第3話

どうも皆さん、中身おっさんの転生『美』少女、深山愛です。

ことさらに『美』を強調させて頂いたのには理由があります。

どうやら私、かなり可愛いようです。

現在私は無事に5歳まで成長できたのですが、やはりこれくらいになると、子供としての可愛らしさにプラスされて、個々人そのものが持つ素材の良し悪しというのも際立ち始めるようです。

私自身も前世の価値観から、なかなか将来有望なんじゃないかと自画自賛してはいましたが、やはり第三者から客観的に評価を受けると、また意味合いが違ってきますよね。


まず私の容姿についてですが、説明が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。

産まれた当初は、神様からチートも何も貰っていないなどと言いましたが、少し訂正させて頂きます。


実は私、いわゆるアルビノなんです。


真っ白な髪に紅い瞳、ほくろ1つない真っ白な肌。

人によってはその人生で辛い出来事を引き起こす身体特徴であり、あまり手放しで喜ぶのも不謹慎かもしれませんが、前世が平凡な一般男性であった私としては、この一目でわかる個性は非常に喜ばしいものでした。


そしてそれに加え、祖母、母と受け継がれてきたこの美貌があるわけです。

さらに言えば、まだ私の身には現れておりませんが、祖母も母も非常に立派な胸部をお持ちであるため、将来のプロポーションも約束されたようなものなんですよ。

今は幼いために体温調整をしやすくする狙いから、髪の毛は肩の辺りでバッサリと綺麗に整えられていますが、個人的にはいずれ母や祖母のように長い髪をしたいと考えています。


これはある意味、神様チートと言っても過言ではないかもしれませんね。

まあ実際は、神様ではなくこうして元気に産んでくれた両親に感謝するべきだと思っているので、本気でこれが神様チートだなんて思っているわけではありませんが。


そんな可愛らしい私ですが、先日初めて、自画自賛や家族からの贔屓目ではなく、第三者の客観的評価を受ける機会に恵まれたわけです。


それは私が、父とお出掛けをしていた矢先のことでした。

アルビノの私は肌が弱いため、外出時はなるべく肌を露出しない服装をするのですが、両親や祖父母らの愛情が爆発した結果、私の普段着はフリルたっぷりな白ゴスロリ姿なんです。

大きな可愛らしいツバ付き帽子を被り、時には日傘をさしていることもあります。

その日は父と手を繋いで歩いていたため、日傘をさしてはいなかったのですが、そこで私はふとある光景を見つけてしまったのです。

といっても、特にもったいぶるような話ではありません。

たんにどこかのテレビ局が、ニュース番組の生放送でカメラを回しているそばを通りがかっただけです。


しかしやはり、大きなカメラが動き回り、数人の大人が様々な機材を持って撮影に取り組んでいる光景というのは、いくつになってもその非日常感が胸を踊らせるものでした。

私もついつい好奇心を刺激され、ゆっくりと歩幅を合わせて歩いてくれる父と一緒に、その光景を眺めながら歩いていました。

私は撮影の様子がよく見えるように片手で帽子を上げ、カメラやその前に立つ男性キャスターの方をチラチラ見ながら通りすぎたのです。


そしてその光景は、当然全国ネットで生配信されました。


白昼に白ゴスを着て歩く、白髪赤眼の美幼女の姿は、一気にネット上で拡散されて話題を呼びました。

私が帽子に手を掛けて歩くワンシーンを切り取って、奇跡の一枚なんて名前がついたり、千年に一人の美少女などとありきたりで大袈裟なタイトルがついたりしていました。

正直、悪い気はしませんでした。

ツイッターやユーチューブで活動する人や、アイドルや芸人さんに目立ちたがりな方がいる理由がわかった気がしました。


などとお気楽に浮かれる私は置いておいて、家では両家の祖父母まで招いての家族会議が始まってしまいました。

子供に聞かせる話ではないと判断したのか、詳しい話し合いは私が就寝してから行われたため、その内容については不明です。

ただ、普段は両祖母に押されてあまり私を構えないはずの二人の祖父が、しきりに「お爺ちゃんに任せろ」と私を抱き上げ、お互いに固い握手を交わしていたのが印象的でした。


そんな家族会議の翌日以降は、どうやら有名どころの検索サイトからは、私の画像が検索対象から除外されたようでした。

これは父がタブレットで確認しているのを横で覗くことで判明したことなので、ツイッターや匿名掲示板などで個人がアップロードするとどうなるのかはわかりません。

流石に五歳児の私にタブレットやパソコン、スマホなどは触らせてもらえないので、確認のしようが無いのです。

ただ、有名検索サイトでヒットしなくなるだけでも、かなり意味があると思うので、私の話題はすぐに下火になるだろうと思います。

少し残念にも感じましたが、まともに自身の身も守れない幼女の身体では、下手に顔が売れてしまうのも問題だと思うので、これで良かったのかもしれません。


この事件の1番の影響は、むしろ世間様よりも私の内面に大きな変化をもたらしたことだと思います。

私は少し前から保育園に通っているのですが、正直その中ではかなり浮いた存在だったのです。

私が保育園に入るとの話があがった際、祖父母が私の面倒を見ると熱烈にアピールをしましたが、両親の「同年代の子と交流を持たせてあげるため」という理由から却下されました。

そんな両親の願いを受けての入園でしたが、見事に浮いてしまい同年代の子供と交流出来ていない事実に、私としては少しそのことを気に病んでいたのです。

別に中身がおっさんなので、幼児達と積極的に交流を持ちたいわけではありませんが、さりとてまともに交友関係を作れない事実は、間違いなく保育士の皆様を通じて私の両親に報告がいっていることでしょう。


自分の娘がコミュ障だという話を聞くのは、親として非常に辛いに違いありません。

なので私としても、最低限の交流は持ちたいのですが、別に私自身もガチコミュ障で幼児達に混ざれないわけではないのです。

正直、周りの子達がめちゃくちゃ私から距離を取っているんですよ。

そんなあからさまに避けられて、近付いて泣かれでもしたらと思うと、なかなか積極的に絡みに行くことが出来なかったのです。


ですが私はこの度、自分が他人様の目から見ても美少女であることを知ってしまいました。

その前提に立って周囲の子達の反応をよく観察して見ると、なんのことはありません、みんな私の可愛らしさに気後れしていただけなのです。

自分で言うのもどうかと思う内容ですが、実際そうなのだから仕方ありません。


いえ、実際にそうだった、と過去形で言うべきですね。


私はとりあえず、一番私のことをチラチラ見ていた女の子に自分から声をかけ、一緒に遊ぶことに成功しました。

そこから先は芋蔓式ですね。

あれよあれよと言う間にクラスのみんなと仲良くなり、瞬く間に私はクラスの人気者となってしまったのです。

本当に、自分で言うのはどうかと思う内容ですが、事実なのだから仕方ないのです。

ですが、やはり中身は前世の記憶を持ったおっさんです。

周囲を囲む幼児達と同レベルになって遊ぶなんてことは出来ず、結局やっていることは親戚の子供をあやしているような気持ちで接するのと同じになってしまいます。

別にいいんですけどね、昔から子供の面倒を見るのは好きなので。

ただ、そんな風に保育士の真似事みたいなことをしていたら、たまたま保育園の先生方が「あいちゃんのいるクラスは、あいちゃんが他の子の面倒みてくれるから楽ね〜」などとお気楽に雑談しているのを聞いてしまいました。


「あいちゃん、おままごとしよ?」


「あいちゃん! ボール遊びしようよ!」


「あいちゃんおしっこー」


「うわああああぁぁん、あいぢゃ〜ん…」


「ねーねーあいちゃーん」


「あいちゃんおしっこ」


…自分で言うのと他人に言われるのでは、同じような言葉でもかなり感じ方が変わってきますよね。

とりあえず泣いてる子とおトイレがご所望な子は、保育士さんの業務の範疇だと思うので、早急な対応をお願いいたします。

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