終章

時には喧嘩もして傷ついたこともあった。

それでも、乗り越えられない壁はなかった。

二人は保護活動の傍ら、想いを伝えられない人達のためも二つの世界を飛び回った。

異形の者を受け入れられるのか心配な人には何ら変わりない生活を送れることを実体験を元に説明して回った。

力を恐れる者には日常生活面においても使うことができ、人を傷つけるための力じゃないことを触れて回った。


愛する気持ちはどの生命体も変わらず持っていた。

問題は表現できるか、できないのか。

繋がり、絆の先に見える世界を見据えて手助けをしていた。


その間にも二人は愛を育み幾つもの可能性を産み、育て、次世代へと託した。


多忙を極め、月日はあっという間に過ぎていった。

「惠末、とうとう時が来たな。」

「出会った時のことがついさっきのよう。」

死期がそこまで来ているのを二人は感じ取っていた。

それでも予測を超えて周りに助けられつつ七年長く生存した。

「初子の成人を見届けられた。それだけでもよしとしようじゃないか。」

二人の鼓動が徐々に弱くなる。

「最期に盛大に花火を打ちあげましょう。」

「そうだな。」

お互いに支え合い立ち上がると、五人の子供達に見守られながら庭へ出る。

二人は向かい合うと最後の口付けを交わした。

光に包まれ融合形態へと姿を変える。

文字通り、全身全霊を右手に込めた。

「一発でいい、持ってくれ!」

視界がボヤけはじめて狙いが定まらない。

「一緒に打ち上げさせて。」

三人が近寄ってきた。

長女の咲夜が両手をしっかりと添え、後継者の男女二人は身体を支えた。

意思を受け継いでいるのを感じた。

「頼む。」

支えられて二人は力の制御に全力を注ぐ。

「世界の未来を頼む!」

声と共に真昼間の空へ高く打ち上がり弾けると夜の花火のように咲き誇った。

「綺麗だな。しっかりと引き継げたかな。」

「綺麗ね。やれることはやったわ。あとは任せましょう。」

想いを放った空を見上げ、立ちながら笑顔で息を引き取っていた。


空に飛び散った想いは世界中に二人の死を伝え、世界、善悪、身分、種族を問わず多くが弔問に訪れてきた。

いくら月日が流れても訪問は続く。

直接見た者はその笑顔を、写真を見た者はその笑顔から感じ取った。

種族が異なっても歩み寄り、愛し合い添い遂げることができるということを世界へしっかりと残していった。


死してもなお二人の影響は世界へ色濃く残り、いつしか二人の功績を讃え作られた碑石には行列ができ、その前で想いを告げると結ばれるという噂が広まっていた。


新しい時代の幕開けへ導いた二人の出会いと生き様を記録した物語である。

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