉のダリル・スチュワートだ。よろしく」

握手を求められ、握手を返すレイジ。

「近いうち少尉の再訓練を担当することになったので見舞いを兼ねて挨拶に来た」

「再訓練…復帰できるんですね?」

「ああ、もう俺と同じ部隊に配属されることが決まっている。操縦に問題がなければの話だが…見たところ大丈夫そうだな?」

「後1、2週で補助スーツを脱げる予定です」とソフィア。

「それは何よりだ。知っての通りセレス基地が壊滅して以来、パイロット不足が深刻化している。1分1秒でも早く復帰してもらいたい」

「イエスサー」

「まだ"サー"はいい」

「はい。中尉」

「予定では10日後に宿舎に移動、その翌日、操縦訓練を行う。そのつもりでリハビリに励んでくれ。これは資料だ。詳細は改めて連絡するが、目を通しておいてくれ」

「はい」

レイジが資料を受け取った直後、ダリルの携帯端末が鳴る。

「司令部の呼び出しだ。もう少しゆっくりするつもりだったんだが…じゃあ、看護婦さん、少尉をよろしく頼みます」

「はい」

「じゃあ、またな」

ダリルはポンとレイジの肩を叩くと足早に病室を去っていく。その後姿を見がなら敬礼するレイジ。その様子を見てレイジが軍人だということを再認識し、ソフィアは複雑な表情を浮かべる。



世界連邦大統領官邸。

暗い会議室の中で円卓を取り囲む大統領と閣僚達を前にしてアドバイザーとして招かれたトライデント社の技術開発部長が発言している。


「ご承知の通り、セレス壊滅以降我軍の防衛力は極めて脆弱となっており、特に有能な戦闘機パイロットの不足は深刻であります。また、先日実戦投入された新型戦闘機HF-D3・通称ディヴァイン・デルタも、パイロットの習熟度の低さから未だその真価を発揮するには至っておりません。そこで我が社としましてはHF-D3を無人化することを提案いたします」

「無人化だと!?」閣僚達がざわめく。

「また2039年のような暴走が起こったらどうするんだ!?」

「そうとも。新たな敵を増やすようなものだ!」

「あの頃とは時代が違います。当時の人々は自律兵器に対してあまりにも楽観的だった。しかし、その後、自律兵器同士がネットワークを組むことは極めて困難となりました」

「ネットワークを組めなくても脅威であることには変わりがない。そもそもジークスは暴走した自律兵器のようなものだ。我々のネットワークを支配せずともジークスのネットワークに取り込まれる可能性もある」頷く他の閣僚達。

「では、このままジークスに滅ぼされれば良いとおっしゃるのですか?」

「そんなことは言っていない。無人化はリスクが高すぎると言ってるだけだ」

「何もしないことの方がよほどハイリスクかと思いますが…」

「AIONの予測はどうなのだ?」

「予測不能、と出ております」

やれやれという表情をする閣僚。

「少なくとも勝算が低いという結果は出ておりません」

「閣下、閣下のお考えは?」

閣僚が大統領の意見を求めると、閣僚達の視線が一斉に大統領に向かう。数秒の沈黙の後、大統領が口を開く。

「無人化計画は…却下する」

「閣下!」声を上げるトライデント技術開発部長。

「ここで第三次世界大戦の悲劇を再び招くわけにはいかない。例えそのリスクが低くてもだ」

「では、どうやってジークスに対抗するのですか!?」

「神の槍を改良する。より強力な槍にな…」

そう言うと不敵な笑みを浮かべる大統領。


その頃宇宙では一隻の宇宙船がヴェスタへと向かっていた。船内では1人の老人が時計を見ながら焦りの表情を浮かべている。

テーブルにはラップトップのPCが置かれており、周囲を気にしながらファイルに目を通す。ファイルに書かれた「XIIX Truth Symposium (ジークス真相究明シンポジウム) 」という見出し。

ラップトップを閉じてため息をつくと、急に船内に警報が響き渡る。窓の外を見るとカンブリア紀の節足動物のような形状をした物体が急速に接近してくる。

「ジークス!!」

ジークスの触手を突き刺されて爆発する宇宙船。


ワイヤレスイヤフォンでTVのニュースを見ているレイジ。

あるシンポジウムに出席するためヴェスタに向かっていた著名な学者がジークスに襲われて急死したことを告げるニュースキャスター。キャスターがヴェスタの防衛体制について軍事評論家に尋ねると、軍事評論家は、ヴェスタの衛星軌道上には「神の槍」と呼ばれる無数の防衛用核ミサイルが配備されているため、たとえジークスでも迂闊には攻め込めない。しかし、セレスを失った今、当然次のターゲットはヴェスタになるだろうと答える。

再びジークスの襲撃が迫っていることを知り、レイジは、思わず拳を握りしめる。



深夜、レイジが寝ていると「レイジ…」とティムの呼ぶ声がして目を覚ます。

「ティムか?」

目を覚ました後もその声はやまず、レイジはその声に導かれて病院の通路を歩いて行く。

中央に扉のある壁の前で立ち止まるレイジ。恐る恐るその扉を開けると、中には巨大な培養槽があり、その中に下半身のない人体が背中を向けて浮かんでいる。

「ティム…なのか?」

「やっと来てくれたな、レイジ。ずっと呼んでいたんだぞ…」

「ティム…お前も再生医療で…」

「ああ、もうすぐ俺もここを出られる…」

培養槽を回り込んで正面を見ると、顔から腹部にかけて肉と骨がえぐられており、そこから飛び出た無数の血管が海藻のように揺れていた。それを見て絶叫するレイジ。

それは夢だった。翌日、レイジがその場所に向かうと、そこは立入禁止区画となっていた。

扉の前で立ち尽くしているとハーディンが背後から現れる。

「こんなところでどうしたんだね?」

「あ、いえ…昨夜、友人にここへ呼ばれまして…夢の中の話ですが…」

「夢?それは妙な夢だね」

「ええ」

「その友人がこの中にいるとでも?」

「そういうわけじゃないですが、ちょっと気になりまして…」

「病院だからね。外部には持ち出せない薬品などが保管してある。そんなに気になるなら一緒に入るかね?」

「いえ、結構です。失礼しました」

去っていくレイジを背後から訝しそうな目で眺めているハーディン。



数日後、退院の日を迎えたレイジは、病院のエントランスの前でソフィアとの別れを惜しんでいた。

「君には本当に世話になったよ。ありがとう…」

「いえ、仕事ですから…」

「また来たい、って言いたいところだけど…」

首を横に振りながらソフィアが言う。

「怪我がないのが一番ですよ」

エントランスの前の道路には軍用車が止まっており、その中からダリルが横目でレイジの様子を伺っている。

「中尉を待たせてるから…」

頷くソフィア。

「お大事になさってください…」

「本当にありがとう」

「もう怪我がないように…」

「ああ」

「…」

「じゃあ」

レイジは車に乗り込むとソフィアに敬礼。軽く頷くソフィア。去っていくレイジの乗った車を目で追いながらソフィアは何かを呟く。

「もう◯◯◯◯◯…」


基地へと向かう車内でダリルがレイジに話しかける。

「なかなか可愛い娘だな」

「ええ」

「てっきりキスでもして別れるのかと思ったんだが…」

「はは。彼女とはただの患者と看護婦という関係ですよ」

「なんだ…」

「期待外れですみません」

「俺のことはいいんだ。これは少尉のためだ。女はいた方がいい。女がいた方が男は強くなれる」

「そういうものですか?」

「ああ。人類や連邦のために戦うと言ったって限度がある。守るべき人がいないとな」

「中尉にはいるんですね?」

「結婚して2年になる」

「いいですね」

「自分の命に代えても守りたいものがある、それが強さだ」

「わかります、いえ、わかる気がします…」


ハーディンがソフィアに近付いてくる。ハーディンに気付くとソフィアが尋ねる。

「行かせて良かったのですか?」

「構わん。無理に引き止めても怪しまれる。それに、彼だけでは意味がない。そうだろう?」

「……」黙り込むソフィア。




訓練機の置かれた甲板へと歩いて向かうレイジとダリル。

「少尉が乗っていた機体は、損傷が激しく廃棄されたそうだが、PMUは生きていたんで訓練機に移植中らしい」

「それは助かります。リハビリ中で不安がありますからね」

甲板に着くと、訓練機を3人の整備士が整備している。レイジはその様子を眺めながら養成学校時代に教官から教わった知識を思い出す。


「HF-D3 通称ディヴァイン・デルタ。対ジークス戦用にロズウェル社とトライデント社が共同開発した宇宙連邦軍主力戦闘機。特殊な対火器シールドを有したジークスに対して最も有効な攻撃は刀剣類でのゼロ距離攻撃だ。それを容易にするためディヴァイン・ガンマ以降では戦闘機形態から人型へ変形する機能が備わっている。ディヴァインに搭載された量子コンピュータは、戦闘時はもちろん、こうやってドックに安置されている時も全活動を記録し、パイロットの操縦・戦闘パターンと操縦・戦闘結果との相関を解析、最も良い結果を出せるようにパイロットをアシストする。そのため、ディヴァインの挙動は同じパイロットが操縦しても機体によって異なるが、PMU(Personal Memory Unit)を移し替えるだけで前の機体と同じ挙動を再現できる…」


マニュピレータでコクピットの後部まで運ばれる白い卵のような形をした物体。マニュピレータを操作している整備士にダリルが話しかける。

「後どの位かかる?」

「本体の整備は終わってますんで、後10分もあれば…」

「そうか。じゃあこのまま待たせてもらおう」

「あれがPMU…」

「現物を見たのは初めてか?」

「はい」

「こいつを見る時は、大抵その前にパイロットが死んでる。あまり縁起のいいもんじゃないが…」

「我々は毎日のように見てますが、皆ピンピンしてますよ」と整備士。

「そうだったな。ははは」

「我々はスカル(頭蓋骨)って呼んでますがね」

「スカルか…それは面白い」

「量子コンピュータは、複製しようとすると元の量子データが不確定性原理により改変されてしまうので、前の機体のメモリーを移す場合は、必ずスカルを物理的に移し替えなくてはいけないんです」と整備士。

「なるほど…」

「当然中をこじ明けたらデータは完全に変わってしまう。だから、我々ですらこの中をいじることは出来ないんです。どうせ我々に直せる代物じゃないですが…さて、これでよしと。中尉!終わりましたよ」

「よし。行くぞ!少尉!」

「ハイ!」


復座式の訓練機で飛行中のレイジとダリル。ターンやロールに始まり、スプリットS、テールスライド、バレルロールなど次々に難易度の高いマニューバ(戦闘機動)をこなしていくレイジ。最後の仕上げに機兵(ソルジャー)モードに変形し、敵機を模したバルーンに機銃を掃射し破裂させる。

「見事だ。まったく後遺症はないようだな。しかし、この機体は訓練機といっても新型のディヴァイン・デルタと基本設計は同じだ。ガンマと比べて重力偏向ノズルが大幅に改良され、機動性(マニューバビリティ)が格段に向上している。あまり過信はしない方が…」

ダリルが釘を刺していると、突然ビーーーッ!と警告音が鳴り、中尉の言葉を遮る。

「8時方向から未確認飛行物体が急速接近中!速度11.3μ(マイクロ)AU(天文単位)!」

「ジークスかっ。ちっ、これから帰還しようって時に…」

「このままでは追い付かれて背後をとられるな…。旋回して迎撃しろ」

「ラジャー」

急速旋回する訓練機。

「敵機まで距離1.8、1.75、1.7、まもなく有効射程に入ります」

「射程に入ったらすかさず撃て」

「ラジャー」

「3,2,1 HM1発射!」

ホーミングミサイルが発射され視界から消える。ディスプレイには敵機と接近するミサイルのシミュレート映像が映され、まもなくそれらが交わるとレーダーからは敵機が消える。

「敵機、レーダーから消えました」

「消えた?IRST(赤外線捜索追尾システム)はどうなってる?」

「依然敵機を捉えてます。距離0.9、0.85、0.8…このままでは敵機と接触します」

「HM発射!」

「HM発射」

「フレア放出!ドラッグしろ!」

フレアを射出すると、右へ急旋回するディヴァイン。フレアを敵機が放った粒子ビームが貫通。まもなくフレアの噴煙を突き抜けて敵機が現れる。

レーダースコープ上で敵機を示す光点が接近する。

「敵機、追って来ます!」

「ギリギリまで引き寄せて背後に回れ!」

機首を上げ、垂直方向に180度ループして逆さまになると、追いついた敵機がディヴァインの頭上に現れる。明らかにジークスとは異なる機影。それを凝視していたレイジが声を上げる。


「ディヴァイン!?」

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