生存の進化論
なぜ「生存は良いこと」と考える人が多いのか、進化論の観点から考える。まず「多いから正しい」のような考え方は「衆人に訴える論証」と呼ばれる誤謬だということは理解しておいて欲しい。
遺伝に基づく進化論について説明する。進化論には、大きく分けて淘汰、増殖、変化の要素がある。淘汰の段階では、死滅に適したものが死滅し、生存に適したものが生存する。「良い」ことを理由に生存したのではない。生存したものは増殖し変化するが、増殖前の段階で生存に適したものが多いことから、増殖し変化したものも基本的には生存に適したものが多くなる。そしてまた淘汰の段階に入る。このプロセスを繰り返すことで、より生存に適したものが多くなるのが遺伝に基づく進化論になる。
この進化論は生物が持つ遺伝子について考案されたものだが、これを文化的情報に対して適用して、その伝搬などの性質を説明することができる。これをミームと呼ぶ。ミームの淘汰には、忘却や否定などがある。増殖は主に人から人への伝達だ。これによって、「否定できる証拠のない噂話」など、正確でない情報が拡散したり定着することを説明できる。
生存と繁殖では情報的要素と生物的要素が関連しあう。「生存は良いこと」とするような生存のミームは、まず本能として肉体から影響を受ける。生存のミームを持つ者の方が生存に適しているので、生存のミームを持つ者の方が多く生き残る。生存した者のうち、「繁殖は良いこと」とする繁殖のミームを持つ者などが、繁殖をする。新たに誕生した子供に対して周囲の環境、特に親が教育を行うことから、子供に対して生存や繁殖のミームが伝達される。これを繰り返すことで、生存や繁殖のミームを持つ者が多くなっていく。
このことから、多くの人間が「生存は良いこと」という思想や、死への恐怖や罪悪感を抱くことが説明できる。逆に、ウェルテル効果などは自殺のミームが拡散したものと考えることができるだろう。最近だと「青い鯨ゲーム」と呼ばれるものも自殺のミームとしての側面を持つかも知れない。
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