第5話 怪談

月曜になって、いつも通り学校に登校する。別に魔法学校とかそういうのじゃない。普通の高校。現代文とか、数学とか、英語とか、そんなの習う所。魔法を本格的に学びたい奴は、高校卒業してから進学して魔法科とかに行って学ぶ。魔法の専門学校的なのもあるらしい。まあ俺はそんなの興味ないけど、サクラとかは行きそうかも。もうすぐ三年。進路のことを真面目に考えなきゃいけない時期。てか、考えてないと遅すぎるくらいだ。俺も真面目に考えなきゃな。

「はよー。」

教室に入って自分の席に着くと、前の席の奴がくるりと後ろを向いて挨拶してくる。里中瞬(さとなかしゅん)。この前まで風邪を引いてて、俺に看病されてた幼馴染み。完全復活したらしい。すごく、うるさいほど元気だ。

「なぁなぁ、今日数学の確認テストがあるらしいよ。」

そして何気に情報屋。

「は?そんなの聞いてねぇよ。」

「だから抜き打ちなんだって。」

「はー?マジかよ。」

とか言いつつ、瞬は勉強してない。聞くと、どうせ勉強したって頭良くなる訳じゃねぇし。らしい。情報屋なくせに、その情報を有効活用しないとこが残念な所だ。まあ、俺も今更勉強なんてしないけどさ。ハッと思い立って、さりげなく瞬に聞く。

「あー、噂で聞いたんだけど、お前大魔女って知ってる?」

「あー、大魔女って怪談的なアレだろ。」

「え、どんな?」

瞬の話によると、あの山の少し登った所に大きな洋館があるらしい。今にも崩れ落ちそうな洋館で、そこには誰も住んでいないはずなのに、声が聞こえる。そこに入った人の話によると、入り口の鍵も壊れて窓も割れていたりして、とても人の住める状態ではないらしい。階段も腐っていて上れないらしく、夜ではないのに暗くて不気味な空間。それなのに、リビングらしき所の床には作ったばかりのような温かいスープが置いてあって、大きな笑い声がどこからか聞こえたと言う。夜には妙な呪文が聞こえ、大魔女がいると噂がたったらしい。

「な、怖いだろ?」

「いや、別に?」

どこにでもありそうな怪談。作ろうと思えば作れるし、本当の話なのかどうかも怪しい。でも何も情報がないよりいいか。

「次、体育だよ。」

そう言って着替えはじめた瞬に倣って俺も体操着に着替え始める。黒板に白いチョークで書かれた少し不格好な『男子、サッカー』の文字。今日の体育はサッカーらしい。窓の外では、前の時間に体育だった奴等が楽しそうに騒いでた。寒い中、体育館の外へ繋がるドアから中庭に出て雪を投げ合って遊んでる。内履きに雪がついて、そのまま体育館に入った奴が先生に怒られてた。内履きの色が赤だから、きっと1年生。俺らの下だな。ちなみに俺ら2年は緑、3年は黒だ。俺も黒が良かった。3年間色が変わらない制度だから、俺らは3年になっても緑のままだ。そんなことを考えながらも着替え終わって、瞬と一緒に廊下へ出た。

「寒いな。」

と瞬に言えば、

「サッカーやれば暑くなるっしょ。」

なんて返ってくる。そこまで俺は、お前みたいに走り回ったりはしないんだよ。と頭の中で瞬に言い返した。

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