六狐 惠末と惠末のちカレー

神界に運ばれ一命を取り止めた惠末(えま)。

意識が戻らないこと以外は正常だとわかり安堵する秀耶(しゅうや)。

元人間の環(たまき)と出会い久しぶりに他人との食事を楽しみ夜を過ごした。

神界の空気にもなれ体調は万全、舞台は整った。


「おはよう、環。」

「秀耶、おはよう。」

元は人間だったからか環と馴染むのに時間はかからなかった。

「さて、環、ここからだな。」

「声が届かないのは困ったものだ。」

「とりあえず、好物の鬼灯・・・。」

「これで目覚めたら苦労はしないわな。」

「カレーは昨日から嗅いでるだろうし・・・。」

「おつまみに最適って感動してた豆腐餻・・・。」

他にも大好きな食べ物を唇に乗せてみるが効果はない

「ん~、口すら開けないな。まあ、これで戻ったら苦労はしないか・・・。」

その傍らで環は片っ端から術式を試し続けていた。

「やはり、なんともならんか・・・。」


「私が必要とされ、呼ばれた理由か。」

秀耶は頭を抱えていた。

「一旦、家に戻ってヒント探してみるよ。」

「それも一つの手か。私も書庫で文献をもう一度洗いなおしてみよう。」

環はそういうと秀耶に一枚の紙を渡した。

「通行手形のようなものだ。帰還の際には門番に見せるとよい。」

「二、三日は帰れないと思うからよろしくね。」

「承った。」

環は式神を呼び出して残し、文献を調べるため席を外した。


(秀耶は人間界に戻る)

「あー、空気が不味い・・・。」

いかに神界が綺麗な場所か秀耶はその身に感じた。

痕跡を探しながら彼女と歩んだ軌跡を辿った。


自宅までたどり着くが、ここまで手がかりは見つからない。

「ちょっと休むか。」

一日しか経っていないに、だいぶ家を空けていたような感じがした。

お茶を入れると瓶に入るだけ鬼灯のドライフルーツを詰め込んだ。

惠末の部屋に入ると彼女の香りが漂ってくる。

まじまじと見るのは初めてだった。

初めて一緒に撮った写真が写真立てに入っているのを見つけた。

「なんでこれにしたんだか。」

写真というものを知らず、ガチガチに緊張してたやつだった。

残りの写真は一枚一枚丁寧にアルバムに収まっていた。

アルバムを棚に仕舞っていると視界に飛び込む。

「これは持っていかないとな。」

惠末の分身であるイヤリングを手に取るとポケットへと入れた。

自宅にも見当たらず後にする。


残るは最初に出会った山・・・。

出会い、最初に一緒に過ごした懐かしき家へ向かう。


「いや~、遠いな。」

相変わらず、人は来ず、獣の形跡しかなった。

頑丈すぎる冷蔵庫だけはその形を保っていた。

「懐かしいな。直せって怒られてたっけな。」

しかし、違和感を覚える秀耶。

それがなんなのかよくわからなかった。


獣たちによって荒らされた室内を歩き回る。

よく一緒に過ごした二階部屋の窓から外を見渡し休憩していると物音が聞こえた。

確認しようと廊下を覗こうとすると熊に遭遇する。

互いに驚くも熊が先に手を出す。

「ちょっ、勘弁!!」

叫びながら避ける秀耶。

熊の爪先が頰をかすめた。

入り口は塞がれていた。当然後ろへ下がるしかない。

「さあ、どうする。」

部屋に入ってきた熊は秀耶の様子を伺う。

すると立ち上がり、直上から身体ごと手を振り下ろし殺しにかかった。

二発目もかろうじて回避し着地する。

その時だった。

熊の手が床に当たった瞬間、腐っていた床が抜け共に一階へ落下する。


破片が腹に突き刺さり悲鳴をあげる熊。

落ちた衝撃で足をくじき動けなくなる秀耶。

「くそっ、(熊が)立ち上がったら今度こそ終わりだ。」

電話は圏外。繋がったとしても救援が間に合う場所でもなかった。

「ここで死ぬわけには・・・」

這い蹲(つくば)り、開かずの冷蔵庫に希望を託す。

コンセントを抜き、レバーに手をかける。

「あけーーーっ!!」

呼応するかのように冷蔵庫の扉がすんなりと開く。それと同時に再び熊も立ち上がった。


「あーーーっ!!」

秀耶は絶叫した。それは熊に対してではなかった。

「人間!?」

なぜ冷蔵庫の中にいるのか不明だった。

秀耶は衝撃のあまり身動きが取れなくなっていた。


熊は声にびっくりして引き下がり警戒したが、なにも起こらないのがわかると流血しながらも着実に歩みを進めていた。

秀耶は我に返り、その姿を確認する。

見覚えのある髪、耳、鼻、口、目、手、足、体。

少し痩せ細っていたが惠末とそっくりであった。

いや、惠末と同じであった。

違和感の謎が解ける。

改めて周りを見渡すと冷蔵庫を中心に一メートル四方の床に塵が積もっていなかった。それどころか朽ちてさえいなかった。

「結界か。」

次の瞬間、容赦なく熊が襲いかかる。

驚き、よろめいた拍子につまずき、ポケットからイヤリングが惠末らしきそれに飛んでいった。

うっすらと目を開け喋りはじめ、それはイヤリングを握りしめた。

「ねむりをさまたげるのは・・・、だれだ!!」

それは唐突に叫び出す。

秀耶が迫り来る熊を振り返ると視線を追うようにそれは熊を見つめた。

目を見開くと、突如として床が変形し防壁が展開される。

頭から激突し、熊は気を失った。


穏やかな表情に戻る。

「おぬしはだれだ。」

まだ完全には目覚めていないようだった。

「私は秀耶。この家の持ち主だ。」

「しゅうや・・・。はて、どこかで聞いたような・・・。」

「その身体、知っている人・・・、惠末とそっくりなんだ。だれなんだ?」

「ああ、そうだった。わたしは惠末であり、惠末でない。」

「おぬしは惠末のなんだ?」

匂いを嗅ぎはじめた。

「失礼するぞ。」

ズボンの右ポケットを探りはじめた。

「匂いの元はこれか。」

それはさきほど落ちたイヤリングの片割れを取り出して身につけて、からかいはじめた。

「どうだ?瓜二つか?」

容姿は同じで似合わないはずがなかった。

だが、惠末ではなかった。

秀耶は静かに怒った。

「かえせ・・・。」

「ん?」

「返せといった!!」

言い終わる前に環から渡された札で式神を召喚し、押さえつけさせて奪い取った。

それは呆気にとられた。

「ほう、式神を扱えるとはね。すまん。そんなに怒るとは思わなかった。」

軽く式神を振り払い、正座して謝ってきた。

「惠末であり惠末でないというのは本当さ。彼女とは記憶を共有している。だが、途中から繋がらなくてな、仮面と付けたあたりからの記憶がわからんのさ。」

鋭い目つきで秀耶の目を覗き込んだ。

「なにがあった。」


秀耶は事の顛末(てんまつ)を話はじめた。

「そうか、そんなことが。ご苦労じゃったな。」

「私は彼女に何かあった時の・・・。ん~、こういったら聞こえは悪いんだが正直に言っておこう。彼女の予備の器とでも言っておこうか。」

「まさか、神と戦ってたとは思いもしなかったけどな。」

「さて、ここに来たということは我が必要になったのであろう。」

それは少し呆れていた。

「いや、こんなことになってるなんて知らなかった。閉じこもった意識を取り戻す方法、そのヒントを探しに訪れただけなんだ。」


「それならば問題はない。お主は想い人だからな。」

「見えてないようだが、想い人との確かな絆がないと結ばれない神力糸がここから出ててな、これは外だけじゃなく中までつながっている。」

右手を手に取り小指の先端を指していた。

「辿れば自ずと解決方法が見つかるはずさ。早く戻っておやりと言いたいところだが、その足をなんとかせねばな。」

秀耶はすっかり痛みを忘れていた。

「いっ!」

それが触れると痛みを思い出し座りこんだ。

「ふむ、捻った際にヒビも入ったようだな。しかたない、治してやろう。」

手をかざすとじきに痛みも腫れもすっかりなくなった。

冷蔵庫から出てこなかったので見えていなかったが、出て立ち上がると産まれたままの姿であった。

「・・・」

秀耶は無言で上着を差し出す。

「あ~、ワシはこのままでもよいんだがな、人間とはめんどくさい生き物じゃの。」

それは羞恥心を持ち合わせていなかった。

「服は自分で作れるから要らんぞ。」

そういうとボロボロになった落ちていたカーテンに手を触れた。

共有された記憶を辿り、見覚えのある服へと変化させていく。

「うん、最初にお主が惠末にあげたパーカーだな。想いが濃く鮮明に作れるからな。」

「気に入っていてボロボロだけど捨てられないらしいがな。」

「そんなに気に入ってくれていたのか。だからといってそれでなくても・・・。」

「あくまでも知っていることしか再現できないからな。あまり不完全なものを作って途中で脱げて全裸になっても知らんぞ?」

「それはそうと、ポケットの一つくれぬか?鬼灯の実だろ?何年も食べずに寝てたから腹減ったぞ。」

鼻も効くらしい。秀耶は差し出すことにした。

「干してあるものを食すのは初めてだな。」

「ん~、なるほどな。摘まみ食いして引っぱたかれたのも納得だな。」

それは意地悪そうに笑った。

同じ身体、記憶を持っていたが、惠末とは雰囲気も全く違った。

秀耶にとって少し苦手なタイプかもしれなかった。

「不快か?邪険にするな、こうやって過せる時間もそう長くはない。」

些細な表情の変化を読み取っていた。

「ん?それはどういう?」

「時がくればわかることだ。」

「それよりだ。今日の残りの時間をくれぬか?」

さきほどまでのお茶らけた雰囲気とうって変わり引き締まり空気が変わった。

「彼女が護ろう人、世界をしっかりとこの眼で見ておきたい。」

一刻も早く戻りたかったが、何か覚悟を決めたような眼は秀耶の心を動かした。

「わかった。」

「時間も限られておるし、家と特に記憶に残っている場所だけでよいからな。」


連れて軌跡を辿る。少し寂しそうな目をして話はじめた。

「ありがとう。これが彼女か。」

「最後にもう一つだけ鬼灯をいただけないか。」

「ああ、もちろんだ。」

袋から取り出し、それの口に放り込んだ。

「ああ、甘酸っぱい。恋とはどんなものなのか。」

「生きてればそのうちわかるさ。」

「そうだな・・・。」

遠い目をしたそれはあの時の彼女と同じ姿であった。


「さて、門へ向かうとしよう。」

一歩踏み出した瞬間に何もないところで躓き、転ぶ。

「ちっ、力を行使したからか。」

舌打ちしながら立ち上がった。

「少々急ぐぞ。」

秀耶を抱き抱え屋根伝いに飛びながら神社へ急いだ。

鍵を開け、神界への扉を開く。

先日とは違う場所へ出た。

門の奥にある建物は大国主命の神殿だった。

門番と思わしき影が言い放つ。

「半妖と人間が来る場所ではない。早々に立ち去れ、さもなくば・・・」

言い終わるのを待たず、ポケットより渡された紙を取り出し見せる。

「どこでそれを!」

札を見て驚き言葉に詰まった。

「急いでいる。通してくれ。」

そう言うと静かに門が開きはじめる。

通れる幅まで開くと、それは加速し中へ突っ込んだ。

「雨・・・?」

頬を拭うと赤く鉄臭かった。

見上げるとそれの身体に亀裂が入りはじめていた。

「先の治療で使いすぎてな。単体では神力の補充もできんときた。」

「まさか、おまえ・・・。」

「自我が目覚め暴走した時のために不完全なのさ。」


彼女がいる古屋が見えてきた。

とても止まれる速度じゃなかった。

「突っ込むぞーーー!!」

環は声に気付くと札を手にし、宙へほおると網が現れた。

そこへ二人は突っ込んだ。

ギチギチ音を立てる網。

「助かった・・・。」

「瓜二つ、血だらけのその方は・・・」

さすがは術師、冷静に尋ねてきた。

「環、話は後だ。」

「それで、何をすれば?」

「身体を重ねて両手を握れ。後はこちらで送り込み引き戻す。」


「術師殿、力をお借りしたい。私に神力を注いでほしい。自分では取り込めんのだ。」

環はこちらへ顔を向けた。

「頼む。」

頷きながら秀耶は答えた。

札をそれの背に貼り、手をかざすと注がれはじめる。

「主人(あるじ)よ。ゆくぞ」

声がかかると同時に瞼が重くなっていく・・・。


(惠末の精神世界へ場面は移る)

秀耶が目を冷ますと闇の中にいた。

今度はハッキリと見える指先の光の糸。

「これが言ってたやつか・・・。」

糸を辿ろうとするがうまく進まない。

幸いなことに糸を手繰り寄せて移動することができた。

しばらくすると一際に明るい場所が見え、球体の中心に惠末がいた。

今までいた暗い空間から何か飛び出した影がその場所へ向かってゆく。

いや、秀耶が影の集合体の中にいたのだった。

それは外部から身体の支配を目論む者の刺客であった。

だが、何かに阻まれ球体に触れた瞬間に焼失していった。

「うわ、こんなことになってたのか。」

秀耶には見向きもせずに一心不乱に影は突進していく。

拒絶の力は文字通り全てを拒んでいた。


続けて糸を辿ると背後に回った。すると窪みを見つけた。

それは見覚えのある形だった。

「これ、私だな・・・。」

答えはすぐに出た。

前にいきなり突き落とされ型を取られた人型にそっくりだった。

「これにハマれってか・・・」

唾を飲む。

力を持つ影でさえ一瞬で消失するほどの力。決して火傷では済まない。

秀耶はどうなるのかまったく想像がつかなかった。

ポケットからイヤリングを取り出し、見つめて右手で握りしめた。

秀耶は覚悟を決めて窪みへ身体をはめこんだ。

「あつ・・・くない?温かい・・・。」

いつの間にかイヤリングは白く光りを放ち、暖く、結界が優しく身体を包みこまれ、そのまま身を委ねることにした。

同じ力は引き寄せられ拒絶されることなく徐々に接触面が融合していった。

結界同士の接地面がなくなり、倒れこみそうになるが無事に内側へ入ることができた。

秀耶は惠末に駆け寄った。

後ろからそっと包み込み声をかけた。

「すべて終わらそう。帰ってこい。」

鼓動が伝わってくるような気がした。

惠末の目がうっすらと開く。


同時に包んでいた結界が弾け散り飛び、無数の影を切り裂いてゆく。

惠末が鋭い目つきで睨みつけると影は消えて無くなり、砕け散った結界がダイヤモンドダストのように舞い、二人の再開を祝福するかのようであった。


「ありがとう。きっとここまで来ると信じてた。」

今にも泣き出しそうだった。

それ以上の言葉はいらなかった。

向かい合わせになり思いっきり抱きついてきた。

秀耶は優しく頭を撫でると涙を流しながらも嬉しそうにして尻尾を振っていた。


(一方外では)

「長い、何をしている。」

「変化なしだな。」

それと環はただ待つしかなかった。

それは右手を見つめはじめた。

稼働限界が近づき白化がはじまる。

砂のように少しずつ崩壊していた。

「限界が近いな。今のうちに術式を引き渡しておくよ。力を注ぎこみ続ければいい。」

手をかざし術式を移し始める。

「複製体であったか。よもや意思を持っていたとはな。」

「ああ。少し特別でな。短くはあったが良き時(とき)であった。」

移し終えると話題もなく静まり返った。


部屋に漂うカレーの香りが二人に話題を与える。

「惠末はカレーを食べないと聞いたがお主はどうだ?」

「試してみるか。」

鍋蓋を開けると香辛料の香りがさらに部屋へ充満する。

「これがカレーライスだ。」

スプーンを手渡し食べる準備が整う。

「少し辛いがいけるな。うまい。」

「ふむ、同じではないのか。」

「そのようだな。興味深い。」


それから十分ほど経っただろうか、惠末の身体が白い光を放ちはじめた。

「やっとか、私は中へ入り彼女と一つになってくる。」

「カレーライス、うまかったと伝えておいてくれ。」

「ああ、必ず。」

環はそれを見送る。

肉体より魂が離れると白化が加速し原型がわからなくなった。

「幸せだったであろうか・・・。」


(中へ戻る)

「また外でな。」

「それと、もう一人の私・・・。いなくなってると思うけど気に病まないでね。」

惠末が秀耶の胸を軽く小突くと入口へ引っ張られあっという間に姿が見えなくなった。

同時にそれが入ってきたのが見えた。


「お久しぶり、もう一人の私。秀耶を守ってくれてありがとう。」

「お久しぶり、もう一人の私。これくらいどうってことはない。楽しかったよ。」

「過去形にしないで。また一つになるだけ。いつまでも一緒よ。」

「カレーライス、美味かったから食べてみて。」

「努力するわ。」

それを正面から包み込むように抱いた。

それは吸収され、次第に薄くなっていく。最後までにこやかであった。


(再び外へ場面が移る)

秀耶は静かに目を覚ます。

「戻ったか。かの者は旅立っていったぞ。」

「そうか・・・。」

起き上がり正座をすると惠末の頭を膝の上に乗せた。

少し経って惠末が目覚めた。

「おはよう、秀耶。」

「おはよう、惠末。」

「ねえ、秀耶。カレーが食べたい。」

いままで食べようともしなかったので秀耶は驚いた。

「戻って来てすぐそれかよ。」

笑いながら惠末を起こして座らせた。

急いで台所へ向かい鍋の蓋を開けるといい香りがしてきた。

丁寧に器へ盛りつけ終わると彼女の元へ急いだ。

「秀耶、騒がしいわよ。」

「食べたいって言われると嬉しくてついな。」

器の乗ったお盆を脇に置き、スプーンを手渡した。

「ほい、お待ち!!」

惠末はスプーンを持とうとするが落とした。右手に力が入らないようだった。

身体へ戻る直前にもう一人の惠末とすれ違った。右手が欠損しているのが見えた。そのせいなのだろうか。

秀耶は新しいスプーンを持ってきた。

「ごめんね。」

「いいよ。食べさせてあげる。」

横に座りスプーンに乗せて彼女の口へ運んだ。

「ん、前と違って辛くない。甘くてコクがあって・・・。」

「果物が好きだから入れておいた。」

「カレーって辛いだけじゃないんだね。おいしい。」

「もう一口ちょうだいな。」

惠末は大きく口を開けてねだった。

気付くと環は一杯分のカレーライスと共に姿を消していた。

気を利かせてくれたのであろう。


(神殿では)

「やはり、カレーは二日目からだな。」

呟きながら環は神殿で食していた。

「のう、環。(ここで)食べるなとは言わんがカレーの臭いがな。」

「しばし、ご辛抱を・・・。」

「して、ワシの分は?」

大国主命は初めて見るカレーに興味津々だった。

「申し訳ございません・・・。」

謝りつつも食べる手は止まらない。

「食わせろーー!」

大国主命の声が虚しく神殿に響き渡ったのであった。

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