第31話 モンハン王との交渉

       モンハン王との交渉



「近衛殿、そして、陰陽の里の方々と、ブランカ殿、最後に毛利、麿は、此度のそなたらの働きに、深く感謝致しますぞ」



 あれから数時間経つ。外はもう、とっぷりと日が暮れている。


 ここは、先程の2階の軍議の間。

 現在、俺の正面には、眉毛の丸い、平安貴族風の人が、これでもかと頭を下げてくれている。長い帽子が、テーブルに刺さりそうだ。

 ちなみに、衣装には旭日旗がデザインされており、何ともド派手だ。なんか、こういうところも、俺の世界と微妙に繋がっている気がする。

 そう、この人が大和の天皇、秀頼さんだ。姓は無い。


 秀頼さんは、やはり上の階に居た。

 ここまで早く俺達が辿り着くとは、想定していなかったと見える。

 部屋の前には近衛兵が居たが、それは俺が伸ばして楽勝。下に降りて来なかったのは、どうやら、部屋を守れとしか命令されていなかったようだ。

 部屋に入ると、十二単に身を包んだ女性が一人と、着物姿の、女の子が一人、伸びていた。

 そして、問題の秀頼さんは、何と、布団の中で縮こまっていた!


 しかし、幽霊付きで怯えていた人は、後にも先にもこの人だけではなかろうか?

 更に、俺が除霊?してあげたら、毛利さんを見るなり、その後ろに隠れる始末。

 びびりまくっていて、毛利さんが説明するのにかなり苦労していた感じだ。

 名君ではない、と言われたのも納得だ。


 その後は、すぐに城を隅々まで回って、傀儡状態の人を解除する。とは言っても、結城さんが大声でモンハン王の悪口を言ったら、向こうから勝手に来てくれるので、これも楽勝。

 ちなみに、地下には、大量の火薬が貯蔵されており、かなり冷や汗ものだった。即座に美鈴が水浸しにしてくれた。 

 そして、橋のところに居た近衛兵を呼び、正気に戻った人達へ、説明して貰う。

 ついでに、ブランカに頼んで、あの3000人の兵が集結しているところに、手紙を届けさせる。内容は、秀頼さんを無事に保護できたことと、この城を守って貰うことだ。そう、この大和領内には、まだまだ傀儡兵が残っている。



「まあ、礼は落ち着いてからでいいさね。それより、残っている傀儡兵の解除が先さね」


 うん、先ずはそれだ。もっとも、今日の感じなら、数日あれば何とかなるとは思うが。


 しかし、秀頼さんは、暗い表情だ。

 両隣に座っている、毛利さんと、見事な白髪の老人と、顔を見合わせている。

 ちなみに、今、テーブルについているのは、大和側が、秀頼さんを真ん中に、毛利さんと、その前田さん。

 そして、それに正対する陰陽の里側は、結城さんを真ん中に、右に、俺と小夜、左に美鈴。ブランカは、入り口で興味無さそうに丸くなっている。入れて貰えただけ感謝だな。


「ん? まだ何かあるのですか?」


 俺が聞くと、毛利さんがぴたぴたと頭を叩く。


「いえ、こんな事を頼めた義理では無いのは解っていますじゃ。しかし…」


 そこで、いきなり知らない声が入る!


「おい! 秀頼! 連絡が無いが、そっちはどうなっている! おい!」


 げ!

 声は、秀頼さんの右手の方からした!

 そして、更に声が続く!


「秀頼! 返事をしろ! ん? ひょっとして、貴様もやられたのか? ふん、この役立たずが! まあいい。もし生きているなら、すぐに返事をしろ! 蘭丸は元気だぞ」


 秀頼さんは、慌てて右手をテーブルの上に投げ出し、狼狽える!

 その中指には、しっかりと指輪が嵌っていた!

 うん、全て理解できた!


 俺は、思わずその指輪に向かって怒鳴る!


「あんたがモンハン王、いや、魔王か! ああ、秀頼さんは俺が助けた! それで、何処まで下衆な事をすれば気が済む?!」


 秀頼さんがやっと指輪を外し終わり、テーブルに投げ捨てたので、それを結城さんが奪い取る!


「まあ、これで分かっただろ? で、こっからは交渉さね。あんたの傀儡兵は、あちきらには無力だ。黙って人質を返すなら、あんたを見逃してやらなくもないね~」


 そこに、毛利さんが小声で説明してくれる。


(蘭丸様は、秀頼様の跡取りですじゃ)


 すぐに返事が来た。


「ふん、傀儡兵など、いくらでも作れるわ! そうだな、今の男、赤いランセルの男だな? そいつに会わせろ! そうすれば、考えてやってもいいぞ?」


 ん? これは少し意外だ。

 俺はてっきり、俺の首だと思ったのだが、会うだけでいい?

 まあ、魔王にとっては、意味は一緒なのかもしれないが。


 皆で顔を見合わせる。


(絶対ダメよ!)

(絶対ダメっす!)


 小夜と美鈴が、小声で見事にハモる。


「じゃあ、交渉決裂さね。あちきらに、蘭丸とやらを助ける義理は無いんでね~。で、その子を殺したら最期、あんた、大和の全国民を敵に回す覚悟はあるのかい? 繰り返すけど、あちきらには傀儡兵は効かない。かえってこっちの兵が増えるだけさね」


 ぶはっ!

 結城さん、ぶっちゃけすぎです!

 あ、秀頼さん、突っ伏したし。


 だが、これで良かったようだ。


「ふん、貴様らも考える時間が欲しいだろう。では、1時間待ってやる。寛大な吾輩に感謝するがいい」


 これで通信は切れたようだ。

 もっとも、こっちで魔力を込めれば、いつでも話せるのだが。



 その後、秀頼さんは、じっと頭を下げ続け、毛利さんと前田さんは何も言えず、小夜と美鈴は猛反対。結城さんは、腕を組んで考え込んでいる。


 向かい側、大和側の人は、俺がほぼ不死身である事を知らないので、ここで断るのは容易い。

 しかし、俺は魔王に興味があった。そう、俺が知る限り、唯一、俺と同じ物を持つ人間?だ。


「結城さん、俺は魔王に会ってみたい。さっきの感じでは、どうも俺を殺す気は無さそうだし。そら、何か気に障るような事を言えば、問答無用で殺す奴だってのは知っています」

「おお~! 近衛殿! 本当に感謝致しますぞ! 勿論、大和の全兵力を護衛につけます故、何卒、蘭丸を!」


 再び、秀頼さんが頭を下げようとすると、隣の前田さんが、それを制した。


「いえ、秀頼様、近衛殿の言っておられるのは、そういう事では無さそうですな。近衛殿、続けて下さらぬか?」

「はい。俺がもし死ねば、傀儡兵への対抗策は無くなる。それは理解しています。なので、結城さん、これからの交渉で、奴に、俺の命を保証させる事は可能ですか? もっとも、俺も、そう簡単に死なせて貰えるとは思っていませんが」


 結城さんは、腕を解き、左手の薬指に嵌った指輪を擦りながら答える。


「そうさね~。うん、大和側の人は、少し外して欲しいさね」

「わ、分かりましたですぞ! では、毛利、前田、麿達は上で待つことにするぞよ」



 結城さんは、池田さんの指輪に向かって話している。


「……って、経緯さね。半蔵殿、池田さん、桔梗、どうするさね? 近衛殿は行きたいようだけど、あちきは反対だね~。リスクが高すぎるさね」


 ふむ、臨時里長会議だな。

 指輪から、返事が返って来る。


「確かに危険ですね~。僕なら断りますね~。でも、参謀部門の長の判断ですしね~」


 池田さんだな。特に否定しないと。


「ふ~む。婿殿がそうしたいのならば、それでいいじゃろ。儂らは、サポート出来る事をするだけじゃ」


 半蔵さんは、俺に全権委任と。


「明菜は、まだ近衛さんの事を分かっていないようですわね! ここは、珍しく半蔵の言うとおりですわ! きっと、これこそが、近衛さんにしか出来ない事なのですわ! そして、もしもの事があれば、私がモンハンを丸ごと焼き払いますわ!」


 ぐはっ!

 まあ、桔梗さんも、半蔵さんと一緒と。


「じゃあ、決定さね。なら、交渉役も近衛殿でいいかい?」

「ええ、問題ないでしょう」

「婿殿の、思うようにやるが良かろう」

「そうですわね。そして、私が必要なら、飛んで行きますわ!」


 え?

 これで決定ですか?

 しかも、俺が交渉するの?


「そ、そうですか。じゃあ、皆さん、くれぐれもサポートお願いします」

「はい!」「うむ!」「勿論ですわ」「当然さね」「任せて!」「はいっす!」


 俺は、腕を組んで考え込む。


 そこに、あの声が頭に響く。


(ふわ~、あ、誤解してました~! ごめんなさ~い!)

(え? 申し訳ない!)


 ぐはっ! 

 いつもの恨みの浄化による、謝罪の声だ!


(いい気分ね~。あら~、失礼しましたぁ~っ!)

(こ、これは? 済みません!)


 ん? 今回は多いな。どんどん続いて来る。

 大方、今回の関係者全てに、俺の話が行き渡ったのだろう。何か、城の外から歓声が響いてるし。

 しかし、もはや聞き取れないし、これでは集中できんな。


 手袋を外して手の平を見ると、凄い勢いで数字が減って行く!


(ええ、そうですね。浄化される恨みの声は、私の力で少しカットしましょう。そしてアラタ、良かったですね。この調子ですよ)


 あ、先生、どうもありがとうございます。


 だが、更に声がする…、これは?


(余計な事をしやがって! 絶対に許さない!)

(何てことしてくれたんだ! 殺してやる!)


 げげっ!

 うん、この声の出所は解る。モンハン王に心服している人の声だ!

 慌てて手の平を見ると、一瞬数字が増えた!


(ええ、これは、『謂れの無い恨み』ではありません。そして、この声の集合体が、『魔王』と言えるでしょう。ですが、これは仕方のない事でしょう。影響力を持つ人間の宿命さだめです。ですが、この声の数以上に、アラタが感謝されれば何の問題はありません。相殺されますから)


 なるほど、政治家とかには、恨みを買う人も多いだろう。だが、善政を敷いて、感謝されていれば何の問題もないと。


(ええ、それに、数百程度では、周りに何の影響も及ぼしませんし、蘇生とかも無理でしょう)


 ふむ、俺の左腕みたいになるには、ある程度、纏まった数が必要と。これも納得だ。

 しかし、やはりいい気はしない。


(それは、アラタの覚悟が足りていない証拠ですね。力を持つ者には、それ相応の覚悟が必要なのです。例え恨まれても、自分が正しいと言い張れる心の強さ。その意味では、魔王は、アラタよりも、遥かに覚悟があったのでしょう)


 う~ん、何となく理解はできるが、俺にそれが可能だろうか?

 まあ、現状、数は減っているのだから、これを糧にするしかなさそうだ。


(ええ! いい心掛けです!)



 雑音が収まったので、俺は引き続き考える。


 よし、考えは決まった!

 気付くと、大和側三人が、揃って俺の顔を覗き込んでいた。



 俺は、指輪に魔力を込める。


「モンハン王、近衛だ。赤いランセルの男だ。交渉を始めよう」


 少し待つと、返事が来た。


「ふむ、貴様が来るんだな?」

「ああ、俺が行く。それで、人質は無事か?」

「ほ~、貴様、いい覚悟だな。ならば、貴様には、吾輩の事を『赤の王』と呼ぶことを許してやろう。当然、蘭丸は無事だ。声は聞かせてやれんがな。では、1週間後、国境の村、『プチア』まで来い。言っておくが、村に入れるのは貴様だけだ。それ以外の人間は認めない。では、吾輩も、楽しみに待つとしよう」


 チッ!

 こいつ、どこまで一方的なんだか。

 しかし、俺にとっては、この方が都合がいいかもな。


「分かった。では、赤の王、これだけは約束して欲しい。俺があんたに会ったら、即座に蘭丸君を解放する事。後、大和併合の約定は無効だ! 破棄する!」

「ふふ~ん、いいだろう。吾輩にとっては、どちらも些事だ。ところで、あの作戦を見破ったのは誰だ? 貴様か?」


 俺は、少し考えてから返事をする。


「さあ、誰だろうな? 蘭丸君を解放したら教えてやるよ」

「はははは、こいつは益々楽しみだ! 後、その指輪は貴様にくれてやる。では、家族と別れを済ませてから来い。以上だ!」


 ふ~、どっと力が抜けた。

 予定としては、俺に危害を加えない事を盛り込むつもりだったが、そんな約束をしたところで、守るかどうかは奴次第だ。ただ、あの感じからは、最低でも蘭丸君だけは解放してくれそうなので、上出来だろう。


 しかし、この指輪、女性から貰うのならまだしも、魔王からってのは、ちとな~。

 これも、宿命って奴か?


(諦めなさい)


 はいはい。



 目の前では、あの三人が、これでもかという程、頭を下げている。

 テーブルに擦れて、額が赤くなってるし。


 しかし、女性陣からは、一斉に突っ込まれる!


「しかし、近衛殿、よくもまあ、あんな無茶な要求呑んださね。こっちは護衛を付けられないが、あっちは付け放題。おまけに最後の言い方だと、完全に殺すつもりさね。ま、まあ、それに関しては、あちきからは何も言えないけど」

「そうよ! 危険すぎるわ!」

「いや、護衛をつけたところで無意味っす。下手したら、全員傀儡兵にされてしまうっす」


 お、小夜は理解してくれているみたいだ。

 そう、どうやって傀儡兵にしているのかは分からないが、毛利さんの話だと、直接触れずに、且つ、纏めてできるようだ。なので、護衛を連れて行けば、俺の手間が増えるだけだろう。


「うん、護衛は寧ろ邪魔なだけです。そして、最後の台詞に関しては、俺は、別の意味に受け取っています。あいつ、俺を引き入れるつもりでは?」

「あ、確かにそれは考えられるわね! あたしなら、絶対にそうするわ!」

「ふむ、麿も同じですぞ。近衛殿、是非とも我が大和の大長老に……」

「秀頼様! そ、その話は後にと言ったでしょう!」


 秀頼さんは、またしても前田さんに制される。

 悪い気はしないのだが、前田さんも大変だな。


「とにかく、あの感じだと、蘭丸君は無事でしょう。そして、今するべき事は、傀儡兵の解除です。ですが、俺の魔力も残り少ないので、明日でいいですかね? まだ1週間あるし、命令さえ無ければ、無害なようですし」

「そうさね。じゃあ、先ずは腹ごしらえさね!」

「ほっほ。麿も腹が減っておるようですぞ。では、夕餉ゆうげにしましょうぞ。これ、誰か」



 その後は、この部屋で、皆で夕食となる。


 そこで、全員、改めて自己紹介をする。もっとも、小夜と美鈴は里の掟とやらのせいか、名前を名乗らない。結城さんは、ここまで関わってしまっては仕方無いと諦めたのだろう。名字だけを名乗っていた。

 更に、その席で、秀頼さんの奥さんと娘さんを紹介される。


 奥さんの方も、如何にも平安貴族って感じの人だ。名前は『よど』と言うらしい。これもどっかで聞いた名前だな。眉毛を丸く整え、見事な黒髪を腰まで伸ばしている。ふくよかな顔つきだが、これはこれで美人と言えるだろう。

 娘さんの方も、丸顔に丸い眉だ。髪をおかっぱにし、まだかなりあどけなさが残る。12~3歳くらいか? 眉毛を普通にしたら、普通に可愛い子だと思うので、少し勿体無い。

 ちなみに、この二人、上の階で伸びていた人達でもあるので、少々罪悪感がする。


「わらわは、まどかじゃ。それで、父上、この男が、わらわの夫となる者なのですか? 何とも珍妙な服装じゃし、顔もちと冴えないのう。失礼ながらそなた、本当にこの大和を救ってくれたのか?」


 ぶはっ!

 もう、何処から突っ込んでいいか迷うな。


「こ、これ! 円! 近衛殿と、この方達が麿を救ってくれたのは間違いない! それに、縁談は蘭丸が戻って来てからの話。早まってはいけませんぞ!」


 慌てて秀頼さんがとりなすが、もう手遅れなようだ。


「あんたみたいなお子ちゃま、アラタさんが相手にする訳ないでしょ! それに、冴えないって、本当に失礼ね!」

「そうっす! そう思うなら、アラタさんには関わらないで欲しいっす!」


 うん、俺も幼女趣味はないし、今だけでも充分、いや、手に余っている。


「ふむ、冴えないは無礼であった。許せ。わらわも、見掛けで判断するような女と思われとうはない。父上を助けて下さった事、本当に感謝申し上げる」


 彼女は、そう言って俺に頭を下げてくれた。


 ふむ、身分の違いゆえか、かなり上からの物言いだが、悪い子ではなさそうだ。

 だが、これで終わりではなっかたようだ。


「しかし、そこの金髪の女! わらわはお子ちゃまではない! もうあれも来ておる! た、確かに胸では負けるが」


 あ~、そこですか。

 円が美鈴の胸をガン見していると、淀さんが、引きつった笑みを浮かべながら立ち上がった。


「これ、円も立ちなはれ。皆様、大変お見苦しいところを失礼したどすえ。ついでに、暫く目を瞑っていて欲しいどすえ」


 淀さんが、円を小脇に抱える!


「は、母上! わらわはきちんと謝ったではないですか! あ、いた! ひぃっ! ふぎゃっ!」

「そういう問題ではありまへん! あんたはもう少し品を持ちなはれ! 女は胸ではないのどすえ!」


 パンパン! と、尻を叩く音が部屋中に木霊する!

 うん、ここは目を瞑るべきだろう。


「母上に較べたら、まだまだ甘いっすね」


 はいはい。



 その後は、明日からの予定を軽く打ち合わせし、下の階で休ませて貰う。

 有事に兵隊が使うもののようで、全員ハンモックだが、贅沢は言えない。

 部屋の周囲には、それこそ、これでもかという程の警備の兵がついてくれているからだ。

 あの声からは、俺と刺し違えてでも恨みを晴らしたい、という人もそれなりに居るだろう。外は危険すぎる。



 その晩、俺は先生と相談する。


 蘭丸君を助ける事には、なんら異存は無い。

 俺はそう簡単には死ねない筈なので、一人で行くのも問題は無い。

 少し期待はしているが、まあ、無理だろう。


(アラタ! 気持ちは分かりますが、その考えは捨てなさい! そして、これはチャンスですよ)


 ぐはっ! また叱られてしまった。

 そして、俺の本音としても、その場で奴をこの世から消滅させてやりたいところだ。しかし、これも無理なはずだ。奴が俺と同じなら、強制的に蘇生されるだけだ。


(はい、魔王はアラタの左腕と一緒です。例え、半蔵や桔梗を連れて行ったとしても、殺す事は叶わないでしょう)


 だな。

 もし、奴にも俺と同様の数字があるのなら、その数を確認したいところだが、それを見せる程、馬鹿でもないだろう。だが、待てよ?


(ええ! その可能性は高いです! あの者の今までの行動、己の命を最優先に考えていると見て間違いないでしょう!)


 そう、奴は、自分がほぼ不死身な状態にある事を知らないのだ!

 俺だって、2度殺されて、初めて納得できた事だしな。

 増してや、奴には奈月先生のような、有能なガイドもいない!


(私はアラタのガイドではありません。ですが、有能と言われて悪い気はしませんね)


 はいはい。


 更に、奴の魂は、今までの話からでは、モンハンの王子の肉体に取り憑いたようだ。なので、常に護衛は完璧だっただろう。おまけに、奴が触れた人は、問答無用に気絶してしまう。近寄る事すら難しい。毒殺ならともかく、奴ならそんな事、百も承知の筈だ。

 奴が臨死体験をしたとは考えられない。


(ならば、アラタの今後の方針は決定しましたね)


 うん、現状はそこに賭けるしかなかろう。

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