十狐 真実
戦いから一夜明け、別れ際に渡されたカプセルを飲み込むと声が頭の中に響く。
「聞こえているのが秀耶であるといいのだが・・・。」
環の言霊が封じられていた。
話を整理すると人間と一緒に作った代物で髪の毛などから複製体を作り、魂をも複製するポッドであると同時に治療を行える。
ただ、言えることは複製した魂は欠損だらけで精神が不安定なものが多く、暴走が多発していた。
人間を恨んでいた頃に惠末が奪取し使用していた物も同じタイプである。
しかし、暴走すると力は強大で手に負えるものではなかったが、負の感情がそれを引き起こすことだけハッキリとしていた。
実験が進むうちに記憶を共有させることに成功した。
だが、実際の感情、理解力が追い付かず苦しむものも多かった。
昨日、結界の外に待機していた兵は惠末を基にし感情を排除しコントロールできる量産型であるとも・・・。
何に備えているのか。
秘密裏に作られて戦闘こそはなかったものの、初陣で統率のとれたコントロールであった。何千もの部隊を一人で動かしていたというんだからたまったものじゃない。
いずれの個体にも仮面が装着されていた。
あの嫌な感じは忘れない。
人類を抹殺する必要がないのに未だに惠末は九尾を目指していた。
根が深いのだろうか、なにかを目論む奴がいるのだろうか。
このメッセージには動画が後から添付されていた。
再生すると昨日の神兵が行進する様子が映し出されていた。映像の途中で違和感を感じて何度も見返す。
「この個体だけこっちを向いてる。」
なにかを訴えているようにも見えた。
早い方がいい、環に連絡を取ることにした。
「なあ、環、昨日の神兵を間近で見学させてくれないかな。」
「ああ、わかった。頼んでみよう。」
連絡を取ると急いで支度をした。
万が一に備えて家に細工を施して外出をした。
(神界へ場面が移る)
「すまんな環。あの軍団を見たら興奮しちゃってね、じっくり見せてもらうよ。」
環が門の前で出迎えていた。
「構わんよ。じっくりと神界の戦力を見ていってくれ。お望みであれば戦ってみるかい?」
「それは遠慮しとくよ。」
奥へ案内されると物々しい研究室へたどり着いた。
「ここで量産をしている。見ての通り惠末が基になっている。戦闘力も安定していてコントロールは一人が行なっている。感情がなく意識差もないから連携も抜群らしい。」
そこへ仮面を被った女性が現れる。
「おい、お前ら!!参参参漆番の反応が遅れてるぞ。」
「巫女様のお出ましだ。」
「なんか、あいつ嫌いだ。」
ボソッと呟くと聞こえたか聞こえなかったかこちらを振り向いた。
「来客中であったか、見学とはそなたのことか?」
環が代わりに答える。
「秀耶殿だ。こちらが操者の巫女様だ。」
「秀耶だよろしく。」
「我はこれにて。ゆっくりしてゆくがよい。」
幸い聞こえてないようで環は胸を撫で下ろした。
「肝を冷やしたぞ。」
「正直な感想を言っただけだ。」
「あれだけの軍勢を操っているんだ。気を付けろよ。」
それだけ言うと奥に進んでいく。
警備がさらに厳重な扉までたどり着く。
「保管を開けてくれ。」
そう環が言い放つといくつものロックが解除されて静かに扉が開く。
「この札を身体へ、温めてくれる。」
環から受け取るとさっそく身体に貼る。すでに冷気が立ち込め凍え死にそうだった。
「なんだ、この寒さは。」
「基本は生身と同じ、冷却して体温を下げて代謝をおとしておかないと劣化が早まるらしい。難儀なものよ。」
色々な管が背部に作られた接続部に接続、拘束具で拘束された兵が数えきれないほど並んでいた。
「あれは一部だったのか。」
「これは予備ですよ。」
整備員と思われる人が話しかけてきた。
「自我を持つ者は次々に廃棄される。感情はなし。正直、怖いですよ。いつ暴走するかわからないんですから。」
「そこまでにしておけ。」
環が制止する。
「なあ、環。」
察した環はうなずく。
「会いたいのがいるだけどいいかな。参参参漆番まで案内をお願いできるかな。」
どうも反応が遅れているというのが気になった。
「こちらです。」
エレベーターで更に下層へ降りる。
「モニターを切れるかな。試したいことがある。」
「わかりました。」
降りると整備員はフロア要員に声をかける。
「参参参漆の再調整を行う。念のため機器の交換を行う。新しいのを用意してくれ。」
慌ただしくなるフロア警備要員が増員される。
すぐに機材が届くと準備にはいる。
「交換に五分かかる。せっかくだから近くで見てやってくれ。」
そう言われると近くにより、環が説明しているフリをする。
「参参参漆、モニターは外れて左手だけ死角を作ってある。彼の映像は見た。目覚めてるなら動かしてくれ。」
「私は惠末の連れ合いだ。なにが起こっているのか知りに来た。」
ようやく反応があった。さすがは惠末の複製体だった。左手の人差し指が僅かに規則的に動く。それはまるでモールス信号のようだった。
二人は解読をはじめると心の叫びが聞こえてきた。
【みんなくるしい ころして かいほうして】
【おりじなる さいかそう】
「もうすぐ終わるよ。」
整備員から声がかかる。
「まだその時じゃない耐えてくれ。また来る。」
「ありがとう、興味深いものが見れた。」
「環、惠末に会ってから帰りたいんだけどいいかな?」
「もちろんだ、案内しよう。」
「また見に来てもいいですか?」
「もちろん、いつでも歓迎しますよ。」
秀耶と環は部屋を後にした。
「環、大変なこと聞いちまったな。」
「ああ、よもや・・・。」
「しかし、いつ?元々か?」
「信用するなら疑わねばならん。今までの様子をみるとお主には悪さはしないと思うが注意しとけよ。まずは最下層になにがあるのか確認が先決だな。こちらの調査は任せてくれ。」
そういうと環は札を三枚取り出した。
「先日のやつを改良しておいた。」
手に取るとわかるその力。
一枚は武冑札、もう二枚は力が込められていたが性質が違うようだった。
「この二枚は何が違うの?」
「流石だな。陰と陽のそれぞれの力を詰め込んである。単独でもよし。合わせて使ってもよし、だが力は強大でその身までは保証できんぞ。」
「最終手段か。」
「そうならないように願っている。」
そうこうしている間に部屋の前へ着く。
「ここだ。」
ポッドの中で眠るそれ。それは紛れもなく一緒に過ごした惠末の姿と同じであった。
傷跡もそのままで・・・。
「なあ、彼女が身に付けていた物はどこだ?」
「すぐに確認させよう。」
秀耶は違和感に気付いた。
「(まさか、あれがない?)」」
保管室へ案内され中身を調べる。
(ゴソゴソ)
ポケットの中身も一つ一つ丹念に調べる。
「これで全てだよな。」
「そのはずだ。」
「家も一度調べてみるよ。」
「足りないと・・・。」
静かに頷く。
「ありがとう。門まで送ってくれて。」
鳥居を潜るといつもの日常空間へ出る。
「急がないと・・・。」
走って秀耶は家に帰る。見た目はいつもと同じ外観なのに嫌な予感が止まらない。
家に帰り門を潜ろうとすると阻まれる。
「偽装結界か。」
式神を使って無理矢理こじ開ける。
すると立ち込める煙、燃え盛る炎、黒焦げになった死体。
「やってくれたな・・・。」
黒焦げになった人の形をしたものが喋り出す。
「お前は誰だ!」
「惠末はどこ・・・。」
すると何も喋らなくなり息途絶えていた。
「よかったのか、悪かったのか。」
秀耶は硝煙の立ち込める中はある物を探しをはじめた。
「なんで簡単なことに気付かなかったんだ。」
真っ先に焼け焦げた惠末の部屋を足元に注意して捜索するが見当たらない。
二階を隅々まで探しながら一階へ降りる。
一階も隅々探し回るが見当たらない。
「後はここか・・・。」
暖炉があった場所は見事に吹き飛び、階段も上半分が吹き飛んでいた。
式神を召喚しゆっくり、慎重に下降する。
「さすがにここを吹き飛ばすまではいかなかったか。」
ポケットからイヤリングを取り出し生体認証を解除する。
部屋に入るとあたりを見回すがそれらしきものは見当たらなかった。
「んー、思い違いだったか?」
部屋を後にしようと振り返った。その時だった頭の中に声が聞こえてくる。
「(秀耶、ここよ。)」
「誰?」
周囲を見渡すが誰も見当たらない。
「(ポッドまで来て)」
式神を前にポッドへ慎重に近く。
「(止まって動かないでね。危ないから。)」
何かが動きはじめ鍵が開くような音がけたたましく聞こえてくる。
やがて、音は収まりポッド周辺の床がゆっくりと下降してゆく。
早歩きくらいの速度だろうか一分ほど暗闇を降下すると微かに下の方に光が見えてきた。
「(ああ、やっと愛おしい人に会える。どれだけ待ちわびたことか。)」
「やっと?」
ようやく最下層へ辿り着く。
そこには上にあった装置と同じものがあった。中身を調べよう近づくが見えない壁に阻まれる。
「(この感覚、間違いなく秀耶。ずっと感じていたもの)」
結界が解かれ、秀耶の肩が軽くなる。同時にポッドの扉が開いた。
「(さあ、こちらへ)」
歩みを進める秀耶、近づくに連れてイヤリングが暖かくなってゆく。
秀耶は痩せこけた頬にそっと手を添える。
すると静かに惠末の目が開き涙をこぼす。
「ああ、これが秀耶の感触・・・。温かい。」
「その指輪、あの時の惠末なんだな。」
告白し結婚した。その際に手作りの指輪をプレゼントした。
高価なものではなかったが丹精込めて作ったものであった。
「はい。」
「痩せたな。」
そっと指輪を中指から薬指へ付け替えて頭を撫でる。
涙を拭うと語り出した。
「複製体のことはすでに知ってると思います。元々は人間を滅ぼす為に作りました。訂正のしようもありません。」
「しかし、私あなたと出会い、変わってゆく心に苦しんでおりました。怖かった。でも、揺らいでいた心はもう一度人間を、いえ秀耶だけでも信じようと決心したのです。」
「設備を廃棄しようと動き出したその矢先の出来事でした。見つかり禁忌を犯した者として拘束をうけ通常なら処刑対象。あなたと一緒に暮らしたい。その想いだけで動き、生きることと引き換えに新しい技術を引き渡し大きな過ちを犯してしまいました。」
「人を好いた私は弱みを握られ、秀耶を人質にとられ自由に動くこともままならなくなったのです。」
「やがて実験で魂、精神まで疲弊した私はあなたと会えないならいっそのこと死んでしまおうと思いはじめた時に声が聞こえてきたの。」
(辛いのはあなただけじゃないわ)
複製体へ記憶を埋め込み、意識を共有して操っていた。
心がない人形のはずなのに喋った。
それは個性が生まれたということでもあった。
「幸いなことに抜け殻のような状態になって私の監視は解かれていた。そして、複製体のコントロールは私もしくは同等の者でなければできなかった。動けない私の代わりに単独で動ける者がいてこの機を逃すまいと思い、二〇一号と一緒に動き始めました。」
「コントロール下を離れ暴走しても長く生きれないように調整していたので迷わず制限を外しました。そして地上にも設備の建造をはじめ自分もここに移させました。」
「個性が生まれた者を順次地上の施設へ移し、戦力を蓄えていきましたが問題も発生しました。負の感情しかない者が目覚めるとこの前の漆(なな)号のように暴走しました。でも、判明したことがあり、他者を取り込むことで感情や力を補い九尾になれることもわかりました。」
「仲間、力を取り込み成長していった二〇一号は私の代わりに頑張ってくれましたが、孤独を好む漆(なな)号が他者を取り込み暴走したのは想定外でした。二〇一号も倒れ回収されたのに結界に異常をきたさないことがバレ、ついにこの場所も割れてしまいました。」
「軍勢を前に結界が破られるのも時間の問題でしたが運は味方した。環が術を教え秀耶が万が一に備えて細工をしていってくれた。」
胸に手を当てて秀耶に感謝していた。
「そうか、嫌な予感がしたんだよね。細工しておいてよかったよ。ということは神界に黒幕がいるってことなのか。」
「それがまったくわからないの。」
「環が危ない、最下層にオリジナルがいるって聞いて調べに行ったんだ。」
「巫女が操っているように見せかけているけど、二〇一号を手に入れた事でコントロール手段を手に入れてしまったわ。支配されたら手の打ちようがなくなる急がないと!!」
惠末は身体を動かそうとするが思うように動かず倒れそうになる。
とっさに身体を入れて支える秀耶。
「ごめんね。久しぶりに立ったから・・・。」
「環も心配だけど今は食べてリハビリしないと。あれだけやらかしたんだ。すぐにはこないはず。」
外を警戒しながら食料を買ってきて部屋に籠る。
栄養を取らせるとみるみるうちに顔色が良くなっていく。
「ありがとう、話を信じてくれて。」
「このイヤリングとその指輪が本物だって教えてくれた。」
「ありがとう、大事に肌身離さず持っていてくれて感謝するわ。」
「ねえ、お願いがあるの。秀耶がほしい。」
「こんな時に何を言って・・・。」
「半妖の私にとっては大切なことなの。力が足りないのよ。」
「竜脈があるんだし直接吸えばいいんじゃないの?」
「あのね、そのね、うまく制御できないから注いでもらって運用するのが一番いいの。」
惠末は顔を赤らめもじもじはじめた。
「そのね、・・・をするのが効率いいの。」
「なんて?」
耳を疑い、思わず聞き返した。
「エッチしたいの!」
耳まで真っ赤にして惠末は叫んだ。
「えっ?」
顔を手で覆いながら惠末は説明する。
「体液には力が通っているんだけど、エッチが一番吸収効率が・・・。」
「つまり、直接注ぐのが一番効率が良いと。」
静かに惠末は頷いた。
「隠してちゃ顔が見えないじゃない。」
言葉とともに秀耶は手を掴んでどかすと、顔を真っ直ぐ見つめた。
「私でいいんだな?」
「うん」
その手は少し震えていた。
軽く口付けをすると優しく包み込む。
お互いの鼓動がお互いに伝わってくる。
「秀耶もドキドキしてるね。」
「惠末もな。」
透き通りそうなほど真っ白な肌を隅々まで確かめてゆく。
「んっ!」
尻尾の付け根を触ると不意に声が漏れた。
「弱い所は同じんだな。」
「そりゃ同じよ。」
惠末の震えはいつのまにか収まり息が荒くなっていた。
弱い所を探してまんべなく弄ってゆく。
ある時を境に秀耶の指は濡れ、秀耶の準備も整っていた。
「いっ!」
反射的に秀耶に爪を立て涙を流しながら抱きついていた。
「じきによくなるから。」
ギュッと抱きしめられ身動きは取れないが、惠末の中は求めて続けていた。
痛みも引き、再び惠末は目を開けると指先血がついているのに気付く。
「ごめん、痛かったよね。」
「これくらいなんてことない。」
皮膚を突き破り筋肉にまで達しており、痛くないはずはなかった。
時間が経ち、注ぐ度に惠末の身体も動くようになり、次第に激しく、これまでの時間を埋めるように求め合い行為は夜中までおよんだ。
「ふふっ、お腹いっぱい。」
大事そうに惠末はお腹をさすってみせる。
「ありがと、おかげで回復もできたし力も十分に貯まったわ。」
いつの間にか痩せこけていた頬にも艶が戻りいつの間にか元通りになっていた。
疲れきった二人はそのまま眠りへついた。
何かを焼く匂いで秀耶は目が覚めた。
「おはよう惠末、料理してるのか。」
「うん、せっかく玉子焼きをね。」
「へー、殻ごと焼いてない。」
「もうっ!」
ちょっとむくれた惠末はそれでも可愛かった。
「身体はもういいの?」
「うん、もうすっかり!」
元気な声が返ってきて秀耶は安心した。
ひたすら焼き続け玉子焼きの山が出来上がり満面の笑みで持ってくる。
「初めての手料理食べてくれる?」
秀耶は箸で切り分けて挟む・・・。
惠末にとっては緊張の瞬間だった。
「あ、おいしい。出汁巻だ。」
台所の奥に黒い山が出来上がっていたが目を瞑ることにした。
「惠末も一緒に食べよ。」
「うん、いただきます!」
惠末も一口たべる。
「ん~、上手にできてよかった。」
「ところで台所はなかったと思うんだけど、どうしたの?」
「ん?作った。火は術でなんとかなるし?」
「ああ、作った、作ったのね。ほんと使い方次第なんだな。」
お腹も一段落ついたところで今後の話をはじめる。
「送りこんだ部隊が全滅して焦ってるはず。だけど、目的がイマイチ見えてこないの。」
「だよな、考えても理由が見当たらないんだよな。」
「なんにせよ、混乱しているなか、乗り込まない手はないよね。」
(場面は神界へ)
「大国主命殿、兵を無断使用しただけでなく数多く失ったそうではないか。どういう事か説明を求む。」
神界では管理者である大国主命の査問が執り行われていた。
「私は知らん。」
「そんなわけはあるまい。お主の直轄であろう。」
査問は続くが進展せず平行線を辿っていた。
(場面は元に戻る)
二人は準備をしていた。
「惠末、環からもらった改良版の札。」
武冑札を渡す。
「使い方は大丈夫?」
「(大丈夫)だと思う。」
いつでも使えるように身体へ貼り付けてゆく。
「あとはこれ。」
合わせて使えばどうなるかわからない陰と陽の爆弾札。
「それは秀耶が持ってて、戻らない時はお願いね。」
「わかった。」
準備を終えると二人は家を後にする。
「行ってきます。」
門をくぐると気配を察知していた神界は兵を並べ待ち構え一触即発。
ピリピリとした空気で圧倒されそうだった。
「通せ!!」
奥から聞こえる声。その声には聞き覚えがあった。
兵が通り道を開けると仮面を付けた巫女が姿を見せる。
「そこの男は私の客人だ。一緒に来い、聞きたいことがある。」
「私も一緒に行くわ。」
「お前は・・・、だめだ。」
意味深に吐き捨てると秀耶と惠末を引き離す。
「惠末、一人で大丈夫だから。」
惠末に微笑みかけ巫女と無言のまま奥へ進んでいくと一つの部屋にたどり着き中へ入った。
「適当にかけてくれ。」
「君の部屋か。」
「ここなら話も聞かれてるまい。」
扉に鍵をかけて仮面を外すと現れる見慣れた顔。
「ああ、そうか。同質の者にしかって言ってたっけか。」
「思っている通り私は複製体で操者だ。大国主命様が捕まり査問を受けている。お前たちの家への襲撃、乗り込んできたことに関係があるのか?」
「オリジナルと私を消す為にけしかけてきたと思ったんだけど、何をしたいのか見えてこないんだ。」
「操者は私だけで動かせるわけもないんだが・・・。なのになぜ私に疑いがかからない?。」
「あー、一つ言いにくいことが・・・。」
言っていいものか秀耶は考え込む
「もったえぶらずに言え。」
「操者と呼ばれてるようだけど、君は何も操作してないんだ。」
「なんだと?!」
「声が大きい。」
「すまん。」
「ここの下層の司令塔ポッドって表現したらいいのかな。実はダミーでね。全部、外に来ているオリジナルの惠末で君の操作情報を元に外から動かしていたんだ。」
「まあ、今は離れたから君が直接操作できるんだけどね。」
「だから、反応が悪かったり、覗かれているような感じがしたのはそれだったのか。」
「そう、だから調べても君は疑われなかった。責任者の大国主命が疑われてるんだ。その目と反応を見てる限り君も操られているようでもないしね。」
「だとしたら、襲撃した奴らは誰が・・・。」
「とりあえず、惠末も中に入れてもらってもいいかな。」
「ああ、すまん。気が動転してた。手配しよう。」
ほどなくして惠末が到着した。
「惠末、いらっしゃい。」
「いらっしゃいじゃない!」
一人ぼっちで待たされていた惠末は殺気立っており、くつろいでいた秀耶にご立腹だった。それをよそに秀耶はマイペースに話し出す。
「今、大国主命が捕まっているがおそらく無実。この巫女も敵じゃない。」
「ならば誰が・・・。」
「それが分からないから困ってる。」
秀耶はお茶を入れて惠末に手渡す。
「すんなりと中に入れたわけだし、一旦、落ち着こう。暴力を使わないにこしたことはない。」
「あ、おいしい。」
惠末はお茶をすすり言葉を漏らす。
「だろ、これでほっとしないわけがない。」
あまりにも二人がマイペースすぎて巫女が言葉を挟む。
「今後の方針は決まったか?」
「とりあえず参参参漆に逢いたい。」
「ああ、反応が悪い個体か。どうかしたのか?」
「ほぼ全員だとは思うんだけど、意思の芽生えはじめている者、覚醒している者がいるんだ、映像を見て気になったから確かめに来たんだよ。」
「それで見学か・・・。」
巫女はやってしまったという顔をしながら言葉を続けた。
「すまん、突然のメンテナンスが怪しくて突き出してしまった。」
「それは仕方ないことだ。実際、コソコソやってたしな。」
「とりあえず、その参参参漆へ会いに行きましょう。」
「そうしますか。」
巫女は仮面を付け直し何があってもいいように準備をはじめる。
「そういえば君はいつから?」
「母親の代にはこうやって意思はあったからな稼働はもっと前じゃないかな。」
「母親の代には?」
「長年干渉できないようになってた記録領域があってな。つい最近解けたのだが、だいぶ前だったんだ。それと言付(ことづ)かったことがある。」
巫女は記録の内容を語り出した。
いつしか神族は己らでは子孫を残せないようになっていた。
神格化の適合者も少なく数を増やすのにも限界があった。
そして、神格化した者もことごとく生殖機能を失い原因不明であった。
子供が作れない知りうちひしがれた絶望していた女がいた。神界を抜け出し子供を求め人間界を彷徨っていた。
ある雨の日、山を彷徨っていると生体研究をしていた男と出会い、子供ができない悩みを打ち明けた。
その男は優しくしてくれ、得体の知れない女を時間が許す限り家(ここ)に居ていいと声をかけて居場所を与えてくれた。
一緒に過ごしているうちに女は徐々に心を開いていき男と話すようになった。
やがて、女は男が遺伝子学の研究をしていることを知り、自分の正体を明かす事を決意した。
男に打ち明けると一緒に神界の危機を救いたいと言ってくれた。
数多くの光と影が関わり色んな問題があったが、乗り越えて作りあげたのが遺伝子情報を元に複製を作るポッドであった。
男にとってはこれまでにない飛躍的な進歩であった。
しかし、それは幕開であった。
研究を通して二人はお互いのことを深く知り、やがて恋に落ちた。
女は生殖能力を失ったままであったが男の子供が欲しくなり、日に日にその気持ちは高まっていた。それは男も同じであった。
やがて、子供がほしくてたまらなくなった二人。
女は自分の身体を使い実験をはじめる。
遺伝子操作、複製体からの移植をはじめ様々な方法を試した。
女は神力を使い果たす度に自分の複製体の核を取り込んで補給していた。
ある時、死亡を確認しないまま一体の核を取り込んだ。すると身体に違和感を感じ突然倒れ高熱にうなされた。
「無理が祟ったかな。」
男は話しかけた。
「しばらくゆっくり休みなよ。」
代わりに男は研究を続けた。
数年経過したある日のことだった。
「やったぞ!」
男は女のところへ飛んできた。
「生殖機能の兆候が!」
女は涙を流しながら喜んだ。
生きたままの核が突然変異のきっかけを与えたのかは今でもわからないが、女は一時的に卵巣機能を取り戻し子供を生んでいた。
偶然にも研究員の一人が立ち聞きをし外部へそのことを漏らした。
人間と神界は強力関係を結んでいた関係は突如劣悪になり、『生殖機能を持ち神力を持つ子供』は架け橋になるどころか奪い合い戦争へと発展した。
人間は神の力の研究、具現化に成功し同等の力も手に入れていた。双方へ大量に死の山を築く大惨事となった。
二人は責任を感じ子供を隠すことを決意した。
女は絶大な信頼を置いていた大国主命の元へ趣き相談受けると快く引き受けた。
同時に子供との別れでもあった。
人間界の施設から連れ出し向かう最中にそれは起こった。
事情を知らぬ末端の人間は研究知識のある両親だけを連れ去り子供は置いていった。
この頃、半妖を見世物にするのが流行っていた。
偶然にも保護した秀耶の話に合わせて、その一向に連れ去られたと惠末の記憶を書き換え塗り潰した。
子供を失った責任を取らされ女は私的利用、技術流出、神界を危機に陥れた責任をとらされ表向きは処刑されることになった。
大国主命はそれをよしとせず、身代わりを処刑させて時が来るまで人知れぬ場所で封印することにした。
男は人間界へ連れていかれたが行方はわからない。
その頃からだった。大国主命は配下全員に同じ仮面、衣を着用させ同一人物にしか見えないように術を施しその中で惠末を匿っていた。
幸いなことに秀耶は死の山として恐れられるようになった山に住んでいた。
そのため人間は滅多なことでは寄り付かず外の世界を見せるにはよい場所だった。
毎日の外出はさせられなかったが、それでも惠末は楽しみにして会いに出かけていた。
順調に成長していき、惠末はやがて母親と同じように人間と恋に落ちた。
このまま静かに時が過ぎれきれと何度願っただろうか数えきれない。
あめ色事件を機に正体がバレて隠し通すことができなくなった。
情報提供と引き換えに身の安全を保証してもらったが安心はできなかった。
やがて機能を持った複製体が生まれはじめると兵器としての転用もはじまり、オリジナルは不要、消してしまおうという声が届くようになった。
だが、私は知っている。複製体にも意思が芽生えはじめているということを・・・。
彼女たちを解放し一人でも多く助けたい。それも願いになっていた。
未だに解決方法も争乱の首謀者も検討がつかない。
だが、先刻回収した焼死体を解析すると神界では使っていない構造が見られた。
おそらく、あの男が関与していると私は考えている。
「これが万が一に備えて私に植えつけられていた記録の全てだ。」
「嘘でしょ、私が・・・。」
衝撃の事実を受けて脱力する惠末。
「ともかく、味方が多いに越したことはない。この事実を話して二人を助けに行こう。」
最高神、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の神殿を訪れ訴えようとするが門前払いをくらう。
秀耶は外から精一杯叫び続ける。
「頼む!話だけでも聞いてくれ!」
突如、背後に強大な気配を感じて振り返る。
「大国主命は良い友に出会えたようだな」
「貴方は?」
「素戔嗚尊(スサノオノミコト)。悪い癖だな、昔から一人で抱え込みおって。」
門番に向けて言い放つ。
「開けろ!」
「今は非常時、許可がなければ素戔嗚尊(スサノオノミコト)様でもなりませぬ。」
「ならば、この力で押し通る。」
剣を抜き身構えた瞬間、奥から声が轟く。
「よい!通せ!」
すると門番は渋々と門を開き中へ入れた。
「三人とも離れるなよ。」
神殿の奥へ進むと天照大御神(アマテラスオオミカミ)は広間で玉座に腰をかけ待っていた。
「秩序は保たねばならぬ。偽りを申せばその首、この場で貰い受けるぞ。」
惠末を求め戦争が始まったこと、母親が惠末を大国主命へ預け隠したこと、自宅への襲撃は神界が関与してないことを包み隠さず話した。
「なるほど、では誰が犯人だ。」
「はい、それですがおそらくは惠末の父親が関与している可能性が高いです。」
「あめ色事件が起こってから動きはじめました。九尾の惠末を抑えるには複製体では役不足でとても襲撃をかけたとは思えない。母親は死んだと思わされ残された家族は子供一人で妻と共に生きた証を取り戻したい。ただそれだけだったと思うんです。」
「なるほど、我が子を・・・、その一心でのことか。子を成せぬ今の我々には分からぬ感情か・・・。だが、周囲を巻き込み死者を出したことは到底許されることではない。」
その時だった。
外で爆破音が聞こえると同時に伝令が入ってくる。
「何事だ。」
「申し上げます!下界より進行!転送門へ侵攻、すでに第一ノ門を突破され抑えられません!」
「行先は?」
「ここでしょうね。」
秀耶は天照大御神(アマテラスオオミカミ)の問いに答えながら持ってきた荷物を広げはじめると身につけはじめた。
「惠末、心の準備は・・・。出来てるわけないか。」
目の前に映しだされて群勢の奥に父親の顔を見つけ膝をついて呆然としていた。
襲撃を受け、神界が混乱している中、秀耶は声をあげた。
「天照(アマテラス)!!」
「貴様!人間の分際で!」
「よい!」
天照大御神は一括すると秀耶を見つめ声を待った。
「大国主命と環、それと参参参漆をここへ。」
「わかった、急げ!」
少しすると二人がやってきた。
「よお、環。」
挨拶をする秀耶に冷静に応える環であった。
「よお、じゃない。処刑されるところだったぞ。」
「何が起こっているのか説明してくれ。」
大国主命が説明を求め、これまでの経緯を二人に話す。
「惠末は見ての通りだ。期待はできない。数も圧倒的に足りない。そこで吉と出るか凶と出るか、彼女たち(複製体)のくびきを解き放ってほしい。」
「正気か!!」
天照大御神(アマテラスオオミカミ)も声をあげて驚いた。
「解き放ってほしいとは言ったが、殆どが自我を持っているんだ。もちろん、まだ目覚めてない者もいるよ。参参参漆を連れてきてもらったのもそのためさ。」
「まさか?」
「そのまさかです。くびきを解き放ってほしい。皆んな苦しんでいるんだ。どう転ぶかは分からないが個々に目覚める能力差があるんだ。戦闘に向かないのもいるし、バラツキがあるまま戦うのは危険だよ。」
「危険だ、危険すぎる。」
「その真実を見極めてもらうためにも連れてきてもらった。今までに出会った複製体も根から悪い奴はいなかった。」
真っ直ぐ、天照大御神を見つめ訴えかける。
少し考え込むと頷き大国主命へ命じた。
「わかった、まずはこやつだけだ。」
「その必要はありません。既に自律しています。」
「なんだと!」
命令なしに参参参漆が仮面を外すと素顔が現れ、開かれた瞳は真っ直ぐに秀耶を見ていた。
「やあ、目覚めの気分はどうだい?」
秀耶はにっこりと微笑みかけた。
「あの時の・・・。」
「待たせたね。時間がないんだ、皆んながどういう状態なのか話してほしい。」
コクンと頷くと喋りはじめた。
「私が目覚めたのは三年前、だけど先に生まれてた子たちはもっと前から目覚めていて、自分の意思とは関係なく殺しの道具として使われ、自由を奪われることに苦痛を感じてたんです。制御下を離れ操られたフリをしてるのは今はおそらく私だけ。」
「なぜだ。」
「逃げ出したものは全員殺された。逃げ出せば同胞と戦わなければいけなくなる。いっそのこと死んでしまおうと決意した。そう矢先にこの方が現れました。」
語り続けるその表情は穏やかで胸に手を当て微笑んでいた。
「そのような報告はないな。兵器転用の為に隠蔽を計ったか。お主に偽りはなしか・・・。兵の数が足りないのも事実。」
少しの間、沈黙が流れると天照大御神(アマテラスオオミカミ)は重い口を開いた。
「術を解き制御下から解き放つ。すぐに準備に入れ。それと素戔嗚尊(スサノオノミコト)、万が一の時は遠慮は要らぬ。」
「御意。」
「参参参漆、行ってくれ。」
突然の言葉にほうけている参参参漆の手を握り引っ張る。
「君にも協力してもらわないと。」
「え?」
「え?じゃないよ。みんなのリーダーは君に任せるよ。」
「そんな、あんな大勢・・・。」
「出来るさ、自らくびきを解き放ち、一番近くで声を聞いていた。なにより、素戔嗚尊(スサノオノミコト)が補助に付いていてくれる。」
「そうだね、やれるだけやってみる。」
頷くと素戔嗚尊(スサノオノミコト)と一緒に保管庫へ向かった。
「さて、我々ですが解放が終わり出撃するまではなんとしても持たせねばなりませんか・・・。」
「そこで、混乱していると思われているうちに強襲を仕掛け戦力を大幅に削ぎたいと思います。」
「そんな戦力がどこに・・・。」
天照大御神(アマテラスオオミカミ)は記憶を手繰っていた。
秀耶は二枚の札を手に取ると環が反応する。
「その札!」
「使わずに済んだ。」
「これならいける。」
「この二枚、組み合わせて使うと大爆破を起こす。これを式神に仕込んで特攻、自爆させる。いたってシンプルだ。援護をお願いしたい。」
静かに環が手をあげる。
「守護は私が担当しよう。」
「おねがい。今こそ成果を見せる時だね。」
「なぜ君は人間なのに力が使える?」
天照大御神(アマテラスオオミカミ)は疑問に思い尋ね、環が援護の支度をはじめる。
「いつの間にか感じることができて、最初はほんのり感じる程度でした。絶対的に使えるわけじゃありません。竜脈とかあればって程度です。使い方は事件以来、環からきっちり仕込んでもらいました。」
「おそらくは出会った際に噛まれ、唾液や細胞が体内に入ったのがキッカケでしょう。」
環が補足を入れる。
「わかった。そちらは任せる。」
「我らはその間、侵入者の迎撃に当たる。」
細かく打ち合わせる時間はない。大まかに打ち合わせると各々準備に取り掛かる。
その最中(さなか)、秀耶は大国主命に声をかける。
「大国主命様。」
「呼び捨てでよい。私はあの子の親代わり、夫となる者であればなおさらだ。遠慮は要らん。」
「では、義父(とう)さん。少し惠末のことをお願いします。」
「惠末、先に行ってるよ。」
そう声をかけると武冑札で防具化させた式神を身に纏うと環と共に前線へ移動した。
「義父さんか・・・。偶然、いや必然か。良き男と出会えたな惠末、大切にするんだぞ。」
大国主命は惠末を抱きかかえながら頭をそっと撫で医療班、自分の持ち場へ向かった。
噂とは恐ろしいものだ。
外へ出ると士気が上がる。
『小隊規模を木っ端微塵爆弾魔』として名が轟いていた。
援軍の到着に歓喜し、色々な声が聞こえてきた。
「なあ、環。狂人扱いになってるんですけど・・・。」
「気にするな、噂は一人歩きするものだ。」
現場指揮官が声をかけてくる。
「こちらへどうぞ。」
「いや、おかげで盛り返しました。これでまだ戦える。」
「それほどでも。」
陣の中へ案内される二人。
「作戦概要は伺っています。」
「そう、送りこまれ続ける部隊ごと転送陣を吹き飛ばす。」
深刻な顔をしながら秀耶は言葉を続ける。
「問題は効果範囲がわからないこと。巻き込まれないように皆は防御を張ってほしい。」
「わかった。」
「できるだけ強いものを頼む。」
「では、秀耶。始めるとしよう。」
秀耶は札を取り出しなるべく小さい式神を召喚する。
肝となる札を二枚持たせると起動させる。するとすさまじい力が伝わってくる。
「頼むぞ!」
秀耶の掛け声と共に環が式神の守護をはじめると飛び立たせる。
案の定、危険を察知した敵は式神に襲いかかってきた。
「三分だ。それ以上は持たない。」
「わかった。」
秀耶は目を瞑り、式神から見える視界に集中する。
更に精度を増して避けてゆくが敵にとっても要の場所となるのだろう。攻撃がどんどん激しくなっていく。
「もう少し、もう少し耐えてくれ。」
なかなか目標地点に到達させてくれず、たまらず上空へ退避する。
「空気を流すように正面だけに集中展開できる?」
「もちろんだ。」
「合図をしたら頼む。」
コントロール限界まで上昇させると急降下させた。
「お願い。」
すぐに音速を超え、今度は多くの攻撃を受け流しながら目標地点へどんどん降下していく。
弾幕をくぐり抜け群衆へ突っ込んだ瞬間に起爆させた。
白い光と黒い光が混ざり合い反発する力が想定以上の大爆発を引き起こす。
「防壁全開!!」
目に見えるくらいハッキリとしたものが何層も展開されていたが、一層、一層、時間をかけて崩壊してゆく。
爆発から一分くらい経った頃だろうか轟音も収まり、余波も収まってきた。
予定以上の威力だった。味方を少し巻き込んだもののギリギリのところで持ちこたえ、大半の戦力を削ぎ補給路を絶つことに成功した。
「うぉーーーー!!」
前線は歓喜に沸き突撃し残存勢力を確実に減らしていく。
「お見事です。噂に偽りなしですね。」
「そりゃどうも!」
一仕事を終え二人は座り込む。
「お二人はお休みください。共に前線で戦ってきます。」
そう言って指揮官は陣を後にした。
「おつかれ、環。」
「おつかれ。後は皆んなに任せるとしよう。しばらく動けそうにない。」
「だな。」
次々と撃退報告が入ってきて胸を撫で下ろした。
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