第5話:三井信託銀行での話し合い

 待ち合わせの銀行の前で、山下健一が待っていると、向こうから平田泰三が、お待ちどうさんと言って、やってきた。そうして、銀行に入ると、平田泰三の顔を見て、数人の銀行員が、久しぶりですね、お元気でしたかと、すり寄ってきた。そして今日のご用件はと聞くと、将来でかい仕事をしたいという、三菱地所の若者を連れてきたというと、不思議そうな顔をして、不動産の売買か何かですかと、聞くので、まー、とりあえず、紹介するから、詳しくは、彼に聞けというと、銀行の人が、それではこちらへと、案内されて、大きな応接室に入り、銀行側は2人で同席した。


 部屋に入ると、平田泰三が、山下君、自分で挨拶しろと言うと、はじめまして山下健一、22歳、今年、橫浜市大商学部を卒業し三菱地所の営業部に入社しましたと言った。今日、お邪魔したのは、桜木町駅の湾岸地域に1994年頃に高層マンションを建てる構想があり、その後もいくつかの高層マンション計画があり、将来的には「みなとみらい地区」に、多くの高層マンションが建つという情報を得ていると言い、それを、御社、三井信託銀行さんと一緒に富裕層の優良顧客に販売していきたいと思ってやってきましたと言うと、銀行員の1人が、それは、随分と豪気な話ですねと笑った。


 ところで、君の、お父さんは、どんな仕事をしている人ですかと聞いてきたので、横浜家具を昔からつくっている山下家具の3代目ですと言うと、驚いた様に、あの横浜家具ですかと聞くので、そうです。横浜家具店の3代目が何故、マンション販売のセールスをするのですかと聞いた。そこで、横浜家具は、有名であり名品も多いが、高価なため修理は多いが、新規に多くの商品が売れる訳でもなく、商売にならない。そのため、これから、でかい商売をするなら、桜木町・湾岸エリアの豪華タワーマンションの販売と考えたと答えると、なる程と言い、来店の理由は、わかりました。


 しかし、日本には、三菱地所のライバル三井不動産があり、我が社も三井の冠をいただいてるので、特に三井不動産でなく、三菱地所にする必要は無いし、やはり三井不動産を優先するよと話した。そこで、私は、そんな話に興味は無い、要は、高価な億ションを、どれだけ多く、富裕層の皆さんに売るかです。こちらの銀行では、富裕層を多く掴んでらっしゃるので、この意味は御存知でしょと言うと、それは、釈迦に説法と言って、もちろん良くわかっていると、銀行の方が笑いながら、要するに、富裕層の情報が欲しいというわけだなと言った。


 それも半分ありますが、私、山下健一がお宅の会社とタイアップして、1つでも多くの高価な豪華マンションションを富裕層のお客に売っていきたいと言う事ですよと話した。話を聞いていた、もう一人の銀行の人が、私どもは、こんな、子供だましのような、絵空事というか、理想論というか、ペテン師というか、そんな話を聞く耳は持っていないと、凄んだ。


 それを聞いていた平田泰三が、それは違う、山下健一には、中華街の華僑の友人も多く、中国人の金持ちとのパイプもあり、彼なら、そのパイプを使って売る可能性は高いぞと、この若者を見くびったり、いかんと一喝した。中華街の華僑とのパイプがあるのかというと、幼なじみもたくさんいるよと言うと、2人の銀行員の顔色が変わった。それなら、華僑の富裕層の情報と、日本人富裕層の人の情報を共有して、高価な豪華マンションションを売っていきましょうと、山下健一にすり寄ってきた。すると山下健一が、この話に乗ってくれると言うことですねと、確認すると、銀行員が、そうだと答えた。


 わかりました、「では、私の担当は、誰ですか」と聞くと、1人の銀行員が出て来て、この支店の次長の今泉公磨といいますと名刺を差し出してきたので、山下健一も三菱地所、横浜営業部、営業部1課の山下健一を言いますと、名刺交換をし、山下が、今泉次長に情報を交換したり、話し合いの窓口になってもらって良いんですねと確認すると、その通りですと答えた。この話を聞いていた、平田が、これでしまいだなと言い、今泉さん山下健一に、でかい仕事を持ってきてやってなと肩をたたいて、山下健一、帰るぞと言って、銀行を後にした。

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