第2話 出会い

学校には数人生徒がいた。休みの日なのに体育館では運動部が走り回っている。こんな寒い中お疲れ様です、なんて少し同情しながら階段を上がった。大きい窓から差し込む白い光が階段を照らす。窓の外を見ると白い空に、白い建物が沢山見えた。みんな雪に染まってる。白の世界だと思った。四階に着いて図書室と書いてある札が下がったドアに手をかけた。鍵がかかってる。ここは諦めて、もう少し歩いた先のドアに手をかけた。ドアには掠れたマジックで書かれてる図書準備室の文字。横に引くと少し開いたものの、ガッと音を立てて途中で止まった。何回引いても途中で止まる。人差し指くらいの大きさじゃ、俺も入れねぇし。きっと何か物が引っ掛かってるんだろう。力任せに開けようとした時、後ろから声を掛けられた。

「何してるの?」

俺以外に図書室に用事がある奴がいたのかと驚きながら振り向いた。

「開かないんだよ。」

ガッと音を立てて、止まるドアを一瞥した彼女は

ふふっ、とイタズラそうな笑みを浮かべた。

「ここ、開くんだよ。」

廊下と垂直になった壁には足元に小さな窓が複数ある。その1つを指差して言った。ここを、潜れってこと?そう思ってる間に彼女はさっさと窓を開けて、四つん這いになって中に入っていく。そしてまたそこから手だけを出して俺にコイコイと手招きをしてきた。これは入らざるを得ない状況か。そおっと頭だけ入れると先程の彼女の姿が見えない。けど、本棚の奥からガサゴソと音がしてるから何かしてるんだろう。よいしょっと体を捻って中に入る。小学生の頃、よくこういうとこくぐったなあ。友達と隠れ鬼とかしてる時にこういうとこくぐり抜けて遊んでた。小学生の時と違って成長したから途中で、はまったりしないか少し心配だ。無事くぐり終えると一番初めに、積み重なった本の山が見えた。その後、本の山の後ろにカーテンが見えて、微妙に空いたカーテンの隙間から光が差し込んで眩しかった。ガタガタンってこの場にそぐわない特別大きな音がして本棚の間から音の原因と思われる彼女を覗きこむとバラバラと落ちた本の山の中でぺたんと座り込んでる彼女。

「何してるの?」

彼女の台詞をそのまま返すと、ずいっと顔の前に一冊の本が差し出される。これ、探してたの、って言う彼女を見て、目線を本に移した。

「魔法の本?」

題名をそのまま読み上げると、彼女はうん、と頷いた。

「私、魔法使えないの。ある日突然使えなくなった。」

いつ頃だっけな…なんて考えてる彼女に聞く。

「なんで。」

「え、いや、知らないよ。突然って言ったじゃん。」

「違ぇよ、なんでそんな話俺にすんのかって。」

「だってこんな話話せる人いないんだもん。いや?」

「…嫌じゃないって言うしかないじゃん、それ。」

そう言うと、彼女は…あーもう彼女彼女めんどくせェ!!!

「名前何?」

「…突然だね。名前はねー…」

彼女は周りを見渡して、片手に触れていた本を優しく持ち上げる。チラリと見えたその本の表紙には『桜の成長』と書かれていた。

「…サクラだよ、君は?」

「俺は…アオ」

その隣の本を指差して話す。『青の声』って小説。

「アオだよ。」

確認するようにもう一度言ってサクラを見ると、サクラは悪そうな笑みでこちらを見てた。俺もサクラにそう見えてるんだろう。それから少しの間そのまま見つめあってた。

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